売買や相続、贈与などにより不動産の所有者が変更になる際は、家の名義変更が必要です。
名義変更するにはさまざまな書類が必要であり、適切な方法で申請しなければなりません。
そこで本記事では、家の名義変更に必要な書類や名義変更の手順を詳しく解説します。
不動産売買や相続などで家の名義変更が必要な方は、ぜひ参考にしてください。
家の名義変更に必要な主な書類
家の名義変更をするには以下の書類が必要です。
- 登記済権利証または登記識別情報通知
- 印鑑証明書
- 住民票
- 固定資産評価証明書
それぞれの書類の意味や取得方法を見ていきましょう。
登記済権利証または登記識別情報通知
一般的に「権利書」と呼ばれる登記済権利証は、2005年以前に不動産を取得した際に発行されていたもので、所有権を証明する書類です。
一方、登記識別情報通知は、2005年の法改正以降に導入された、12桁の番号で構成された新しい形式の証明書です。主に、不動産の所有者であることを確認するために使用されます。
なお、登記識別情報通知は、書類に記載された12桁のパスワードが重要なため、紛失した場合に備えて控えておきましょう。
また、登記済権利証と登記識別情報通知に大きな違いはありません。
家の名義変更を行う際は「権利書」と呼ばれる登記済権利証、もしくは登記識別情報通知のどちらかが必要になります。
登記識別情報通知は法務局での登記手続きが完了した際に取得できますが、手続きの際には本人確認書類や印鑑などが必要となるので事前に確認しておきましょう。
また、登記識別情報通知を紛失すると再発行はできません。
そのため、名義変更手続きが必要な場合には、別の方法で本人確認を行う必要があり、手続きが複雑になることがあります。
印鑑証明書
印鑑証明書は、市区町村に登録した実印が本人のものであることを証明する書類です。
取得するには、市区町村役場で実印登録を行い、印鑑登録証を受け取ります。
その後、印鑑登録証を持参して役場の窓口で申請すると、印鑑証明書が発行されます。
印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものが有効とされています。
そのため、名義変更の手続きに合わせて適切なタイミングで取得することが大切です。
また、印鑑登録証を紛失すると再発行に手間がかかるため、大切に保管しておきましょう。
住民票
住民票とは、個人の住所や氏名、生年月日などが記載された公的な証明書です。
名義変更手続きでは、新しい所有者の住所を証明するために求められます。
現在住んでいる地域の市役所や区役所で取得できます。窓口での申請が一般的ですが、自治体によっては郵送やオンラインでの申請も可能です。
詳細については、住んでいる地域の自治体のホームページで確認しましょう。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、土地や建物の評価額を証明するもので、登録免許税の計算などに使用される書類です。
不動産が所在する市区町村役場で取得でき、申請には本人確認書類や申請書の提出が必要です。
また、代理人が申請する場合は、委任状などの追加書類が求められる場合があります。
【不動産売買】家の名義変更に必要な専用書類・手続きの流れ
家の名義変更に必要な主な書類をご紹介しましたが、名義変更が必要になるケースはさまざまです。
ここでは、不動産売買による名義変更が必要になった場合の必要な書類と手続きの流れを解説します。
- 売買契約書
- 手続きの流れ
売買契約書
売買契約書は、売主と買主の間で交わされた契約の内容を記したもので、家の所有権を正式に移すための重要な書類です。
通常、不動産会社が作成し、売主と買主の双方が署名・押印して完成します。
この書類がなければ、法務局での名義変更手続きが進められません。
そのため、売買契約書は名義変更において非常に重要な役割を果たします。
手続きの流れ
不動産売買後の名義変更は「所有権移転登記」と言い、基本的に買主が以下の手順で登記手続きを行います。
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局への申請
- 登録免許税の納付
- 登記完了の確認
登記識別情報通知書や印鑑証明書、売買契約書などの必要書類を準備し、法務局のウェブサイトなどから登記申請書の様式を入手し、必要事項を記入します。
その後、準備した書類と登記申請書を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。
名義変更には「登録免許税」がかかるため、収入印紙や現金で納付するようにしましょう。
申請後は法務局で審査が行われ、問題がなければ登記完了です。完了までの期間は通常1〜2週間程度となります。
【相続】家の名義変更に必要な専用書類・手続きの流れ
次に、相続による家の名義変更に必要な書類や手続きの流れを解説します。
専門書類が複数あるのでしっかりと確認しておきましょう。
- 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
- 住民票の除票または戸籍の附票
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図
- 手続きの流れ
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
戸籍謄本とは、被相続人の生まれてから亡くなるまでの記録を確認するための書類です。
戸籍の形式は法律の改正などで変わることがあり、その際に「除籍謄本」や「改製原戸籍」といった書類が関係してきます。
除籍謄本とは、家族全員が結婚や死亡などでその戸籍から抜け、誰もいなくなった状態の戸籍を指します。
この記録も、相続手続きで過去の家族関係を確認するために必要となってきます。
改製原戸籍とは、法律の改正により戸籍の形式が変更された際、古い形式の戸籍が「改製原戸籍」として保存されます。
これには、現在の戸籍には載っていない過去の情報が含まれている場合があります。
相続手続きでは、これらの被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があり、時間や手間がかかります。
そのため、相続による名義変更をする際は、余裕を持って書類を準備しましょう。
住民票の除票または戸籍の附票
「住民票の除票」とは、死亡などにより住民基本台帳から除かれた人を証明する書類です。
最後に住民登録されていた市区町村の役場で取得できます。
一方、戸籍の附票は、戸籍が作られてからの住所の履歴を示すもので、本籍地の市区町村役場で取得可能です。
これらは、登記簿に記載された住所と被相続人の最後の住所が同じであることを確認するための必要な書類で、相続登記の手続きを円滑に進めるために必要になります。
遺産分割協議書
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合い、誰がどの財産を受け取るかを決め、その内容を文書にまとめた書類です。
遺産分割協議書を作成する際は、以下の点に注意が必要です。
項目 | 概要 |
被相続人の情報 | 亡くなった方の名前、亡くなった日、最後の住所などを正確に記載します。 |
相続人全員の情報 | 全員の名前と住所を明記し、全員が協議に参加したことを示します。 |
財産の詳細 | 家の所在地や面積など、財産を特定できる情報を詳しく書きます。 |
署名と押印 | 相続人全員が自分の名前を手書きし、実印を押します。 |
これらの情報を正確に記載することで、遺産分割協議書が正式な書類として認められ、家の名義変更手続きが円滑に進みます。
相続関係説明図
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を示した家系図のような図です。
この図があることで相続関係が明確になり、相続手続きをスムーズに進められます。
相続関係説明図は、手書きでもパソコンでも作成できます。
法務局のウェブサイトでは、家族構成に応じたテンプレートが提供されているので、活用すると便利です。
手続きの流れ
相続による家の名義変更は以 下の手順で進めます。
- 不動産の状況確認
- 相続人の確定
- 遺産分割協議
- 必要書類の収集
- 登記申請書の作成
- 法務局への申請
まず、相続する家の登記簿を取得し、現在の名義や権利関係を確認しましょう。
この際、被相続人の戸籍を遡って取得し、全ての相続人を確認します。相続人が複数いる場合、誰がどの財産を相続するか話し合い、合意内容を文書にまとめます。
遺産分割協議が完了したら、法務局の指定様式に従って登記申請書を作成します。
最後に必要書類と申請書を持ち、不動産所在地を管轄する法務局に提出して完了です。
相続による家の名義変更は複数の書類が必要であるため、事前の準備が重要です。また、不備があると手続きが遅れてしまうため、具体的に計画を立てながら進めましょう。
【生前贈与】家の名義変更に必要な専用書類・手続きの流れ
次に、生前贈与による家の名義変更に必要な書類や手続きを解説します。
専用書類や流れを確認しておきましょう。
- 贈与契約書
- 手続きの流れ
贈与契約書
贈与契約書とは、贈与者と受贈者の間で、家を渡す約束をしたことを証明する書類です。贈与契約書には、以下の情報を具体的に記載します。
- 贈与者と受贈者の名前と住所
- 贈与する家の詳細
- 贈与の日時
- 贈与の方法
これらを明確に書くことで、贈与の内容がはっきりと伝わります。また、契約書の信頼性を高めるため、署名は手書きで行い、印鑑は実印を使用することが望ましいです。
さらに、不動産の贈与契約書には収 入印紙の貼付が必要です。金額の記載がない場合は200円の印紙を貼ります。印紙税額については、国税庁「印紙税額の一覧表」で確認できます。
贈与契約書をしっかりと作成することで、家の名義変更手続きがスムーズに進み、後々の誤解や争いを避けられます。
手続きの流れ
生前贈与による家の名義変更は以下の手順で進めます。
- 贈与契約の締結
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局への申請
まずは、贈与者と受贈者との間で贈与契約書を作成しましょう。その後、印鑑証明書や住民票などの必要書類の準備、登記申請書の作成などを行います。
最後に、準備した書類一式を持って不動産所在地を管轄する法務局へ提出し、所有権移転登記を申請します。
ただし、これらの手続きは専門的で複雑な部分もあるため、司法書士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
【離婚】家の名義変更に必要な専用書類・手続きの流れ
次に、離婚による家の名義変更時に必要な書類と手続きの流れを解説します。
財産分与など、離婚ならではの手続きをしっかり確認しておきましょう。
- 離婚協議書または財産分与契約書
- 戸籍謄本
- 手続きの流れ
離婚協議書または財産分与契約書
離婚協議書とは、離婚時に夫婦間で取り決めた内容をまとめた書類です。
子どもの親権や養育費、財産の分け方などが含まれます。
一方、財産分与契約書は、夫婦が共同で築いた財産をど のように分けるかを具体的に記したものです。
これらの書類を作成することで離婚後のトラブルを防ぎ、合意内容を明確にできます。
戸籍謄本
戸籍謄本とは、家族の身分関係を記録した戸籍簿の全体を写した書類です。
具体的には、家族全員の生年月日や結婚・離婚の履歴などが記載されています。
この書類を取得することで、家族構成や身分関係を公式に証明できます。
手続きの流れ
離婚による家の名義変更の手続きは以下の流れで進めます。
- 財産分与の合意
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局への提出・登記完了
まずは、夫婦間で財産分与を行いましょう。具体的には、家や車、家具などの財産をどちらが受け取るのか話し合います。
財産分与について話し合ったら、戸籍謄本や離婚協議書などの必要書類を準備し、法務局の書式に従って登記申請書を作成します。
すべての必要書類が準備できたら、家の所在地を管轄する法務局へ提出しましょう。申請が受理されれば名義変更完了です。
家の名義変更にかかる費用
家の名義変更をする際は以下の費用がかかります。
- 登録免許税
- 必要書類の取得費用
- 司法書士への報酬
- その他の税金
想定外の出費にならないよう、事前に確認しておきましょう。
登録免許税
登録免許税は、法務局で登記手続きを行う際に必要な税金で、名義変更の理由によって税率が異なります。
例えば、相続による名義変更の場合、登録免許税は不動産の評価額の0.4%が課税されます。
一方、売買や贈与による名義変更は税率2%です。
例えば、評価額が1,000万円の不動産を相続で名義変更する場合、登録免許税は4万円となります1。
費用はそこまで高額ではないですが、名目によって費用が異なるので事前に確認しておきましょう。
必要書類の取得費用
家の名義変更には、戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などの書類が必要ですが、これらの書類を取得する際にも費用がかかります。
それぞれの費用は以下のとおりです。
書類 | 費用 |
戸籍謄本 | 1通あたり450円程度 |
登記簿謄本 | 1通あたり600円程度 |
住民票の写し | 1通あたり200円程度 |
印鑑証明書 | 1通あたり450円程度 |
固定資産税評価証明書 | 1件目400円、2件目以降100円 |
これらの費用は地域や取得方法によって異なる場合があります。
また、相続人の数や被相続人の転籍状況により、必要な書類の数が増えるケースもあります。
そのため、事前に必要な書類を確認し、余裕を持って準備しましょう。
司法書士への報酬
名義変更は専門知識が必要なため、一般的に司法書士に依頼し、その際に依頼費用がかかります。
報酬は依頼内容や地域によって異なりますが、相続による名義変更の場合は、5万円から15万円程度が相場です。
また、報酬額は各司法書士事務所で異なるため、複数の事務所に見積もりを依頼し、比較検討することをおすすめします。
その他の税金
家の名義変更には、登録免許税以外にも以下の税金が発生する場合があります。
- 贈与税
- 不動産取得税
- 譲渡所得税
贈与税は、親から子へ無償で名義を変更すると贈与とみなされ、年間110万円を超えた分に対して課される税金です。
不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課される税金で、相続以外の名義変更時にも適用されます。
譲渡所得税は、不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して課される税金です。
特に、離婚時の財産分与として不動産を譲渡する場合も適用されることがあります。
これらの税金は、名義変更の方法や状況によって異なります。事前にしっかりと確認し、適切な手続きを行いましょう。
家の名義変更に関するよくある質問
家の名義変更に関するよくある質問をご紹介します。
名義変更は自分でもできますか?
家の名義変更は、自分で手続きできます(ローンを利用中 の家では、金融機関から司法書士への委任を求められる)。
ただし、必要な書類の収集や手続きの流れを理解することが重要です。
具体的には、被相続人の戸籍謄本や住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本などが必要です。
これらの書類を揃えたうえで法務局に登記申請書を提出します。
手続きには時間と労力がかかるため、必要であれば専門家に依頼することを検討しましょう。
名義人が認知症の場合は変更できませんか?
名義人が認知症でも名義変更できますが、通常よりも難しくなります。
家の名義変更をするには家を売ったり贈与したりする必要があります。しかし、これらの行為は基本的に不動産所有者しか行えません。
もし、認知症が進行し、本人の意思で売却や贈与ができないのであれば、成年後見制度を利用するのが一般的です。
この制度では、家庭裁判所が選んだ後見人が本人に代わって財産の管理や契約を行います。つまり、所有者でなくても売却や贈与ができるようになるのです。
家の名義人が認知症の場合は、この制度を活用して名義変更を行いましょう。
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名義人変更についてどこに相談すればいいですか?
司法書士へ相談するのが適切です。
司法書士は、必要な書類の準備や法務局への申請手続きなど、名義変更に関する一連の流れをサポートしてくれます。