土地に建物を建てるには建築基準法などのさまざまな制限をクリアする必要があります。その制限の1つが敷地面積の下限を定めた最低敷地面積です。
最低敷地面積を下回った土地は建物が建築できない、価値が下がるといった不都合が生じやすいので注意しましょう。
この記事では、最低敷地面積の基本や下回った場合の売却のポイントについて分かりやすく解説します。
敷地面積の最低限度とは?わかりやすく解説
敷地面積の最低限度とは、建物を建てる際の敷地面積の最低ラインを定めた規制です。
最低敷地面積とも呼ばれ、制限以下の面積の土地では建物の建築ができません。
都市計画法に基づき自治体が独自に設定する
都市計画法とは、都市の計画的な発展や整備のため土地利用や市街地開発のルールなどを定めた法律です。
都市計画法では、敷地の最低限度について以下のように定めています。
(開発許可の基準)第三十三条4
地方公共団体は、良好な住居等の環境の形成又は保持のため必要と認める場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、区域、目的又は予定される建築物の用途を限り、開発区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を定めることができる。
敷地面積の敷地面積の最低限度は自治体ごとで定めるため、自治体によって最低面積がことなります。
たとえば、東京都世田谷区では居住系用途地域では最低限度が100㎡であるのに対し、東京都江戸川区では70㎡が最低限度です1。
また、同じ自治体でも用途地域によっても制限が異なり、なかには最低限度を定めていない自治体もあります。
このように敷地面積の最低限度は自治体によって大きく異なるため、土地所在地の制限を事前に確認することが大切です。
建築基準法で最低限度は200㎡以下に設定するよう制限されている
建物を建築する際のルールを定めた建築基準法では、敷地の最低限度は以下のように定められています。
(建築物の敷地面積)第五十三条の二
建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。
(建築物の敷地面積)第五十三条の二 2
前項の都市計画において建築物の敷地面積の最低限度を定める場合においては、その最低限度は、二百平方メートルを超えてはならない。
これにより、自治体が敷地面積の最低限度を設ける際には200㎡を上限とすることが定められているのです。
新たに土地を分割して建物を建てるケースが対象
敷地面積の最低限度の規制が適用されるのは、新たに土地を分割するケースです。
たとえば、最低限度が100㎡に設定されている地域に所有する150㎡の土地を100㎡と50㎡に分割すると、50㎡の方では建物の建築許可は下りません。
一方、規制が設けられる以前から最低面積を下回っている土地は規制の対象外です。
仮に制限が100㎡である地域に規制以前から90㎡の土地を所有しているのであれば、建物の建築や増改築は認められるのが一般的です。
ただし、実際に建築が認められるかどうかは自治体によっても判断が異なるため、事前に確認する必要があります。
また、規制以前に最低面積を下回っている場合でも、新たに分割する場合は規制の対象となるので注意しましょう。
敷地面積の最低限度が適用されないケース
敷地面積の最低限度は、以下の建物を建築する場合は適用の対象外となります。
建ぺい率80%以下の防火地域内に建築する耐火建築物など
公衆トイレや巡査派出所など公益上必要なもの
敷地の周囲に広い公園や広場、道路、空き地などを有し、特定行政庁(自治体)が市街地の環境を害する恐れがないと許可したもの
特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと許可したもの
敷地面積の最低限度が設定される理由
敷地の最低限度は、土地のミニ開発やそれにともなうリスクの低減のために設定されます。
ミニ開発を防ぐ
ミニ開発とは、小規模な土地の開発です。
一般的には100㎡未満での宅地開発をミニ開発と呼びます。
都市部など地価が高騰する地域では、広い土地は価格の高さから避けられやすくなります。そのため、土地を分筆して価格を抑えて売買するケースが増えているのです。
しかし、制限なく土地の分割・小規模化が進むと建物の密集が起きてしまい、景観を損なったり住環境が悪化したりと市街化に悪影響が及びます。
そこで、土地の過度な分割を防ぐために敷地面積の最低限度を設けているのです。
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採光や通風の悪化を防ぐ
ミニ開発により建物が密集すると、建物との距離が確保しにくくなり採光や通風の悪化が起こります。
日当たりが悪く風通しも悪い家は、湿気が溜まりやすい、日中でも暗いなど居住環境も悪くなるものです。
そのため、敷地に最低限度を設けて家と家の距離を保てるようにしています。
火災リスクの上昇を防ぐ
小規模な建物が密集すると火災時に延焼するなどのリスクが高まります。
また、駐車スペースが確保できない、消防車・救急車の通路の確保が難しくなるなどで、災害時に救出や避難が遅れるといった恐れもあるでしょう。
このような防災上のリスクの低減のためにも敷地の最低限度が設けられています

