住宅ローンは借入額が大きく、また借入期間が長いこともあり、組み方や返し方の違いで返済額に大きな差が生じやすいです。
本記事では、住宅ローンの賢い組み方や返し方、またリスクを抑えて節税効果が出る方法についても解説していきます。
住宅ローンで失敗しやすい3つのポイント
住宅ローンを賢く借りるためには、まずは失敗しやすいポイントを押さえておきましょう。
住宅ローンで失敗しやすいポイントとして、以下のようなことが挙げられます。
- 家を探す前に住宅ローンについて学ばない
- 借入可能上限額の返済比率を借入額の目安にしてしまう
- 金利タイプ毎のメリット・デメリットをリサーチしない
家を探す前に住宅ローンについて学ばない
家の購入では、ほとんどの方が住宅ローンを利用するでしょう。
その場合、住宅ローンの審査に通らなければ住宅を購入することができません。
また、一度住宅ローンを組んでしまうと簡単に変更することはできない点にも注意が必要です。
上記のようなことから、家を探し始める前に住宅ローンについて学んでおくことが大切だといえます。
借入可能上限額の返済比率を借入額の目安にしてしまう
住宅ローンの審査では、借入可能額や返済比率について意識する必要がありますが、この額を借入額の目安にすると失敗してしまいやすいです。
借入可能額とは、借りる人の年収に対していくらまで借りられるかを示すもので、金融機関毎に設定された返済比率の基準により決まります。
上限額で返済し続けると家計が苦しくなる可能性がある
例えば、年収400万円の人に対して返済比率35%までしか融資できないという金融機 関の場合、年間の返済額が140万円に納めるように借入可能額が設定されます。
確かに、借入可能額や返済比率の条件を満たし、個人信用情報などその他の項目も問題なければお金を借りることができるでしょう。
しかし、それはあくまでも金融機関が融資してくれる額であり、「余裕を持って返済していける額」ではありません。
適正な住宅ローンの返済額については、借りる人の家族構成やライフスタイルによって異なります。
専門家への相談や、金融機関ごとの金利の比較を行う
余裕を持って返済していける額に設定したいのであれば、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談してライフプランニングを実施してもらうとよいでしょう。
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金利タイプのメリット・デメリットをリサーチしない
住宅ローンには変動金利と全期間固定金利、固定期間選択型金利の3つの金利タイプがありますが、それぞれのメリット・デメリットを事前にリサーチしておくことが大切です。
というのも、どの金利タイプが適しているかは利用する人によって異なるからです。
変動金利と固定金利の違い
例えば、変動金利は3つの金利タイプの中で現在は最も金利が低いですが、将来的に金利が上がってしまうリスクがあります。
一方、全期間固定金利は3つの金利タイプの中で最も金利が高いですが、借入期間中ずっと返済額が変わらないという安心感があります。
変動金利のメリットを受けやすい人
例えば、ある程度の余裕資金があり、万が一将来金利が上がったときにはまとまった額のお金を一括返済できるという方は変動金利を選んだ方がお得になりやすいでしょう。
こうしたメリット・デメリットをリサーチしたうえで、自分の状況や考え方にあった金利タイプを選ぶことが大切です。
「住宅ローンの賢い組み方」を実現する3つのポイント
次に、住宅ローンの賢い組み方を実現するためのポイントをご紹介したいと思います。
具体的には以下のようなものです。
- 「お財布の中味」から返済額を決定する
- ボーナス併用は利用しないほうが無難
- 「頭金2割」は時代遅れ?
それぞれ見ていきましょう。
「お財布の中味」から返済額を決定する
まずは住宅ローンの返済額を決めるときは「お財布の中味」から決めることを意識してみましょう。
具体的には、毎月の収入と支出を想定したうえで、返済額を決めるということです。
例えば、毎月の手取り収入が30万円の方がいて、この内10万円なら住宅ローン返済に充てられるといった考え方は危険です。
住宅ローン以外に毎月どのくらい食費や保険料にお金を支払っているかが見えないからです。
仮に、食費や 保険などその他の費用が毎月20万円かかっているのであれば、住宅ローンに10万円支払うと手元には全くお金が残らないことになります。
ちょっと収入が減ってしまえばすぐに破綻してしまうことにもつながりかねません。
一方、住宅ローン以外に毎月20万円費用がかかっていることをあらかじめ理解しておけば、住宅ローン返済額を5万円程度に抑えるといった判断が可能になるでしょう。
ボーナス併用は利用しないほうが無難
住宅ローンの返済方法は、毎月返済額以外にボーナス時に加算する形を選択することも可能ですが、賢く住宅ローンを返済していくのであれば、ボーナス併用タイプは選ばないことをおすすめします。
ボーナス併用タイプとは、例えば、毎月8万円返済して2月と8月に10万円加算して支払うといったものです。
上記の場合、毎月返済額だけだと10万円弱程度は支払わないといけないのに比べると、毎月の負担を少なくすることができます。
ボーナス払いのデメリット
しかし、2月と8月には18万円の支払いをしなければならない点に注意しなければなりません。
会社からボーナスが出ている内はよいのですが、業績悪化によりボーナスが出ないということも十分考えられるでしょう。
または、将来的に転職を検討する可能性もあり、転職先がボーナスを出さない、あるいはボーナスの額が少ないといったことも考えられます。
ボーナス払いを利用すると少し金利負担が大きくなる
ちなみに毎月返済額を固定する方式と、ボーナス併用型とでは、若干ではありますが後者の方が金利負担分が高くなってしまう ことも覚えておくとよいでしょう。
近年は新型コロナウイルスの影響や、急激な円安による業績の悪化で、業種・業界によってはボーナスが出ないといったケースがありました。
先を見据えて余裕を持った資金計画でローンを組むようにしましょう。
「頭金2割」は時代遅れ?
また、住宅ローンを組むときの頭金の考え方にも注意が必要です。
住宅を購入するにあたり「頭金は1~2割用意しておく必要がある」といったことを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、頭金があると住宅ローンの借入額を少なくできるため、家を購入した後の生活が楽になりやすいといえます。
低金利の時は借入額が大きくてもデメリットが小さい
しかし、近年では政府の金融緩和政策やマイナス金利導入などもあり、超低金利状態が続いています。
また、政府の経済喚起策として住宅ローン控除を利用できる点もポイントです。
住宅ローン控除とは、「借入から10年間(条件を満たす住宅であれば13年間)、住宅ローン年末残高の0.7%分、所得税と住民税から還付を受けられる」というものです1。
例えば、住宅ローン年末残高が3,000万円であればその0.7%、21万円分の還付を受けられます。
最近では住宅ローンの金利が1%を切ることも多く、状況によっては住宅ローンを借りた方がお得になることもあり得ます。
なお、「頭金は1~2割用意しておく必要がある」という考え方を話していたのは、もしかしたら周囲にいる年配の方かもしれません。
というのも、1980年代から1990年代、バブルの頃の住宅ローン金利は7~8%を超えていた時期もあり、住宅ローンの借入額をできるだけ安く抑えることが求められたという時代背景があるからです。
ただし、現在も1割程度の頭金を用意することで金利の優遇を受けられるケースがあるため、金融機関の情報を確認しておきましょう。
返済計画をシミュレーションして賢く住宅ローンを利用すべき
頭金が多くて困ることはありませんが、手元にお金がない状況で、「頭金が貯まるまで家は買わない」という選択は、場合によっては大きな損をしてしまう可能性があるといえます。
頭金の金額を踏まえた返済計画のシミュレーションや、金融機関ごとの金利比較をする際は「モゲチェック(PR)」がおすすめです。よりお得に借りられる方法や手続きの流れなども分かります。
無料で利用できますので、ぜひ活用してみましょう。
「住 宅ローンの賢い返し方」を実現する3つのポイント
住宅ローンの賢い組み方を理解したら、次は賢い返済方法を押さえておきましょう。
ここでは、以下3つのポイントを解説します。
- 繰上返済するなら期間短縮型の方がお得
- 住宅ローン控除を考慮して繰上げ返済しよう
- 個人ローンの中で住宅ローンが一番金利が低い
繰上返済するなら期間短縮型の方がお得
住宅ローンを組んだ後、まとまったお金ができた段階で繰上返済を検討する方もいらっしゃるでしょう。
この繰上返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがありますが、お得に返済していくのであれば期間短縮型がおすすめです。
期間短縮型とは、繰上返済した分、返済額はそのままに、借入期間を短くする方法です。
一方、返済額軽減型では、借入期間をそのままに、返済額を安くすることができます。
期間短縮型と返済額軽減型を比べてみると、前者の方が借入期間が短くなる分、トータルでの返済額は安くなります。
どうしても、毎月返済していくのがきついというケースでは、返済額軽減型を選んだ方がよいでしょうが、そうでなければ、期間短縮型を選んで少しでもお得に返済してくことを考えるとよいでしょう。
住宅ローン控除を考慮して繰上げ返済しよう
また、繰上げ返済のタイミングは住宅ローン控除を考慮することをおすすめします。
住宅ローン控除は「借入から10年間(条件を満たした住宅では13年間)、住宅ローン年末残高の0.7%分還付を受けられる」ものです。
住宅ローン控除の適用期間中に繰上返済をしてしまうと、住宅ローン年末残高が減ってしまい、住宅ローン控除で受けられる恩恵が減ってしまう点に注意しなければなりません。
おすすめなのは、住宅ローン控除の終わった11年目(あるいは14年目)のタイミングで繰上げ返済してしまうことです。
こうすることで、住宅ローン控除の効果を最大限活用しながら繰上げ返済していくことが可能となります。
ちなみに、住宅ロ ーン控除がなくなると減税を受けられなくなることもあり、これは実質的な負担増と考えることができるでしょう。
ちょうど住宅ローン控除が切れるタイミングで繰上げ返済を行い、返済額軽減型を選べば、増えた負担を和らげることが可能です。
個人ローンの中で住宅ローンが一番金利が低い
住宅ローンの繰上げ返済を考えるにあたっては、住宅ローンが、基本的に個人のローンの中で最も金利が低いという点を押さえておくことが大切です。
例えば、手元に300万円程度の余裕資金がある状態で、自動車の購入も考えているのであれば、300万円分を繰上げ返済に充てるのではなく、自動車購入に充てた方がお得です。
仮に、上記と同じ条件で300万円を住宅ローンの繰上げ返済に充てた場合、自動車を購入するには自動車ローンを組まなければなりません。
自動車ローンは一般的に住宅ローンより金利が高いため、後者の方が損をすることが多いでしょう。
とはいえ、住宅ローンと自動車ローンとでは、住宅ローンの方が借入期間が長いこともあり、長期的に見ると、住宅ローンの方が金利が低くともトータルの金利負担分は高くなってしまうことも多いです。
そうしたことも含めて総合的に判断することが大切だといえます。
「リスクを抑えて節税効果が出る方法」を実現する3つのポイント
賢く住宅ローンを組むなら、住宅ローン控除を最大限活用することが大切です。
ここでは、リスクを抑えて住宅ローン控除で最大限節税効果を出すための3つのポイントをお伝えしていきます。
具体的には、以下のようなものです。
- 手持ちの資金がある場合でも住宅ローンを借りることも検討しよう
- 住宅ローン控除を最大限活用する
- 頭金を貯めるより今すぐ購入した方がお得
手持ちの資金がある場合でも住宅ローンを借りることも検討しよう
本文中でお伝えしたとおり、近年では住宅ローン金利が非常に低い水準で推移しており、また住宅ローン控除があることから、条件次第では住宅ローンを借りれば借りるほどお得という状況になることもあります。
こうしたことから、仮に手持ち資金がある場合でも、それを頭金として使わず、住宅ローンを借りることを検討してみてもよいでしょう。
例えば、3,000万円の住宅を購入するにあたり、手持ち資金が1,000万円あるケースでは、1,000万円を自己資金として使うと2,000万円の住宅ローンを借りることになり、住宅ローン控除はその0.7%、毎年14万円程度の還付しか受けられないことになります。
一方、3,000万円満額借りた場合には、13年間(あるいは10年間)、21万円程度の還付を受けられることになり、大きな差が生まれます。
また、手持ち資金を住宅ローンに使わず、他のこと、例えば自動車の購入や教育費用等でローンを借りる必要がなくなることもポイントです。
住宅ローン控除を最大限活用する
住宅ローン控除は住宅ローン年末残高の0.7%分について、所得税や住民税から控除を受けられる制度です。
あくまでも控除を受けられるということであり 、所得税や住民税を納めていなければそもそも制度の恩恵を受けることができません。
また、住民税に関しては、所得税から差し引いても余りがある場合に適用を受けられるもので、毎年最大9万7500円までしか控除を受けられないという点も押さえておきましょう。
住宅ローンを組むときは、住宅ローン控除のこうした仕組みを理解したうえで、自分の年収でいくらまで控除を受けられるか把握しておくことをおすすめします。
なお、他の控除、例えばiDecoやふるさと納税など行っている場合には、それらを合わせた額がいくらになるのかについても事前に計算しておくと万全です。
頭金を貯めるより今すぐ購入した方がお得
今手元に頭金がないため、頭金を貯めてから購入したいと考えている方は、頭金を貯めるより今すぐ購入したほうが、金額的には明らかにお得です。
これも、超低金利であることと、住宅ローン控除があることが原因だといえます。
例えば、3年後に200万円頭金を貯めて家を購入しようと考えている方がいたとすると、毎月5万円程度を貯蓄していく必要がある計算です。
家を購入するまでの間にも家賃が発生している
また、家を購入するまでの期間では、賃貸物件に支払う賃料も必要でしょう。
例えば、家賃が8万円であれば3年間で288万円支払わなければなりません。
しかし、頭金がない状態で今、住宅ローンを満額借りて家を購入してしまえば、毎月5万円の貯蓄も不要ですし、その間の家賃を支払う必要はありません。
低金利と住宅ローン控除の恩恵は大きい
もちろん、住宅ロ ーンを支払う必要はありますが、金利が低く、住宅ローン控除があるため、ほとんど金利負担なしでお金を借りることが可能です。
また、3年早く住宅ローンの返済を始めることで完済の時期を早めることにもつながるでしょう。
もちろん、家の購入はご家庭ごとにベストなタイミングが異なりますが、頭金が原因で家の購入を先延ばしにしてしまっているのであれば、上記のような考え方があることも知っておくとよいでしょう。
まとめ
住宅ローンの賢い組み方や返済方法、住宅ローン控除を最大限活用する方法などお伝えしました。
住宅ローンを賢く活用するには、ライフプランニングや繰上げ返済、住宅ローン控除など、本記事でお伝えした内容をよく理解しておくことが大切です。
家の購入を始める前からこうしたことの勉強を進めておき、少しでもお得に住宅ローンを利用するようにしましょう。