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住宅ローンの「ペアローン」と「収入合算」の違いと選び方を解説します

特に共働きの夫婦の場合、「ペアローン」や「収入合算」を利用することで、一人では手の届かない予算の家を購入できる可能性が生まれます。

しかし「ペアローンや収入合算って言葉は聞くけど、具体的に何が違うの?」「結局、私たち夫婦にはどっちがいいんだろう?」と、疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。

そこで当記事では、ペアローンと収入合算の違いから、自分に合った方を選ぶ基準まで解説します。

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ペアローンと収入合算の定義

ペアローンと収入合算の違い

「ペアローン」と「収入合算」は、本来は仕組みや契約内容が異なる別の住宅ローン商品ですが、一般的には「夫婦で一緒にローンを組む」という広い意味で、どちらのケースも「ペアローン」と呼ばれることがあります。

ペアローン収入合算
ローン契約者それぞれ契約
(2本のローン)
主債務者のみ
連帯保証/債務お互いに連帯保証人になる
配偶者は「連帯保証人」
または「連帯債務者」になる
登記持分に応じて各自のローン契約
持分があってもローンは
主債務者のみ
団信加入各自加入(原則)
主債務者のみが加入
(合算者は対象外)
返済リスクどちらかが返済不能になると
もう一方も返済義務
主債務者が返済不能になると、
合算者に保証責任が生じる

本記事では、

  • ペアローン:お互いが相手の連帯保証人になって、それぞれがローン契約をする(ローン契約が2つ)
  • 収入合算:主債務者と連帯保証人、または連帯債務者に分かれて1本のローンを契約する

という定義でそれぞれの違いを明確にし、メリット・デメリットを解説していきます。

ペアローンは夫婦それぞれが「主債務者」としてローンを組む方法

ペアローンは、一つの住宅に対して2本の住宅ローンを組む方法です。夫婦それぞれが単独で住宅ローンを契約して、お互いが連帯保証人になります。

例えば、5,000万円の住宅を購入したとします。夫が3,000万円、妻が2,000万円というように、夫婦それぞれが別のローンを組みます。

夫と妻はそれぞれのローンの主債務者となり、妻は夫の、夫は妻のローンの連帯保証人になる、といった具合です。

夫婦それぞれがローンの主契約者となるため、各自の返済能力に合わせた借入額を設定できます。

ペアローンのメリット

ペアローンを選ぶことで、共働き夫婦は次のようなメリットが得られます。

住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられる

ペアローン最大の魅力は、夫婦それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられる点です。

住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて所得税や住民税が控除される制度(最長13年間)。夫婦それぞれで年間最大で数十万円、合計で数百万円単位の節税効果が期待できます。

団体信用生命保険(団信)にそれぞれ加入できる

ペアローンは、夫婦それぞれが独立してローンを組むため、各自が団体信用生命保険(団信)に加入できます。

団信は、ローンの契約者が死亡または高度障害になった場合などに、残りのローンを保険金で肩代わりしてもらえる保険です。

ペアローンであれば、もし夫婦どちらかに万が一のことが起こった場合も、残された配偶者は自分が契約したローンの部分のみを返済し続ければ問題ありません。

融資可能額を増やしやすい

理想の家が見つかっても、単独ローンでは手が届かない場合も少なくありません。

そんな時、ペアローンなら夫婦それぞれの返済能力に合わせてローンを組めるので、単独でローンを組むよりも高額な融資を受けられる可能性があります。

ペアローンの注意点・デメリット

ペアローンには多くのメリットがありますが、以下のように契約前に知っておきたい注意点やデメリットも存在します。

諸費用が2倍かかる傾向がある

ペアローンは、夫婦それぞれが別々のローン契約を結ぶため、契約に伴う費用もそれぞれに発生します。そのため、ローン契約に関わる諸費用が実質的に2倍になる傾向があります。

たとえば、住宅ローンを組む際には以下のような費用がかかります。

  • ローン事務手数料
  • 保証料または融資手数料
  • 団体信用生命保険保険料
  • 司法書士報酬(抵当権設定登記)
  • 印紙税 など

これらは基本的に1つのローン契約ごとに発生するため、ペアローンの場合は2人分=2契約分必要になります。

手続きがやや面倒になる

住宅ローンを組む際に、契約書や必要書類を準備しなければいけません。単独でローンを組む場合でも、仕事をしながら時間を作るのは大変な手間がかかるもの。

ただでさえ手続きが面倒なのに、ペアローンは夫婦2人分の書類をそれぞれ準備しなければならないため、手続きにかかる手間や時間も増えがちです。

お互いが重い責任を負うことになる

ペアローンは、夫婦がお互いのローンの連帯保証人にならなければいけません。

もし、どちらか一方の主債務者がローンを返済できなくなった場合、もう一方の配偶者は残ったローンの責任を全て負うことになります。

離婚時の対応が複雑になりやすい

長い人生、何が起こるか予測はできません。もしかしたら離婚という事態に発展する可能性もゼロではないのです。

離婚することになった場合、今住んでいる自宅や残っているローンをどうするのかなど、様々なトラブルを引き起こしかねません。

そういった事態が起きた際の対応が、単独ローンに比べて複雑になりやすいのもペアローンのデメリットといえます。

収入合算は1本のローンに2人の収入を合算する方法

ペアローンが夫婦でそれぞれローン組む方法なのに対して、収入合算は夫婦の収入を合算して住宅ローンを契約する方法です。

夫婦のどちらか一方が「主債務者」となり、もう一方は「連帯保証人」または「連帯債務者」という形でローンの返済を進めることになります。

収入合算は、返済の仕方によって主に以下の2つのタイプに分けられます。

  • 連帯保証型:主債務者がローンを組んで配偶者が連帯保証人になる形式
  • 連帯債務型:夫婦で1本のローンの債務者となり返済義務を負う形式
連帯保証人とは

主債務者が返済できなくなった場合に、代わりに返済義務を負う。連帯債務者の場合は、主債務者と同等の返済義務を持つ。

収入合算のメリット

収入合算を選ぶことで、次のようなメリットが得られます。

諸費用を抑えられる

収入合算は契約するローンが1本なので、ペアローンのように2本分の事務手数料や印紙税などがかかりません。

「住宅購入時にかかる初期費用を少しでも節約したい!」という人には大きなメリットになります。

手続きが比較的シンプル

契約手続きは基本的に1本分のローンとなるため、ペアローンに比べて書類準備や手続きの手間が少なく済みます。

共働きで忙しい夫婦にとって、手続きの負担が少ないのは魅力的なポイントではないでしょうか。

融資可能額を増やせる

夫婦の収入を合算することで融資可能額を増やせるのは、収入合算のメリットです。

せっかく理想とする物件を見つけることができたとしても、単独ローンでは手が届かないというケースは少なくありません。

その点、収入合算であれば融資可能額を増やせるため、金額を理由に理想のマイホームを諦めずに済みます。

収入合算の注意点・デメリット

収入合算にも、ペアローンとは異なる次のような注意点やデメリットがあります。

住宅ローン控除が1人分になるケースが多い

住宅ローンの主債務者が1人になる連帯保証型の収入合算の場合、住宅ローン控除も主債務者のみが対象となるのが一般的です。

夫婦の収入が高いのに節税のメリットが得られない可能性がある点に注意して下さい。夫婦で控除を受けたい場合は、連帯債務型を選んだうえで条件を満たす必要があります。

団信に加入できるのは主債務者のみ

連帯保証型の収入合算では、基本的に主債務者のみが団信に加入できます。もし、連帯保証人である配偶者に万が一のことがあっても、保険でローンを完済してもらえません。

残された主債務者は、重い負債を背負いながらギリギリの家計でやりくりせざるを得なくなります。万が一に備えて、団信に加入できない配偶者は他の保険に加入しておく必要があります。

配偶者に責任を負わせることになる

主債務者がローンを返済できなくなった場合、連帯保証人や連帯債務者が残ったローンを全額返済する義務が生じます。

離婚をする際は特に注意が必要です。たとえ離婚後であっても、連帯保証人や連帯債務者になったままだと返済を続けなければいけません。

自宅を持っていないのに主債務者が返済できなくなったからという理由で、ローンの残りを押し付けられる可能性があります。

▼関連記事:住宅ローンの連帯保証人になっている状態で離婚できる?事前に確認すべきポイントを解説します

「連帯保証人」と「連帯債務者」の違いは?

収入合算には「連帯保証人」と「連帯債務者」の2種類あります。どちらも言葉が似ているため混同されがちですが、法的な立場と責任に大きな違いがあります。

連帯保証人とは

連帯保証人は、簡単に説明すると野球の「代打」のような役割です。主債務者がきちんと返済を続けている間は、連帯保証人が代わりに返済をする義務はありません。

しかし、もし主債務者が何らかの理由でローンの返済ができなくなってしまったら、その時点で連帯保証人が残りのローン全額を返済する義務を負います。

そして、返済義務が生じるにもかかわらず、連帯保証人には住宅の所有権(持ち分)はありませんし、住宅ローン控除の対象にもなりません。

さらに、団体信用生命保険(団信)に加入することもできません。つまり、万が一のことが起きてしまっても、保険金でローンの残りを肩代わりしてもらうことはできない、という点も理解しておく必要があります。

連帯債務者

連帯債務者は、主債務者と一緒にローンを契約して、返済も一緒に続けます。

例えば、夫が主債務者としてローンを組んだら、妻も返済義務を負いながら一緒にローンを返していくことになります。

連帯債務者になる最大のメリットは、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる点です。

さらに、多くの連帯債務型ローンでは「連生団信」と呼ばれる特別な団体信用生命保険を利用できます。

連生団信は、夫婦どちらか一方に万が一のことがあった場合でも、残った住宅ローンを保険金で完済してもらえる保険です。

連帯保証人のように、片方に何かあってもローンが残る心配がありません。

住宅ローン控除を受けられる条件

住宅ローン控除とは、年末の時点で残っている住宅ローンに応じて、所得税や住民税から一定額が差し引かれる制度です。

年間の控除額が20万円なら、その年の所得税と住民税から合計20万円が還付されたり、減額されたりします。

ペアローンは2人ともローン減税を受けられる

住宅ローン控除額の計算方法

現行の税制では、住宅ローン残高の0.7%が控除対象(限度額あり)

ペアローンの場合、夫婦それぞれが住宅ローンの主債務者なので、要件を満たせば夫婦ともに住宅ローン控除を受けることができます。

一方、収入合算の場合は、連帯保証型と連帯債務型で適用される対象者が異なります。

連帯保証型は、住宅ローンの主債務者は1人です。連帯保証人は原則として住宅ローン控除は受けられません。

それに対して連帯債務型であれば、夫婦それぞれが1つのローンの主債務者として返済義務を負っています。

住宅の所有権(持ち分)も持っているため、夫婦それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられる可能性があります。

収入合算で夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けたい場合は、連帯債務型を選択しましょう。

ペアローンと収入合算で団信の加入条件が異なる

住宅ローンを組むのであれば「団体信用生命保険(団信)」への加入はほぼ必須になっています。

しかし、ペアローンと収入合算では、団体信用生命保険(団信)への加入条件が異なる点に注意しましょう。

そもそも団体信用生命保険(団信)とは?

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの借主が返済期間中に死亡したり高度な障害状態になるなどして働けなくなった場合に、ローンの残りを保険金で肩代わりしてもらえる生命保険です。

団信に加入しておくことで、万が一の事態が起きても残された家族が住宅ローンの返済に困ったり、済む家を失わずに済みます。

ペアローンは2人とも団信に加入するのが基本

ペアローンの場合、夫婦それぞれが独立した住宅ローンの主債務者であるため、原則として夫婦それぞれが団信に加入することになります。

「ただでさえお金がかかるのに、団信に2人も加入したらさらに費用がかかるんじゃない?」と思うかもしれません。

しかし、夫婦ともに団信に加入しておくことで、夫婦どちらかに万が一の事態が起こっても、それぞれの残りのローンはゼロになります。

残された配偶者は自分のローンだけを返済すればよくなるため、経済的な負担を抑えることができます。

収入合算は主債務者のみが団信に加入するのが一般的

収入合算の場合、基本的に主債務者のみが団信に加入するのが一般的です。

連帯保証型は、主債務者である夫(または妻)であれば団信に加入することができますが、連帯保証人である妻(または夫)は団信に加入できません。

一方の連帯債務型は、夫婦ともに主債務者と連帯債務者になるため、お互いに団信に加入することができます。

たとえ主債務者に万が一のことがあっても、残ったローンを保険金で完済してもらえるため、連帯債務者に負担を強いることがありません。

ペアローンと収入合算の選び方

住宅ローンの「ペアローン」と「収入合算」は、どちらが優れているというものではありません。

それぞれにメリットもあればデメリットもあります。それらの特徴を踏まえたうえで、夫婦の収入や状況に合わせて選びましょう。

共働きで収入が安定している夫婦ならペアローンが有利

共働きで、夫婦ともに正社員など安定した収入を得ているのであれば、ペアローンを利用するメリットが大きくなります。

ペアローンでは、それぞれが住宅ローンの主債務者となるため、次のようなメリットが得られます。

  • 借入額を増やしやすい
  • 住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられる
  • 団体信用生命保険(団信)にそれぞれ加入できる

理想のマイホームを購入するために借入額を増やしたい、減税で少しでも得がしたい、団信で将来の不安にも備えたいという夫婦にピッタリな選択肢になります。

▼関連記事:ペアローンは育休・産休中でも審査に通る?ローン契約後に休業で収入が減ったときの対策も解説

収入合算が向いている人

片方が正社員で片方がパートやアルバイトで働いているなど、夫婦間で収入に差がある場合は収入合算の方が向いています。

例えば、夫の年収が700万円、妻が年収100万円といったように、片方の収入で主債務者を補助できる場合などです。

このようなケースでは、次のような理由で収入合算が向いています。

  • 主債務者の収入が安定していて住宅ローンの審査に通りやすい属性
  • 契約手続きがシンプルで諸費用を抑えられる
  • 収入を合算して借入可能額を増やせる

ペアローンは手続きの負担や諸費用が2倍かかってしまいます。その点、収入合算であれば借入額を増やせるうえにコストが抑えられるのがメリット。

収入に差がある夫婦も理想のマイホームを諦める必要はありませんし、無理なく返済が続けられるでしょう。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、住宅ローンの「ペアローン」と「収入合算」の違いや選び方について解説しました。

夫婦それぞれが住宅ローン控除や団信のメリットを受けたい場合はペアローンがお勧めです。ただし、諸費用が2倍かかり、手続きがやや複雑になる傾向があります。

それに対して収入合算は、ローンが1本のため初期費用や手続きが比較的シンプルです。ですが、保証人型は住宅ローン控除や団信に加入できるのが主債務者のみに限定されてしまいます。

どちらの組み方が最適かは、夫婦の現在の収入や状況によって異なります。

今回ご消化敷いた記事を参考にして、夫婦でじっくりと話し合ったうえで決めてください。もし、ご自分たちだけで決めるのが難しいようであれば、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをお勧めします。

▼関連記事:「ペアローンはやめとけ」と言われる理由は?

執筆者
イエウリ編集部
イエウリ編集部

私たちは、日本最大級の不動産売却プラットフォーム「イエウリ」および、仲介手数料無料で不動産会社から物件を購入できる「イエカイ」を運営しています。売買主が抱える情報の非対称性をテクノロジーによって解決し、安心して住宅の売買ができる世界をつくります。 編集責任者:倉本匠

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