住宅ローン残債が完済できないと買い換えできない?判断ポイント3つ
住宅ローンを組んで購入した家を売却して買換えようとするときは、住宅ローンの残債に気をつける必要があります。
家を売却して得た売却代金で住宅ローンの残債を完済できなければ、そもそも家を売却できないからです。
ポイント①抵当権について
住宅ローンを組むと、購入する家に抵当権を設定する必要があります。
抵当権とは、対象となる住宅ローンの返済が滞った場合には、融資した金融機関が家を差し押さえることのできる権利です。
抵当権がついている家は原則として売却できません。
売却価格と手持ちの資金で住宅ローンを完済するのはもちろんですが、新しい住まいの頭金や引っ越しの費用も必要であれば、それも計算に入れておきましょう。
このため、家を売却する前に抵当権を抹消する必要があるのですが、抵当権を抹消するためには住宅ローンを完済することが条件となります。
ポイント②築年数について
日本では新築住宅に対する人気が高く、「新築住宅は購入した瞬間価値が2割下がる」と言われているほどです。
これは、買主側が新築=誰も住んだことのない家に価値を感じやすいことと、売主側が建物の建築費以外に広告費や売主側の利益が販売価格に乗せられていることが関係しています。
国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」では新築から築35年までの価格推移が記載されています。
これによると、マンションは築0年から築1年で1割強価格が下がった後、緩やかに下がっていく一方、戸建て住宅(木造)では築0年から築1年で5%程度しか下がらないものの、その後20年程かけて急激に価値が低下し、築15年程で8割程価値が下がっていることが分かります。
特に木造の新築戸建て住宅を建てた場合、築15年を超える家を売却しようと考えると、建物部分の価値はほとんど付きません。ただし、近年は住宅の建設コストが高まっており、中古住宅の評価も高まっています。
高品質なハウスメーカーの施工した家や、メンテナンス状態が良好な家であれば、建物部分が高く評価されることもあります。
ポイント③現在の住宅ローンについて
ローンの返済には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。
元利均等返済とは、「借入期間中、元金と利息の合計額を均等に返済していくこと」で、元金均等返済は「借入期間中、元金を均等に返済していくこと」です。
住宅ローンにおいては、毎月の返済額が均等になる元利均等返済が選ばれることが多いです。
例えば、借入額3,000万円、借入期間35年、借入金利1%で借入した場合、10年返済時点の残債はおよそ2,250万円、20年返済時点の残債はおよそ1,400万円となっています。
毎月返済額はおよそ8.4万円なので、10年経過時点の総返済額は1,008万円、20年経過時点の総返済額はおよそ2,016万円となり、実際の返済額と残債とでは、10年返済時点でおよそ250万円、20年返済時点でおよそ416万円の乖離があることが分かります。
経過年数(年) | 毎月返済額(円/月) | 内利息分(円/月) | 残債(円) |
1 | 84,685 | 24,450 | 29,280,480 |
2 | 84,685 | 23,845 | 28,553,734 |
3 | 84,685 | 23,234 | 27,819,687 |
4 | 84,685 | 22,616 | 27,078,265 |
5 | 84,685 | 21,993 | 26,329,393 |
6 | 84,685 | 21,363 | 25,573,001 |
7 | 84,685 | 20,727 | 24,809,011 |
8 | 84,685 | 20,084 | 24,037,345 |
9 | 84,685 | 19,435 | 23,257,928 |
10 | 84,685 | 18,780 | 22,470,680 |
11 | 84,685 | 18,118 | 21,675,523 |
12 | 84,685 | 17,449 | 20,872,377 |
13 | 84,685 | 16,774 | 20,061,164 |
14 | 84,685 | 16,091 | 19,241,801 |
15 | 84,685 | 15,402 | 18,414,206 |
16 | 84,685 | 14,706 | 17,578,297 |
17 | 84,685 | 14,003 | 16,733,991 |
18 | 84,685 | 13,293 | 15,881,203 |
19 | 84,685 | 12,576 | 15,019,848 |
20 | 84,685 | 11,852 | 14,149,840 |
※借入期間35年、借入金利1%、借入額3,000万円で計算
特に元利均等返済を選ばれた方は、住宅ローンの残債を調べたときに「思ったより減っていないな」と感じることが多いでしょう。
住宅ローンの残債があるときの買い換え
ここからは、住宅ローンの残債があるときの買い換えについて詳しく見ていきたいと思います。
なお、「家の売却額」が「住宅ローンの残債」より大きい状態のことを「アンダーローン」、「家の売却額」が「住宅ローンの残債」より少ない状態のことを「オーバーローン」と呼びますが、まずはこれらについて解説します。
アンダーローンの場合
アンダーローンは家の売却額が住宅ローンの残債より大きい状態のことなので、家を売却したお金で住宅ローンの残債を完済してしまえば問題ありません。
住宅ローンの残債を完済して残ったお金については買い替え先の家を購入するお金に充てることもできます。
例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で家の売却代金が2,000万円であれば、家の売却代金で住宅ローンを完済できるので問題なく買換えに進めるのに加え、差額の500万円を買い換え資金等に充てられます。
オーバーローンの場合
一方、家の売却代金より住宅ローンの残債の方が大きいオーバーローンの場合、対策を講じなければ家を売却することはできません。
売却額と手持ち資金で完済できる場合
まず、オーバーローンでも手持ち資金で住宅ローンを完済できるのであれば問題ありません。
例えば、住宅ローンの残債が1,500万円、家の売却代金が1,000万円だった場合、差額の500万円を手持ち資金で用意できれば問題なく買い換えに進むことができます。
手持ち資金が足りない場合
一方、オーバーローンの状態にあり、さらに差額分を手持ち資金で用意できない場合には家を売却できず、買い替えに進めることができません。
この場合、対処法として「任意売却する」か「買い換えローンを利用する」かの2つの方法を取ることが考えられます。
以下でそれぞれについて見ていきましょう。
オーバーローンの場合の対処法その1:任意売却する
任意売却とは、住宅ローンを完済できていなくても抵当権を抹消できるよう、金融機関と交渉する方法です。
例えば、住宅ローンの残債1,500万円に対して1,000万円しか用意できなくても、金融機関と合意のうえ任意売却すれば家を売却できます。
なお、残った500万円については金融機関と返済条件を交渉し、返済していくことになります。
とはいえ、実は任意売却は「住宅ローンを延滞した後」にしかすることができません。
住宅ローンを延滞してしまえば個人信用情報に傷がついてしまうため、新規でローンを借りることができなくなります。
オーバーローンの場合の対処法その2:買い替え(住み替え)ローンを利用する
オーバーローンの場合で手持ち資金も用意できない場合、現実的には買い替え(住み替え)ローンを利用するのが一番の方法です。
買い換えローンとは、買い替え先の家の購入にあたり、家の購入価格以上の融資を受けることで、住宅ローンの残債も完済してしまうというもの。
例えば、3,000万円の家を購入するにあたり、3,500万円の融資を受けることで差額の500万円を、住宅ローンの残債の完済に充てることができます。
買い換え(住み替え)ローンの流れを知ろう
買い換えローンは以下のような流れで手続きを進めます。
- 売却査定~媒介契約締結
- 売却活動
- 新居探し
- 売却のための売買契約
- 新居のための売買契約
- 決済
それぞれについて見ていきましょう。
1. 売却査定~媒介契約締結
まずは不動産会社に売却査定するとともに、気に入った不動産会社と媒介契約を締結します。
査定額によってどのくらいの資金が必要になるのか、いくらの買い換えローンを組む必要があるのかある程度計算しておくとよいでしょう。
2. 売却活動
不動産会社と媒介契約を結んだ後は、売却活動を行います。
査定額を元に決定した売り出し価格で売却が決まらない場合には値下げも検討する必要があります。
新居の購入とタイミングを合わせるために、ある程度価格調整しなければならないこともあるでしょう。
値下げや値引きをする際には買い換えローンの金額も増やす必要がある点に注意が必要です。
3. 新居探し
売り出しを始めてみて、市場の状況を見ながらある程度成約価格の目処がついてきたら新居探しを始めましょう。
物件の立地や築年数等も買い換えローンの審査に影響が及びます。
金融機関と相談しながら物件探しを進めることをおすすめします。
4. 売却のための売買契約
売却活動の結果、買い手が見つかったら売買契約を締結します。
売買契約締結と同時に手付金を受け取ることができます。
なお、売買契約締結後、買主は住宅ローンの本申し込みをしますが、本申し込みが否決となると解約しなければならないこともある点に注意が必要です。
5. 新居のための売買契約
買い換えたい家が見つかったら売買契約を締結します。
今度は売主に対して手付金を支払う必要があります。
売買契約締結後買い替えローンの本審査を受ける必要がありますが、売買契約後に否決となるリスクを下げるためにも、新居を見つけた段階で仮審査を受けておくことがおすすめ。
なお、仮審査の際には収入証明や本人確認書類があればよいですが、本申し込みでは自動車ローンなど他の借入に関する書類や印鑑証明書など必要になります。
また、売買契約書には売買額に応じて印紙を貼る必要があるため、不動産会社や金融機関に確認して用意しておくとよいでしょう。
6. 決済
売却のための売買契約と新居のための売買契約を済ませ、それぞれローンの申し込み審査が承認となったら、決済日を当日に設定します。
当日は、元の家の買主から資金を受け取り、現在のローンを完済するとともに買い替えローンで新居の代金を支払います。
同時に元の家の抵当権抹消登記と所有権移転登記、新居の所有権移転登記、抵当権設定登記を行います。
このため、売却する家の権利証や住民票、印鑑証明書など忘れずに持参する必要があります。
なお、当日はそれぞれについて固定資産税や修繕積立金の清算、仲介手数料の支払い等も行う必要があり、細々としたお金が動くため、全て事前に計算しておくようにしま しょう。
住宅ローンの残債があるときの買い換え(住み替え)に関する注意点
住宅ローンの残債があるときの買い換えにおいては以下の点に注意する必要があります。
- 家の売却代金は最後まで変動する可能性がある
- 家の売却にも買い換えにも諸経費がかかる
家の売却代金は最後まで変動する可能性がある
家を売却する際、最初に不動産会社の査定を受けて売却価格を算出してもらいます。
通常、買い替えの資金計画はこのときの査定価格を元に立てますが、実際に家の売却活動を始めて買い手がつかないと値下げを検討しなければなりません。
また、いざ買い手の候補者が見つかったとしても、最後に「この価格であれば購入します」と価格交渉を持ち掛けてくることも。
住宅ローンの残債がある家を売却して買い換えするときは、この最終的な売買価格で住宅ローンを完済できるかを判断する必要があるのです。
例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で、1,600万円で売りに出したところ売却が決まらず、1,500万円に値下げした後、買い手が現れたので話を進めようとしたところ、最終的に1,400万円までの値下げを要求された場合、差額の100万円を用意できない場合には断わらざるを得ないということになります。
家の売却にも買い換えにも諸経費がかかる
ここまで、諸経費については考慮せずに計算してきましたが、実際には家の売却にも、買い換えにもそれぞれ仲介手数料や登記費用などの諸経費がかかります。
具体的な諸経費の額は売買する家の価格にもよりますが、売却と買い換えそれぞれについて売買価格の5~10%程度はかかると考えておいたほうがよいでしょう。
仮に1,500万円の家を売却して3,000万円の家に買い換える場合、家の売却と買い換えで合計200~300万円程度の諸経費がかかると考えた上で買い換えの資金計画を立てる必要があります。
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まとめ
住宅ローンの残債があるときの買い換えについて解説しました。
オーバーローンの状態にあり、かつ手持ち資金で対処できない時には買い換えローンの利用を検討する必要があります。
とはいえ、買い換えローンは家の担保価値以上の融資を受けるため審査が厳しくなってしまいます。
オーバーローンで手持ち資金を用意できず、買い換えローンの審査で承認を得ることがてきない場合には、買い換え自体できません。
ただし、オーバーローンかアンダーローンかは家の売却次第です。
「イエウリ」を利用するなどして、家の売却価格を高くすることができれば、上記のような状態でも解決できることもあります。
そうでなくとも、家をできるだけ高く売却したいとは誰しも思っているでしょう。
住宅ローンの残債のある家の買い換えを検討する際には、まずは「イエウリ」の利用を検討してみるとよいでしょう。