「家が売れない時代になった」そのような話を耳にした方もいるでしょう。
人口減少や人件費の高騰などで、現在は対策しないと家が売りにくいケースが増えています。
また、今後は家が売れない状況がより深刻になるとも言われているので、その理由や対策を押さえておくことが重要です。
この記事では、家が売れない時代になったといわれる理由や今後の予測、売れない場合の対策などを分かりやすく解説します。
家が売れない時代になった理由
まずは、家が売れない時代になったといわれる理由を見ていきましょう。
人口減少
家が売れなくなる理由に人口減少があります。
家の需要は住む人の数に左右されるため、人口が少なくなれば需要も下がります。
総務省の人口推計によると直近の日本の人口は以下のとおりです1。
年次 | 総人口(10月1日時点) |
2005年 | 127,768,000 |
2010年 | 128,057,000 |
2015年 | 127,095,000 |
2020年 | 126,146,000 |
2021年 | 125,502,000 |
2022年 | 124,947,000 |
2023年 | 124,352,000 |
2024年 | 123,802,000 |
2024年の日本の人口が1億2,380万人で前年に比べ55万人の減少であり、2010年をピークに14年連続での減少となっています。
減少幅も13年連続で拡大しており、人口が年々減少傾向にあることが分かります。
人口が減少すると家を必要とする人の母数が減少するため、家が売りにくくなると考えられるのです。
人件費の高騰
家が売りにくくなる要因には、人口減少以外に住宅価格の高騰も考えられます。
国土交通省の不動産価格指数2では、2010年の価格を100%としたとき2024年12月の戸建てで117.4%、マンションで208.1%と上昇傾向です。
不動産価格が高騰する理由の一つに、人件費の高騰が挙げられます。
たとえば、東京都であれば平成14年の最低賃金が708円だったのに対し、令和6年には1,163円に増加しています3。
全国平均でみても、平成14年の663円に対して令和6年は1,055円と増加傾向です。
また、前述したように人口減少にともなる働き手の不足も人件費高騰につながる要因と言えるでしょう。
人件費が高騰すれば、住宅をつくる際のコストが増加し新築価格の高騰につながります。
新築価格が高騰すると、新築を避けて中古需要が高まることから、中古価格の高騰にもつながるのです。
新築・中古ともに家の価格が高くなることで、買い手が家を買いにくくなり売り手側の売りにくさにつながると考えられます。
資材高
家の価格が高くなる要因に、住宅資材の高騰もあります。
2021年頃から始まったウッドショックと呼ばれる木材の高騰や給湯器等の住宅設備の不足により、資材価格は上昇傾向にあります。
また、近年の物価高やガソリン代や電気料金の高騰も、住宅の建築費を上げる要因です。
金利が上がる可能性がある
金融緩和政策がとられて以降、超低金利と言われていた住宅ローンも近年上昇の兆しがあります。
2022年に日銀が長期金利の利上げを発表し、2022年~2023年には固定金利タイプの金利水準の上昇がみられました。
さらに、日銀では2024年にマイナス金利を解除、同年7月と2025年1月に利上げを行っています。
これにより、2025年4月に変動金利の基準金利を引き上げる金融機関も少なくなかったのです。
今後も追加利上げがされると見込まれており、将来金利が上がる可能性はゼロとはいえません。
住宅ローンの金利が上がると住宅ローンを組みにくくなるなどで、買い手の購入意欲が減退します。
また、借入できる額も少なくなることで、価格を下げなければ売れなくなり、家の価格下落にもつながりかねません。
金利も住宅価格や需要に大きく影響するため、今後の動向を注視しておきましょう。
今後はさらに家が売りづらくなる?
今後はさらに家が売りにくくなる可能性があります。
その要因として、今後の人口と金利をみてみましょう。
2050年には9,500万人まで人口が減る予測
減少傾向にある日本の人口ですが、今後はより深刻になると見込まれています。
厚生労働省によると、日本の推計人口は2020年の1億2,615人から2070年には8,700万人にまで減少するとされています4。
さらに、高齢化は進行し2020年の28.6%から2070年では38.7%に上昇する予測です。
出生率も2020年の1.33から2070年には1.13~1.36と大きく改善しない見込みであり、自然増による人口増加の見込みは低いといえるでしょう。
住宅ローン金利の上昇
住宅金融支援機構による直近の「フラット35借入金利の推移」は以下のとおりです5。
最低 | 最高 | |
2022.04 | 1.440 | 2.540 |
2023.04 | 1.760 | 3.070 |
2024.04 | 1.820 | 3.210 |
2025.04 | 1.840 | 3.930 |
長期固定金利が年々上昇傾向にあることが分かります。
また、変動金利についても前述したように、2025年1月に日銀が追加利上げしたことにより、4月に変動金利の基準金利を引きあげる金融機関が多くあります。
追加利上げについては3月・4月は見送られたものの、7月か9月に行われると見込まれており、今後の利上げは避けて通れないといえるでしょう。
住宅ローン金利が将来どうなるかの見通しは正確には行えません。
しかし、金利上昇の可能性がゼロではないことは覚えておきましょう。
家が売れないと起こりうるリスク
家が売れないと起こるリスクとしては以下の3つが挙げられます。
- 売れない期間が長期化すると資産価値が目減りする
- 住宅ローンを完済できないとそもそも売却できない
- 固定資産税はかかり続ける
それぞれ見ていきましょう。
売れない期間が長期化すると資産価値が目減りする
家は築年数の経過に応じて資産価値が減少します。
東日本不動産流通機構の「年報マーケットウォッチ2023年・年度」による、築年数別の戸建ての成約価格は以下のとおりです6。