不動産の売却で失敗しないためには「複数社に査定依頼する」ことが重要です。複数社に査定を依頼することで、成約が見込める適切な価格を把握しやすくなると言われています。
しかし、「どの会社を選べば良いのか」「一括査定サイトを使っても良いのか」などの疑問を持つ人も多いでしょう。
この記事では、不動産売却時に複数社に査定依頼をすべき理由と、その際の注意点について解説します。
不動産売却における査定の重要性
不動産を売却する前に行われる「査定」は、「この物件がどれくらいの価格で売れるか」を不動産会社が判断するプロセスで、不動産売却の成功を左右する重要な要素です。
有料の「不動産鑑定」もありますが、これは主に裁判資料の作成や税金の計算目的で利用されるもので、売却時には不動産会社が無料で行う「査定」で十分です。
査定額は売り出し価格の基準となるものですが、査定額はあくまでも「目安の価格」であり、不動産会社によって異なる価格が提示されることもあります。
ではなぜ「査定が重要」なのかと言うと、売却のパートナーとなる「不動産会社選び」に直結するからです。
この話を踏まえて、査定から売却までの流れを見ていきましょう。
査定額と売却価格の違い
査定額はあくまで売り出し価格の参考値であり、実際の売却価格ではありません。
「あなたの家は3,000万円ぐらいで売れそうなので、少し高めの3,300万円で売り出してみましょう」といった提案の意図を込めて「3,300万円」が提示されるケースも多いです。
では、実際に3,300万円では売れないのかと言うと、都心部や周りに販売中の競合となる物件が無いなど、特殊な状況を除いて売れる確率は低いと言えるでしょう。
購入希望者からの値下げ交渉や、不動産会社の値こなし(販売価格を下げること)の可能性もある。
査定額が売却価格と一致するのはレアケースであり、売却価格が査定額を下回ることも少なくないのです。
「じゃあ一体私は何を信じて査定を見極めたら良いんだ」と悩む方も多いでしょうから、「良い不動産会社選び」に繋げるための情報を補足していきます。
不動産査定の種類と特徴
不動産査定には主に以下の3種類があります。
AI査定
過去の不動産取引データを基に、AIが金額を算出する査定方法です。
手軽に利用でき、名前や電話番号を登録せずに査定結果を確認できるので、初期段階での相場調査に適していますが、個別の物件状態を加味しないため、実際の相場とは大幅なズレが生まれることもあります。
AI査定の特徴
まず、AI査定は自分が所有する不動産の面積や、マンションであれば物件名を入力することで、過去の取引データを参照した目安の売却金額を知ることができます。
面積等の物件情報さえ把握しておけば所要時間は一瞬なので、ぜひ活用してみましょう。
▼AI査定の例:SUMiTAS
AI査定の注意点
ただし、AI査定価格を申し込んだ人が「こんなに高く売れるなら、売ろうかな!」と考えてその後の机上査定や訪問査定につなげやすいよう、「少し高めの金額を出す」サービスもあると言われています。
個人情報等の入力が必要なく、WEB上で完結するため気軽に利用できるAI査定ですが、査定の精度や価格の妥当性は不透明です。
「AI査定の金額は、あくまでも不動産会社の営業ツール」である点を踏まえて確認するようにしてください。
机上査定(簡易査定)
机上査定も過去の取引データを中心に査定を行うもので、一括査定サイトや、不動産会社のWEBサイトから申し込むことができます。
売却を検討している段階で、実際に不動産会社に確認してもらった上で相場を知りたい場合に便利です。
机上査定の特徴
机上査定の場合も、価格の算出基準となるのは過去の取引データです。
「レインズ」という不動産会社専用の物件情報サービスを用いて、周辺で過去に取引された物件の売買価格や、現在販売中の物件の売れ行きを考慮した価格が提示されます。
それに加えて、GoogleマップやストリートビューといったWEBサービスを用いて、不動産会社の担当者が外観や道路付け等を確認し、「売れやすさ」に影響するポイントをチェックして価格を調整する場合があります。
また、役所で登記簿や用途地域を確認し、物件情報の相違や販売に苦戦する要素は無いかなどの点がチェックされることもあるでしょう。
机上査定の注意点
なお、特に一括査定サイトを利用して申し込んだ際は、他に競合する不動産会社の存在がわかっているため、「自社に興味を持ってもらうために高めの金額を提示する」会社もあります。
「机上査定の金額は、あくまでも不動産会社の営業ツール」という点を踏まえて確認するようにしてください。
訪問査定(実査定)
不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、内部の状態や周辺環境を詳しく確認した上で行う査定です。
最も精度が高いため、売却を本格的に検討している場合におすすめです。
通常は、机上査定の金額を提示した不動産会社に訪問査定を依頼し、媒介契約を検討する流れになります。
訪問査定の特徴
訪問査定では、実際に物件内部の状態を加味した上で金額が算出されます。
中古物件の場合、管理状態によって同じ築年数でも内装や設備の損傷度合いが大きく異なります。
そのため、実際に不動産会社の担当者が物件内部をチェックし、買主が購入後にどの程度のリフォームを見込むかといった要因も踏まえた金額が提示されるのが訪問査定です。
訪問査定の注意点
ただし、訪問査定の金額も、自社と契約を結んでもらうために高めの金額が算出されるケースが少なくありません。
「訪問査定の金額は、あくまでも不動産会社の営業ツール」という点を踏まえて確認するようにしてください。
査定は不動産会社の営業ツール
おわかりいただけたでしょうか。
結局のところ、全部の査定方法が「営業ツール」に過ぎません。
特に一括査定サイトを利用した場合「競合する他社」の存在が明らかなので、高めの査定額が提示されやすいです。
しかし、「不動産会社が営業のために相場価格よりも高い金額を出すのは当たり前」であることを知っておくのと知らないのとでは、その後の展開がまるで違ってきます。
複数社に査定を依頼するべき理由
この記事では「複数の不動産会社に査定を依頼すべき理由」を説明するのですが、前置きに2,300文字もかけてしまいました。
しかし、ここまで読んでいただいた方には絶対に損をさせませんので、ぜひ続きもご覧ください。
売主に魅力的に映る高値の査定
データで算出するAIツールや机上査定も、実際に物件の中を見る訪問査定も、あなたの家が売れる金額ではなく、あくまでも目安の価格、そして自社を選んでもらうための営業の一環で価格が算出されています。
例えば、あなたが家を売ろうと思ったタイミングで、住宅ローンの残債が2,500万円残っていたとします。
一方で、あなたの家を売り出して成約が見込める相場価格が2,000万円です。
このとき、不動産会社は査定段階で「2,500万円で売れてローンを完済できる見込みはほぼない」ことは、当然わかっています。
- 正直に2,000万円と伝える
- 契約を取るために2,800万円など高めの金額を伝える
不動産会社が出す査定額としては、大きく分けて上記の2パターンどちらかになるでしょう。
あなたは「正直な査定額を出した不動産会社」と「高めの金額でとりあえず契約を結べばいいやと考えてる不動産会社」のどちらと取引したいですか?
冷静に考えれば「正直な不動産屋」と答える方が多いでしょうが「自分の愛着のある家は高値で売れて当然だ。ましてや不動産の相場は上がってるらしいのに、ローン残債より低い金額なんてあり得ない」と考えて、高値の会社を選ぶ方も少なくありません。
厳しい表現をすると、現実的な価格を把握できておらず、夢を見ている状態です。
査定額には色々な思惑が隠れている
「不動産の査定」は、売主とコミュニケーションを取って、売却を任せてもらうための営業行為なのですから、低い金額にも高い金額にも、それぞれ色んな思惑が隠れています。
「正直な不動産屋」と「高値を出した不動産屋」の話では、
- 正直さん:ローン残高から大きく不足してしまう金額になるから、今回は売らない判断になりそうだな
- 高値さん:うちと契約して高値で売り出しても中々売れないけど、少しずつ値段を下げていって妥協できるラインを探せたらいいな
という考えで、最終的に売主の力になれればいいなと考えて提案している可能性もあるでしょう。
反対に
- 高値さん:媒介契約を取れたら社内評価のプラス要素になってボーナスも出るから、とりあえず高値で査定しておくか
など、身勝手な理由で高い値段を出しているケースもあるかもしれません。
つまり「2社だろうと10社だろうと334社だろうと、複数の不動産会社に査定をしてもらったところで、自分が提示された査定金額の妥当性を判断して、不動産会社を選ぶ指標を持っていないのであれば何の意味も無い」のが現実なのです。
「査定額」の比較はあまり意味がない
ここまで読んでいただいた方は「複数の業者に査定してもらうメリット」を知りたかったはずなのに「結論:複数の不動産会社に査定してもらうのは意味がありません」などと言われたら、正直ビックリしてしまいますよね。
ただ、あくまでもこれは「査定額」で見た場合の話であって、冒頭で述べた「売却のパートナーとなる不動産会社選び」の観点で見ると、複数の業者に査定してもらうのは大きな意味があります。
「パートナー選び」としての不動産査定
あなたは、自分が恋愛する相手をどのように選んできたでしょうか?
学生時代からの同級生、会社の元同僚、先生と生徒、お見合い、最近はマッチングアプリなんかで結婚する人も増えてきましたよね。
人生の大切なパートナーを選ぶ際には、きっと色んな判断基準があったと思います。
優しい、正直、強い、かっこいい、かわいい、お金持ち、仕事ができる、人の魅力は様々です。
そして、不動産会社や営業担当者の魅力・強みもさまざまなのです。
どんな基準で不動産会社・営業担当者を選ぶか
売却を依頼する=媒介契約を結ぶ不動産会社は、どんな理由で選びたいですか?
査定額ですか?確かに、その金額で本当に売れるなら高い査定額のところを選びたくなりますよね。
大手の不動産会社ですか?確かに、大手の看板は安心感がありますよね。
しかし、自分の家の売却は人生でそう何度もあることではありませんから、「担当者の人柄で選ぶ」という視点を持っておくのも良いかもしれません。
チャレンジ価格の危険性
査定額はあくまでも目安の価格であって、売れる価格ではありません。
特に最近は、媒介契約を結ぶために「チャレンジ価格」と呼ばれる高めの値段(売れる見込みはかなり低い)が提示されるケースが増えています。
査定額を純粋に信じて「こ の価格で売れるんだ」とウキウキで販売を始めてしまうと、後々の失敗に繋がりかねません。
高値で売り出してしまうと、売却が長期化して相場より安い価格で売らざるを得ないリスクもある。
大手か中小か
また、大手の不動産会社と言っても、新入社員からベテランまでいるので、担当者による実力の差は大きいでしょう。
むしろ「不動産屋は仕事ができる人ほど独立する」傾向にあり、町の小さな不動産会社でも実力があり、信頼を獲得して長く営業を続けている会社も多いです。
これらの点を踏まえると、「担当者との相性を見極めた上で媒介契約を選ぶパートナーを選ぶ」ことの意義も見えてきたのではないでしょうか。
そして、もし仮に選んだパートナーとの調子が上手くいかないような場合は、査定段階で出会った過去のパートナー候補の言うことを思い出したり、セカンドオピニオンとしてもう一度話を聞いてみたりといった必要性が出てくるかもしれません。
その際に「複数の不動産会社に査定してもらっておいて、正直な相場価格や意見を把握できているか」は重要になります。
不動産売却の失敗に繋がる心理状況
不動産の売却でよくある失敗例としては、「売却が上手くいっていないにも関わらず、価格の改定や仲介会社を変更しないこと」です。
一度でも媒介を依頼してしまうと、下記の心理効果が働いて契約解除を申し出るハードルが大きく上がってしまいます。
サンクコスト効果
不動産の査定申し込みから媒介契約を結ぶ不動産会社を選ぶまでには、意外と時間や手間がかかります。
不動産会社の 言うことを判断するために、ご自身での相場価格調べに尽力された方も多いと思います。
そうして苦労して不動産会社を決めたのに、もし契約解除することになれば、これまで費やした時間やエネルギーが「サンクコスト(埋没費用)」となってしまうことに強い抵抗を感じるのが人間です。
この心理がはたらくと、仲介会社を変更する決断が難しくなります。
一貫性の原理
人は一度決めたことに対して、一貫性を保とうとする傾向があります。
不動産会社と媒介契約を結んだ後は、自分の判断が正しかったと信じたいという心理が強まります。
そして「この会社を選んだのだから、きっと大丈夫だ」と考え、契約を継続しようとしてしまうのです。
認知的不協和
媒介契約を結んだ後、提示された売却価格が現実的でないことに気づいた場合、認知的不協和(自分の選択と現実の矛盾から生じる不快感)が生じます。
この不快感を減らすために、契約を正当化しようとする心理が働きます。
例えば「高値を出してもらったからこそ、時間がかかるのは当然だ」といったように、状況を自分に都合の良いように解釈し、契約を続けてしまうことがあります。
現状維持バイアス
媒介契約を結んだ不動産会社の担当者との間にある程度の信頼関係が形成されてしまうと、その関係を壊すことに対して心理的な抵抗を感じます。
担当者からの説明を何度も受けているうちに、「この担当者を信じて待つ方が良いのではないか」と思うようになり、契約解除に踏み切れなくなることがあります。
金銭的 な損得が大きい不動産取引において損切しにくくなるという意味では「コミットメントのエスカレーション」とも言えるかもしれません。
これらの心理的効果により、売れる見込みの無い高すぎる価格で契約を結んでしまった後、それに気づいても契約を解除するのは簡単ではないのです。
したがって、契約を結ぶ前に冷静に判断し、複数の不動産会社の話を慎重に比較して、信頼できる不動産会社・営業担当者を選ぶことが非常に重要です。
売れない場合、売りたい理由と値付けに納得できているか
例えば、無理に売るつもりが無くて「売れて利益が出たらラッキーだから高値で出し続ける」ことに納得しているのであれば、相場より高い値段で長期間販売することは全く問題ありません。
一方で、「住み替えの予定を立てていて、中々売れずに困っているのに高値での成約を目指し続けて、正直イライラし始めている」のであれば、成約が見込める価格を再チェックした上で、価格の変更や媒介契約を結ぶ不動産会社の変更も視野に入れるべきです。
ただし「そもそも住宅ローンの残債が売却金額でクリアできないのであれば売らない」という考えがあって、現実的な相場価格がその水準に満たないのであれば、一旦売り出しは中止した方が精神的な負荷も和らぐでしょう。
不動産売却成功のコツは担当者との「目線」の共有
不動産売却の成功には、不動産会社の担当者とのコミュニケーションを通じて「目線を共有すること」が欠かせません。
営業担当者が物件や周辺エリアについてどれだけ詳しく 調査しているか、要望に迅速に対応してくれるかが売却の成否に大きく影響します。
また、売主の「目線」と仲介会社の「目線」を合わせることで、担当者は熱心・スピーディー・誠実に対応してくれます。
担当者と「目線」を共有するというのは、たとえば「どの程度の価格までなら値下げに応じられるか」「住宅ローンの残高などを考慮して妥協できるラインはどこか」といった具体的な条件を明確にすることです。
不動産会社をやる気にさせる情報開示
査定額を高めに出して契約を結ぼうとする話を聞いて「不動産会社は何となく信用できない」と思って「とにかく高めに売りたいです」と自分の目線を語らなかったり「私は不動産についてよく調べてますから、騙すようなことをしても無駄ですよ」と言わんばかり、不動産会社に強く当たるような人もいるのですが、基本的にこれらの行為は逆効果です。
「感じの悪い客」「感じの良い客」どちらの対応を丁寧にやるかと言えば、ポジティブな印象がある方に決まっています。
ですので、「騙されないぞ」と力を入れて疑心暗鬼な状態で不動産会社と話し合うよりは、
「住宅ローンの残高はいくらで、手出しできるのはこれぐらいです。住み替え先はまだ決まってないですが、できれば〇〇市のマンションにしたくて、物件を探しています」
など、できる限りの自己開示をすることで、建設的なアイディア、現実的な売却価格も提示してくれるでしょう。
成約が見込める相場価格の把握
- 売却の理由
- 売りたい時期(〇カ月後など)
- 住宅ローンの残高
など の情報は、売却の確度を測るために査定時にヒアリングされるケースが多いですが、積極的に情報開示しない売主は「まだ売却に乗り気じゃないのかな」と判断されて、査定にもそれほど時間をかけてくれないことは珍しくありません。
例えば「住み替え先の購入も御社にお願いしたいですが、売却できないと次の物件は買えません」と言えば、「売れなければ買えない」事情がわかっているので、まずは売ることに現実的な目標ラインを設定した上で熱心に取り組んでくれるはずです。
また「値下げ無しで3カ月程度で売るとしたら、いくらぐらいが適切だと思いますか?」など、高値ではなくあえて安値を確認して、現実的な相場を把握する方法も有効です。
高値に過度に期待して後々の売却活動で苦戦するリスクも低減できるでしょう。
周辺物件の成約事例、売り出し状況の確認
不動産会社を選ぶ基準として「査定根拠が大事だ」とよく言われますが、最近は前述のAI査定も普及しており、その情報源となる成約事例は「不動産情報ライブラリ」など一般公開されているサイトで確認可能です。
また、SUUMO、HOME’Sなどの不動産情報サイトを確認すれば、自分が売り出す家の周辺で、どんな物件がどれくらいの価格で販売されているかをチェックできます。
こうした情報も確認することで「査定額」に踊らされずに、不動産会社の話を判断できるようになるでしょう。
一括査定サイトを賢く使うコツ
複数の不動産会社・営業担当者の話を聞いて、売却を任せる会社を選ぶ 際は一括査定サイトも便利です。
選択する不動産会社が多いとそれだけ対応が大変
ただし、
「できるだけ多くの会社を比較した方が良さそうだから、とにかく多くの不動産会社に査定を申し込もう」
「場合によっては複数の一括査定サイトを使うのも良いらしい」
など、ネット上の情報を信じるのは危険です。
不動産一括査定サイトの多くは最大6社程度に同時査定依頼が可能ですが、6社を選択したとき、各不動産会社の営業電話等に対応するのはとても大変です。
また「複数の一括査定サイトを使いましょう」といった言及も、大体は自社サイトの宣伝か、アフィリエイト広告(そのサイトの紹介リンク経由で申し込みがあれば、広告掲載者に報酬が渡る)です。
自社サイトの宣伝に関してはこの記事もまさしくそうなのですが、ここまで読んでいただいている方に感謝して、この記事では自社のPRをしたい欲望は抑えて話を続けていきます。
2,3社程度に絞って査定依頼するのがオススメ
「時間はたっぷりあるから、色んな会社の話を聞いてみたい」場合は、多めの会社を選択しても構いません。
しかし、各社の対応を見極めた上で売却を依頼するパートナーを選ぶという視点であれば、2,3社程度に絞って査定依頼するのが効率的です。
- 大手の不動産会社
- 地元の不動産会社
- 買主の手数料無料など、買い手にとって魅力的に見えそうな不動産会社
など、不動産会社の規模や営業手法をWEBサイト等で確認して、異なる特徴の会社を絞り込んで査定依頼するのが良いでしょう。
大手の不動産会社を選ぶメリット
「大手だから安心だ」と考える売主の方は多いですが、買主目線でも大手の知名度や実績には安心感があります。
大手に中古不動産の購入を仲介してもらう顧客の母数が多いため、それだけ自分の家を繋げてもらえるチャンスも拡大します。
ただし、大手不動産会社は売主・買主の両方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」の割合が多く、担当者によっては他社からの買主を繋げない「囲い込み」を行うケースもあると言われています。
囲い込みをされると他社からの買主を繋げてもらえないため、長期間売れないリスクが生じる。
両手仲介や囲い込みのリスクは、大手だけに限った話ではないのですが「大手だからコンプライアンスもきちんとしてそうで安心」という思い込みは間違いかもしれない点を頭に入れておきましょう。
地元の不動産会社を選ぶメリット
地域に根差した営業を行っている不動産会社は、地元客の客付け(買主の獲得)に長けていることがあります。
そのため、手広く営業を行う大手ではカバーできない、地元住民の住み替えニーズ等に合わせた紹介が期待できます。
買主の仲介手数料無料の不動産会社を選ぶメリット
「買主の仲介手数料は無料にします」という営業方針の不動産会社は、コストを抑えて中古住宅を購入したい顧客層の客付けに長けていることが予想できます。
また、買主から手数料を取らないことは、他社から買い手の引き合いがあった際にも紹介を断らないことを意味するので、「囲い込み」のリスクも低い点がメリットだと言えるでしょう(自社の買主を繋げても、他社の買主を繋げても、手数料報酬は同じだから)。
さらに、買主の手数料負担が無い分、不動産会社としても売主の値下げ幅は最小限で提案しやすい点もメリットになります。
「売主の仲介手数料無料」も売却時の費用が抑えられる点で魅力的に見えますが、売主が仲介手数料を支払わない不動産売買は、必然的に両手仲介になります。
引き合いの数や買主からの値下げ交渉を加味すると、買主側の仲介手数料無料という仕組みは、売主にとっても悪い条件ではありません。
ただし、買主側の手数料を無料(または割引)にしている不動産会社を探すのは少し難しい点がデメリットです(売主が業者に限るなどの条件を付けているケースも多い)。
売却を完了したい時期に余裕があれば、こうした会社を探して選択肢に入れてみるのも良いでしょう。
媒介契約の種類と選び方
不動産売却を依頼する会社を選んだ後は「媒介契約」を結びます。
「媒介」と「仲介」はどちらも同じような意味で、売主と買主を繋げて取引をサポートすることを意味します。
各媒介契約の違いは、以下の表の通りです。
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
複数社への依頼 | ○ | × | × |
自己発見取引 | ○ | ○ | × |
有効期間 | 当事者間で自由に決定できる | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
指定流通機構 | 任意 | 7日以内に登録 | 5日以内に登録 |
業務処理状況の報告 | 任意 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
- 一般媒介契約:複数社に依頼できる
- 専任・専属専任媒介契約:1社のみに依頼できる
という違いがあり、下記記事では媒介契約の違いや選び方を詳しく解説しています。
▼関連記事

人と人が繋がる不動産売買
「担当者の人柄」や「パートナーとしての信頼性」といったワードを聞くと、少々説得力に欠けるのではないか、かえって判断に迷ってしまう、と感じる方もいるかもしれません。
しかし、一度契約してしまった不動産会社と契約解除しにくくなってしまう心理がはたらくように、人と人が繋がって最終的に売買が成立するのが不動産取引です。
あなたが「信頼できる」と判断して売却を依頼した不動産会社・営業担当者は、買主に対しても誠実かつ熱心に向き合ってくれるパートナーとなるのではないでしょうか?
そして、「熱心に動いてくれるこの人から家を買いたい」との理由で不動産会社を選ぶ買主は少なくありません。
一見曖昧に思える『人柄』という要素も、あなたが不動産査定の知識を持っていれば、信頼できるパートナーを見極める有力な指標となります。