専任媒介契約では不動産会社は活動報告を行う必要があり、怠ると報告義務違反となります。
とはいえ、どのような報告義務があるのか、また媒介契約を結んだ不動産会社が報告をしない場合にどのような対応をすればよいか分からないという方も多いでしょう。
この記事では、専任媒介契約における報告義務の基本、報告義務違反があった場合の対処法、契約解除する場合の流れなどを詳しく解説します。
専任媒介契約の報告義務とは
専任媒介契約には、活動報告義務があります。
ここでは、活動報告ではどのような内容を報告するのかや、媒介契約別の活動報告義務の有無を見ていきましょう。
媒介契約の種類別の活動報告義務の有無
不動産会社と結ぶ媒介契約には以下3つがあります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの活動報告義務の有無や頻度は以下の通りです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
活動報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
一般媒介契約では活動の報告義務がありません。
ただし、売主が不動産会社に報告を求めることは可能です。
一方、専任媒介契約と専属専任媒介契約には活動報告義務があります。
専任媒介契約で2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上が義務付けられており、専属専任媒介契約の方が制限が厳しくなるのです。
活動報告の内容
活動報告の主な内容は、以下の通りです。
- レインズへの登録状況
- 広告の出稿状況
- 問い合わせの有無
- 内覧状況 など
報告書に決まった書式はないため、不動産会社によって記載内容は異なります。
基本的には、実施した販売活動の内容や問い合わせ、内覧件数、その際の所見などが記載されています。
これらの記載内容を見て、不動産会社の仕事状況や不動産への反応などをしっかり確認しましょう。
また、報告手段は電話や口頭ではなく書面やメールと定められています。
活動報告の内容に決まりはないとはいえ、報告頻度は決められています。
義務の範囲は最低限であり、不動産会社によってはより小まめに報告してくれるケースもあるでしょう。
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専任媒介契約なのに報告がないときの対処法
専任媒介契約では2週間に1回以上の報告義務があります。
ただし、義務ではありますが怠ったからといって不動産会社に罰則はありません。
残念ながら、なかには報告を怠る不動産会社もあります。
活動報告がなければ売主は販売進捗の確認ができず、いまどういう状況なのか、今後どうすればいいのか分かりません。
活動報告は売主にとって重要な売却戦略の判断材料でもあるため、しっかりと報告を受けられるようにすることが大切です。
不動産会社から活動報告がない場合は、以下のような対処を行いましょう。
- 報告してもらうように催促する
- これ以上報告がないのであれば更新しない旨を伝える
- 催促しても改 善しないのであれば契約解除する
報告してもらうよう催促する
まずは、活動報告をしてもらうように担当者に催促しましょう。
担当者との関係性に問題があるようなら直接不動産会社に伝えるのも1つの方法です。
これ以上報告がないのであれば更新しない旨を伝える
専任媒介契約の契約期間は最長3ヵ月です。
それより短く定めることは可能ですが、3ヵ月を超える契約は無効となります。
また、契約期間終了後には自動更新ではなく改めて更新手続きが必要です。
そのため、報告がないなら更新のタイミングで解約を検討するとよいでしょう。
その旨を伝えておくことで、解約解除にならないように不動産会社が報告の頻度や内容を改めてくれる可能性もあります。
催促しても改善しないのであれば契約解除する
必要最低限の報告義務すら催促しても行わない不動産会社はあまりおすすめできません。
契約を解除して新たに信頼できる不動産会社と契約したほうが、満足いく売却を進められるでしょう。
催促しても状況が改善されないなら、契約違反として契約途中でも契約解除できる可能性が高いです。
売主都合による解約途中の解約は違約金が発生する恐れがありますが、この場合は不動産会社の違反なので違約金は発生しません。
ただし、悪質な不動産会社の場合、いいがかりをつけて費用を請求される恐れがあります。
費用が請求された場合は額を鵜呑みにせず、請求内容をしっかり確認し、納得いかないなら交渉する・都道府県の宅地建物取引業協会の窓口に相談するなどしましょう。
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専任媒介契約を解除する際の流れ
信頼できない不動産会社であれば専任媒介契約の解除を検討することも重要です。
契約期間終了まで待てるのであれば、更新しなければ契約は解除となります。
なお、特約での自動更新は禁止されており、仮に設けられていても無効となるので、3ヵ月を待てば更新せずに解除できます。
一方、報告義務を果たしてくれないなどであれば契約途中での解除も可能です。
しかし、契約途中の解除はトラブルになりやすいので慎重に行う必要があります。
ここでは、契約途中の解除の手順を見ていきましょう。
契約解除したい旨を伝える
まずは、不動産会社に契約解除したい旨を伝えます。
契約解除の仕方に規定はないため、口頭やメールなど伝え方は自由です。
ただし、契約書に解除方法が定められている場合はそれに従うようにしましょう。
猶予期間を設ける
一般的には3~7日ほどの執行猶予を設けて契約解除する方法が丁寧と言えます。
不動産会社によってはその期間で態度を改めてくれる場合もあるので、不動産会社の姿勢を見極めるのもよいでしょう。
なお、執行猶予は必ずしも設ける必要はありません。
即日で解除しても問題ないケースも多いので、状況をみながら判断するようにしましょう。
トラブルを避けるために書面で契約解除を通知するのがおすすめ
執行猶予後にも解除の意志が変わらなければ契約の解除を進めます。
解除は口頭でも有効ですが、トラブルを避けるために書面で通知するのがおすすめです。
内容証明郵便を利用すればいつ・誰に送ったかが明確になるので、万が一の際にも証拠として有効となります。
また、不動産会社によっては解除には必ず書面が必要なケースもあるので、確認して従うようにしましょう。
書面は不動産会社から取得することが可能です。
なお、インターネットで「媒介契約 解約 テンプレート」などで検索してテンプレートを入手して作成してもよいでしょう。
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報告義務以外で契約義務違反となること
専任媒介契約では、以下のような不動産会社の行為も契約義務違反として違約金なしでの途中解約が可能です。
- レインズへ登録していない
- 営業活動していない
- 囲い込みしている
それぞれ見ていきましょう。
レインズへ登録していない
レインズとは、不動産会社が使用する不動産情報システムです。
レインズに物件を登録することで、全国の不動産会社が物件情報をチェックできるようになります。
専任媒介契約では、契約後7日以内にレインズへの登録義務があります。
7日過ぎても登録されていない場合は、義務違反として契約解除が可能です。
なお、レインズは不動産会社しか閲覧できないシステムですが、売主であれば自分の物件情報だけはチェックできます。
レインズへの登録後にIDとパスワード、QRコードなどを記載した登録証明書が不動産会社から発行されるので、証明書を利用しインターネットで閲覧できます。
そもそも登録証明書が発行されない場合は、登録されていない可能性があるので不動産会社に確認するようにしましょう。
仮に、登録されている場合でも情報が適切に掲載されていない 場合もあるので、内容をチェックすることが大切です。
営業活動していない
契約を結んだ以上、不動産会社は成約(売却)に向けて積極的に努力する義務があります。
営業活動としては、チラシやサイトへの物件掲載・問い合わせ対応・内覧対応などです。
これらの業務を怠っている場合は、契約違反として契約解除できます。
囲い込みしている
囲い込みとは、他社から問い合わせなどを遮り自社でのみ買主を見つけようとしている状況です。
他社からの問い合わせに「すでに決まった」など嘘の情報で断ったり、レインズの登録情報を削除したりといった行為が挙げられます。
これは、不動産会社が自社で売主・買主を見つける両手仲介を狙って行われます。
囲い込みされると、他社からの買い手がつかず販売が長期化してしまったり、売却額が下がったりする恐れがあるので注意しましょう。
2024年7月の宅建業法改正により、不動産会社が囲い込みを行った場合は行政指導されるようになりました。
一般の売主が囲い込みを見抜くのは難しいのが現状ですが、内見が全く入らない状況が続いているといったケースでは、他の不動産会社に相談するなどを検討しても良いでしょう。
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専任媒介契約の報告義務違反に関するよくある質問
最後に、専任媒介契約の報告義務違反に関するよくある質問をみていきましょう。
専任媒介契約を解除する際の書面に決まった書式はある?
契約解除は口頭でも成立しますが、書面で残しておくことでトラブルを避けやすくなります。
決まった書式はなくインターネットでテンプレートを入手して作成することも可能です。
不動産会社によっては契約解除の書面を用意しているケースもあるので、確認してみるとよいでしょう。
「2週間に1回以上」の報告義務に休日は含まれる?
報告義務で規定されている日数には休日も含まれます。
なお、専任媒介契約ではレインズへの登録義務を契約日から7日以内としていますが、こちらは休日を含みません。
報告義務と登録義務が規定する日数は、休日を含むかどうかが異なるので注意しましょう。
専任媒介契約の報告義務違反に罰則はある?
残念ながら報告義務違反をした場合でも不動産会社に罰則はありません。
ただし、宅建協会から指導や営業停止を受けるといった恐れはあります。
そもそも、罰則がないからといって義務を怠る不動産会社を信頼できるかといえば難しいところでしょう。
専任媒介契約は不動産会社1社のみとしか契約できない形態です。
信頼できない不動産会社を選ぶと売却がスムーズにいかない可能性もあるので、契約する不動産会社は慎重に選ぶ必要があります。
また、今の不動産会社に不満があり新しい不動産会社を選ぶにしても、信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
複数の不動産会社を比較し、信頼でき、かつ販売力のある不動産会社を選ぶようにしましょう。
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まとめ
専任媒介契約では、2週間に1回以上の営業活動報告義務があります。
営業活動報告は、広告出稿状況や問い合わせ状況、不動産会社の所感などを確認でき、売主が営業状況を把握し適切な判断を下す重要な材料です。
また、不動産会社とのコミュニケーションの一環ともなります。
営業活動報告を怠る不動産会社は、スムーズな売却が難しくなるだけでなく、そもそも必要な義務を果たしていない事自体が問題になります。
営業活動報告がない場合は、催促などを踏まえて契約解除も視野に入れるとよいでしょう。