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借地の家は更地にして返す必要がある?解体せずに返還する方法も解説

土地を借りて家を建てた場合、借地契約が終了する際には、借地人は土地を更地にして返す義務を負います。

ところが実際には、建物を解体せずに返還しているケースも存在するのです。なぜ、このような例外的な扱いが可能なのでしょうか。

この記事では、借地の返還における原状回復義務の基本と、建物を解体せずに返還するための具体的な方法について解説します。

このページの目次
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借地の家は更地にして返す義務はあるのか

民法では、「借主は、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う(第599条第3項)」と定められています。借地契約も使用賃貸の一種であるため、この原則が適用されます。

そのため、借地契約が終了した場合、借地人は原則として建物を解体し、更地にして返す義務があるのです。

借地人の権利を保護するための法律である借地借家法には、更地返還の義務は明記されていません。しかし、借地契約が終了すれば借地権も消滅するため、借地人は民法の原則に従い、原状回復義務を負うことになります。

なお、この原状回復義務は契約内容や当事者での合意によって免除されることがありますが、まずは原則として原状回復義務の基本を押さえておきましょう。

原状回復義務の範囲

借地における原状回復義務の範囲は、契約内容や法律によって異なりますが、一般的には以下のものが含まれます。

  • 建物の解体・撤去……借地上に建てた建物を解体し、撤去する必要があります。
  • 地中埋設物の撤去……地中に埋設された配管や基礎などを撤去する必要があります。
  • 造成された土地の整地……造成された土地を元の状態に戻す必要があります。
  • 借地人が設置した設備の撤去……借地人が設置した塀や庭石などの設備を撤去する必要があります。

原状回復義務に関する注意点

借地契約書に、原状回復義務に関する条項が記載されているかどうかを確認しましょう。明確に記載されている場合は、建物を解体し、更地にして返還する必要があります。

一方で、契約書に詳細な記述がない場合、原状回復の範囲に関して、解釈の相違でトラブルになる可能性があります。できるかぎり、地主との間で対象範囲を明確にしておくことが重要です。

また、建物の解体費用は予想以上に高額になることがあります。事前に見積もりを取って、費用の準備をしておきましょう。

普通借地権と定期借地権

借地契約には、「普通借地権」と「定期借地権」があります。

定期借地権では、契約で定められた期間が満了すると、借地関係は終了します。

多くの場合、契約書には満了時に建物を解体・撤去する旨が明記されており、原則として借地人は更地にして返還しなければなりません。

一方、普通借地権の場合は、借地借家法によって借地人の権利が保護されており、地主との交渉次第では建物を解体せずに返還できる可能性もあります。

借地権

建物を解体せずに返還できるケースとは

借地は、原則として更地にして返す義務があるものの、いくつかのケースでは、建物を解体せずに返還できる可能性があります。

借地契約書に特約がある場合

借地契約書の中には、契約終了時に建物を解体する必要がない旨の特約が定められている場合があります。

たとえば、「契約終了時に、借地人は建物を現状のまま地主に引き渡す」といった内容の条項があれば、借地人は建物を解体せずに済みます。

そのため、契約締結時には、契約書の内容をしっかりと確認することが重要です。

地主が建物の買い取りを希望する場合

地主が、契約終了後に残った建物を買い取りたいと申し出る場合があります。

この場合、借地人は解体費用を負担することなく、建物を売却して借地を返還することができます。

借地権を地主に売却

買い取り価格については、当事者間の交渉によって決定されるため、両者の同意が必要です。

借地契約の更新時に合意した場合

借地契約を更新する際に、建物の取り扱いについて改めて協議し、借地人と地主が建物を解体しないことに合意する場合があります。この合意内容は、更新後の契約書に明記されることが一般的です。

借地権を第三者に譲渡する場合

借地人は、借地借家法に基づき、一定の要件を満たす場合、借地権を第三者に譲渡する権利があります。

この権利を行使することで、結果的に建物を解体せずに借地関係を解消できる可能性があります。

借地権を第三者へ売却

もし借地人が、第三者に借地権と建物をまとめて譲渡する場合、新たな借地人が地主と新たに借地契約を締結することになります。この場合、元の借地人は建物を解体せずに済むのです。

ただし、借地人が地主の承諾なしに借地権を譲渡または転貸することは原則として禁じられています(民法第612条)。これに違反した場合、地主は契約を解除することができます。

また、借地人が建物を第三者に譲渡しようとした場合、地主が正当な理由なく譲渡を承諾しないときは、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えることができると定めています(借地借家法第19条)。

このため、借地人は一定の要件をクリアすれば、裁判所の許可を得て借地権を譲渡することができるのです。

地主が譲渡を拒否できる「正当な理由」とは

地主が譲渡を拒否した場合、それが「正当な理由」に該当するか否かを把握することは、交渉を進める上で非常に重要です。

借地権の譲渡において、地主が譲渡を拒否できる「正当な理由」は、明確な基準があるわけではなく、個別の状況や裁判所の判断によって異なります。一般的に正当な理由として認められる可能性のあるケースとしては、次のものが挙げられます。

  • 譲受人の資力や信用が著しく低い……譲受人が借地料を支払う能力に欠ける、過去に賃料の滞納歴があるといった、地主との信頼関係を損なう可能性が高いと判断される場合です。
  • 譲受人の借地利用目的が不適切である……譲受人が、地主の土地利用計画を著しく阻害するような目的で借地を利用しようとする場合です。
  • 譲受人が地主との信頼関係を破壊するおそれがある……譲受人が、地主に対して暴言や脅迫などの不当な行為を行った場合です。
  • 借地の分割により、土地の利用価値が著しく低下する……借地の一部のみを譲渡することにより、残りの土地の形状が悪くなり、利用価値が著しく低下する場合です。
  • 借地の老朽化が著しく、譲受人が建物の建替え等を行わない……借地上の建物が老朽化により倒壊の危険性があり、譲受人が建替えをせずに放置する場合です。

借地人だけでなく譲受人の資質も「正当な理由」を成立させるひとつのポイントとなりえます。

建物買取請求権を行使する場合

建物買取請求権とは?

建物買取請求権とは、借地契約が期間満了により終了し、借地人が契約更新を希望したにもかかわらず、地主が正当な理由なく更新を拒否した場合に借地人が行使できる権利です(借地借家法第13条)。

この権利を行使すると、借地人は地主に対して建物を時価で買い取るよう請求することができ、建物の買い取り価格は、基本的に当事者間の協議によって決まります。

しかし、建物の老朽化が著しい場合や、借地人が契約に違反していた場合には、建物買取請求権を行使できないことがあります。

もし、地主が建物の買い取りを拒否したり、買い取り価格について合意に至らない場合、裁判所での調停や訴訟手続きが必要になることもあります。

建物を解体せずに返還するための交渉方法

借地の建物を解体せずに返還するための交渉は、借地人と地主双方にとって重要なプロセスです。

円滑な交渉を行うためには、事前の情報収集と戦略立案、丁寧なコミュニケーション、そして書面による合意が不可欠となります。

ここでは、具体的な交渉方法について解説します。

情報収集と戦略立案

借地契約書を詳細に確認し、原状回復義務に関する条項や契約の種類を把握します。

次に、建物の状態、築年数、市場価値などを評価し、不動産鑑定士に依頼することも検討しましょう。

また、並行して地主の土地利用意向や建物に対する考えを把握することが重要です。地主が建物を買い取る意向があるのか、または他の利用方法を考えているのかを理解することで、交渉の方向性を見極めることができます。

これらの情報をもとに、自身の状況に合った交渉戦略を立て、建物買取請求や借地権の譲渡、地主への買い取り提案など、複数の選択肢を検討しましょう。

交渉の開始

交渉では、地主に対して誠実な態度で接し、信頼関係を築くことが重要です。建物を残したまま返還したい理由や希望条件を具体的に提示し、建物の評価額などの客観的なデータを示しましょう。

地主の意向を尊重しつつ、譲歩できる点と譲歩できない点を明確にし、柔軟な姿勢で妥協点を探ります。必要に応じて、不動産鑑定士や弁護士などの専門家の意見を参考にしながら交渉を進めることで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

交渉方法は、どの根拠に基づき行うかで異なります。

  • 建物買取請求権の行使……借地借家法に基づき、地主に対して建物の買い取りを請求し、建物の評価額を提示して買い取り価格について交渉します。
  • 地主への建物の買い取り提案……地主に対して、建物を買い取ってもらうことを提案し、建物の状態や市場価値を踏まえ、買い取り価格について交渉します。
  • 借地権の譲渡……第三者に借地権を譲渡することを提案し、譲渡承諾料や譲渡条件について、地主と交渉します。
  • 土地の有効活用プランの提案……地主に対して、建物を残したまま土地を有効活用するプランを提案し、地主のメリットとなるようなプランを提示して合意を目指します。

こうした交渉を進めることで、借地人は建物を解体せずに返還できる可能性があります。

合意書の作成

口約束ではなく、合意内容を書面に残すことが重要です。

合意書には、建物の扱い、返還条件、費用負担などを明確に記載し、後々のトラブルを避けるために弁護士などの専門家にチェックしてもらいましょう。

交渉のポイント

交渉は、返還期限に余裕をもって早期に着手します。交渉の過程でやり取りした書類やメールなどはすべて保管しておくようにしましょう。

交渉が難航する場合は、不動産仲介業者や調停機関など、第三者の介入も検討すると安心です。

解体せずに返還する交渉が決裂したらどうする

借地の建物を解体せずに返還するための交渉が決裂した場合、借地人はいくつかの選択肢を検討する必要があります。ここでは、交渉決裂後の対応について解説します。

裁判所による解決

借地借家法第19条に基づき、裁判所に対して借地権譲渡の許可を申し立てることができます。

これは、地主が正当な理由なく譲渡を拒否した場合に、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える制度です。

この制度を利用することで解決する可能性もありますが、実際に申し立てを行うには、一定の要件を満たす必要があるほか、手続きには時間や費用がかかる点に注意が必要です。

事前に専門家に相談しながら、慎重に対応を検討することが望ましいでしょう。

建物買取請求権の行使

借地借家法に基づき、地主に対して建物の買い取りを請求することができます。

地主が買い取りを拒否する場合、裁判所に建物買取請求権の行使を求めることも可能です。

ただし、建物買取請求権は、全ての借地契約に適用されるわけではなく、契約内容や法律によって異なるので確認しておきましょう。

借地権の買い取り交渉

地主に対して、借地権を買い取ってもらうことを改めて交渉します。交渉が難航する場合、不動産鑑定士に依頼して適正な借地権価格を算出し、それを基に交渉を進めることも有効です。

第三者への借地権譲渡の再検討

地主の承諾が得られない場合でも、第三者への借地権譲渡を模索することができます。

借地権専門の不動産会社などに相談し、買い手を探すことも選択肢の一つです。

解体して更地で返還する

上記の方法でも解決できない場合は、最終的に建物を解体して、更地で返還することになります。この場合、地主との話し合いや現地の確認が重要なポイントになります。

まずは、借地契約書をもとに、原状回復に関する条項や返還時の状態について地主と確認しておきましょう。特に、撤去すべきものの範囲や、土地の整地方法などを明確にしておくと安心です。

解体工事前に、地主と借地人が立ち会いのもと、解体範囲や工事の方法、撤去物の取り扱いなどを確認します。

また、工事と整地が完了した後にも再度立ち会いを行い、契約内容どおりに土地が更地になっているか、撤去物が適切に処理されているかなどを確認します。

こうした確認結果は書面に残し、地主・借地人双方が署名・捺印することで、後日のトラブルを防止することができるのです。

また、建物を解体した後は、更地にしたことを示す「建物滅失登記」を行います。これは借地人側で行いますが、地主はこの登記が完了したことを確認しておく必要があります。

建物滅失登記とは?

▼関連記事:借地に建てた家の解体費用が払えない場合はどうする?対処や交渉の方法を解説

まとめ

借地に家を建てた場合、契約終了時には原則として建物を解体し、更地にして返還する義務(原状回復義務)がありますが、契約内容や交渉次第では、解体せずに返還できる可能性も存在します。

建物を解体せずに返還できる主なケースとして、次のようなものがあります。

  • 借地契約書に特約がある場合
  • 地主が建物の買い取りを希望する場合
  • 借地契約の更新時に合意した場合
  • 借地権を第三者に譲渡する場合
  • 建物買取請求権を行使する場合

これらのケースに該当する場合は、地主との交渉によって、解体せずに返還できる可能性があります。

交渉のポイントとして、事前に借地契約書の内容や建物の状態などを確認し、戦略を立てることが重要です。地主との交渉では、誠実な態度で臨み、合意内容は必ず書面に残しましょう。

交渉が決裂した場合は、次のような対策法があります。

  • 裁判所による解決(借地借家法第19条)
  • 建物買取請求権の行使
  • 借地権の買い取り交渉
  • 第三者への借地権譲渡の再検討

最終的に合意に至らない場合は、建物を解体して更地で返還する必要があります。

執筆者
田中 良男
田中 良男

ことの葉行政書士事務所・代表/建築主事として建築確認申請の審査経験を有す/行政職員時代に都市計画策定、開発許可、生産緑地指定業務に携わる/ライター(切塗よしを)としても活動中【保有資格】特定行政書士、1級建築基準適合判定資格者 、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、終活カウンセラー、著作権相談員

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