マンションを所有すると一定期間毎に大規模修繕工事の実施を検討することになりますが、この大規模修繕の有無やタイミングによってマンションの売却価格が変わることをご存知でしょうか。
本記事では、大規模修繕工事や修繕積立金についてお伝えすると共に、大規模修繕工事中や工事前後でマンションを売却する際の注意点等お伝えします。
マンションの大規模修繕工事と修繕積立金
札幌市中央区のマンションにおける大規模修繕工事の様子(築16年目時点)
大規模修繕工事や修繕積立金は、分譲マンションを購入する際にチェックすべきなのはもちろんですが、売却時に価格に影響を与えるのですが、そもそもどのような性質の工事・積立金なのでしょうか?
マンションの大規模修工事とは
マンションの大規模修繕工事とは、マンションの資産価値を保つために一定周期ごとに行う工事のことで、概ね12~15年に1回実施するのが一般的です。
具体的にはマンションの外壁補修工事や塗装工事、配管工事やエレベーター、機械式駐車場の補修工事等が該当します。
それぞれ耐久年数等は若干異なるものの、足場をかける必要のある工事は一度に実施した方が費用を安く済ませることができるため、足場をかけるタイミングで複数の工事を同時に行うことが多くなっています。
大規模修繕のための修繕積立金
戸建ての場合、外壁塗装工事は所有者が費用の全額を負担しますが、マンションの場合、1つの建物に複数の居住者がいるため、居住者からお金を集めて修繕工事の費用に充てます。
ただし、建物が大きく修繕費用が高くなることもあり、大規模修繕工事のタイミングで1人1人から工事費を募集していたのでは負担が大きくなってしまいます。
このため、毎月一定額を修理のための費用として徴収し、管理組合で管理するのが一般的です。
この毎月一定額徴収する費用のことを修繕積立金と呼びます。
不動 産を購入する際は、戸建てと分譲マンションとの比較で修繕積立金の有無が取り上げられることがあります。
戸建ては一定期間ごとにまとまった修理費用を支出する必要があるのに対し、分譲マンションはあらかじめ毎月積み立てているだけというだけで、物件の維持・管理にある程度お金がかかることは変わりありません。

大規模修繕を実施することで修繕積立金が増額される?
修繕積立金の額は具体的な取り決めがあるわけではなく、入居者同士からなる管理組合の決定に従い、毎月支払います。
マンションを新築した際には、最初にマンションの管理会社が長期修繕計画を策定し、修繕積立金の額もその計画で記載されていることが多いです。
ただし、長期修繕計画がある場合でも管理組合の決定で、計画とは違う積立額になることもあります。
この修繕積立金について「大規模修繕工事を実施することで、修繕積立金の額が増額される」ことがあることをご存知でしょうか。
以下、その理由について見ていきたいと思います。
長期修繕計画を立てていない
マンションの新築当初、管理会社によりマンションの長期修繕計画が立てられるのが一般的です。
管理組合により後から修正が加えられることもありますが、基本的にはこの長期修繕計画に沿って維持管理がなされていきます。
長期修繕計画により、例えば「10年後に1,000万円程度の修繕積立金が必要」なのであれば、それに沿って毎月の積立額を設定していくことになります。
しかし、長期修繕計画が立てられておらず、十分な額の積立額が設定されていないと、大規模修繕工事で実際にかかった費用を見て、次の大規模修繕工事までの間に積立額を増額しないと足りないという事態に陥ることがあります。
時代の経過と共に工事費が高くなっているケースもある
また、マンションが古くなると必要な工事費はどんどん高くなるのが一般的です。
このため、長期修繕計画では、新築当初の 修繕積立金を安く、築年数の経過に伴って、修繕積立金を高く設定するようにしていることが多いです。
しかし、中には築年数に応じて積立額が多くなるように設定していないケースもありますし、増額していたとしても十分でないケースがあります。
このような場合、大規模修繕工事の後、改めて必要な額を算出し、積立額が増額されることがあります。
修繕積立金を使い切ってしまった
修繕積立金は大規模修繕工事の他、短期での修繕工事の際にも利用されます。
大規模修繕工事を実施するにあたり修繕積立金を全て使い切ってしまった場合には、早く積立額を十分な額にしたいという考えから、修繕積立金が増額されることがあります。
なお、大規模修繕工事に必要な費用を修繕積立金だけで賄えない場合には、費用が臨時徴収されることもある点に注意が必要です。
マンションの大規模修繕と売却事情
分譲マンションの場合、住宅ローンとは別に修繕積立金を毎月支払う必要があり、修繕積立金の額が売却事情にも大きな影響を及ぼします。
修繕積立金の月額が高くなるとマンション価格が下がる
まず、修繕積立金の月額が高くなると、マンションの売却価格を下げざるを得ないことがあります。
例えば、3,000万円のマンションを、金利1%、35年の住宅ローンで借りようとすると、毎月返済額は8.4万円程度となりますが、分譲マンションの場合、これとは別に毎月修繕積立金が発生します。
仮に修繕積立金が1万円の物件と2万円の物件がある場合、同じ3,000万円のマンションであっても、前者は9.4万円程度の実質負担額、後者は10.4万円程度の実質負担額です。
このため、修繕積立金の額が大きくなってしまうと、それに合わせて、マンションの売却価格も安くせざるを得ないことがあるのです。
例えば、売却価格を2,700万円に下げた場合、同じ条件の住宅ローンだと約7.5万円程度の支払となり、2万円の場合の修繕積立金と合わせて9.5万円程度の負担で済みます。
このように、分譲マンションでは住宅ローンの返済額だけでなく、修繕積立金の額に応じて売却価格を調整する必要があるのです。
修繕積立金の積立額が減ると買主は不安を感じやすくなる
大規模修繕工事を実施した後などで、修繕積立金の積立額が少なくなっていると、買主は不安を感じやすくなります。
先述の通り、修繕積立金の積立額が少なくなってしまうと、毎月の修繕積立金の増額の可能性や、修繕積立金が工事費用に足りな い場合の臨時徴収の可能性があるからです。
マンションの売却では、毎月の修繕積立金の額に加えて、現在どの程度の額が積み立てされているかについても注意する必要があります。
大規模修繕前にマンションを売却しよう
ここまでお伝えしてきたように、大規模修繕工事を実施すると、修繕積立金の増額の可能性がある点や、積立額が減ってしまいます。
このため、マンションを売却するのであれば、大規模修繕工事実施前に売却を決めてしまうことが大切だといえます。
大規模修繕の時期や修繕積立金の額を確認する方法
ところで、大規模修繕の時期や修繕積立金の額はどのようにして確認することができるのでしょうか。
長期修繕計画を確認しよう
まずは長期修繕計画を確認しましょう。
マンション購入時に、管理組合からもらった書類一式の中に記載があるはずです。
長期修繕計画では、修繕積立金の額をいくらに設定し、どのタイミングで増額する予定かといったことが書かれています。
ただし、管理組合による取り決めで、積立額が変わることもあれば、そもそも長期修繕計画を立てていないマンションもあります。
売却に際しては「重要事項調査報告書」という書類で、実際の修繕積立金の額や滞納の有無、修繕履歴などを確認することになります。
もし積立不足が明らかで、近い将来に大幅な増額が予想される場合、買い手はその負担を考慮して購入価格を下げてくる可能性があります。
逆に、修繕計画がしっかり立てられていて、これまでの履歴もきちんと管理されているマンションは、安心材料としてプラス評価されやすいです。
そのため、売却を検討する際には、長期修繕計画と重要事項調査報告書を突き合わせて現状を整理し、購入希望者に説明できる準備をしておくことが大切です。
▼関連記事:マンションの重要事項調査報告書(重調)とは?売買時のチェックポイントを解説
前回の大規模修繕の時期を確認しよう
大規模修繕が次にいつ頃行われるかについては、前回の大規模修繕がいつ頃行われたかである程度 予測することができます。
前回の大規模修繕工事が、前々回の大規模修繕工事からどのくらい空いているかを確認し、前回の大規模修繕工事から、次回の大規模修繕工事までの期間も同程度空くものと想定しましょう。
ただし、実査には管理組合が大規模修繕工事の時期を決定するため、必ずしも同じ期間が空くとは限らず、物件の状態によって前後することもあります。
修繕積立金のガイドラインを確認しよう
修繕積立金の額については、国土交通省が平成23年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を出しており、床面積あたりの修繕積立金の目安額が提示されています1。
これによると、修繕積立金の目安は以下のようになっています。
階数 | 延床面積 | 平均値 |
15階未満 | 5,000㎡未満 | 218円/㎡・月 |
5,000~10,000㎡ | 202円/㎡・月 | |
10,000㎡以上 | 178円/㎡・月 | |
20階以上 | 206円/㎡・月 |
例えば、15階未満で5,000㎡のマンションにおいて、70㎡の部屋を所有している場合、70㎡×218円/㎡・月=15,260円程度が相場だと考えることができます。
現在の修繕積立金が相場より安い設定の場合は、将来的に増額されることでバランスが取れるのかなど確認するとよいでしょう。
不動産買取であれば大規模修繕工事のタイミングも気にする必要はない
一般的な仲介による売却の場合、修繕積立金の額によりマンションの売却価格を調整する必要があるのですが、これはある意味で買主の無知による部分が多いといえます。
というのも、買主の中には、修繕積立金がどういった性質を持つ費用なのかよく理解していない方もいるからです。
先述の通り、戸建ての住宅では修繕積立金はありませんが、経年劣化した箇所を補修するための費用は、貯金から捻出するなどして対応しなければなりません。
毎月1万円の積み立てをしていれば、1年で12万円、10年で120万円程度の積立額となりますが、戸建てで外壁塗装工事や屋根工事など実施すれば、それ位の費用はかかってしまいます。
しかし、個人の買主の中にはこうしたことをよく理解しておらず、毎月の負担額が増えてしまう修繕積立金に不満を持ってしまうことも多いです。
一方、不動産買取を利用してマンションを売却する場合は、不動産会社が買主となるため、上記のようなことは理解しています。
大規模修繕工事の実施前であっても、大規模修繕工事後に修繕積立金が増額されるようなケースがあることも理解しており、大規模修繕工事の前と後で売却価格に大きな差が出るようなことはあまりないのです。
「イエウリ」は高額買取を実現しやすい
不動産会社による直接買取を行っている会社は他にもたくさんありますが、直接買取のデメリットとして、不動産会社の利益等を見込む必要があるため、売却価格が安くなってしまう傾向にあることが挙げられます。
一方、「イエウリ」の買取マッチングでは入札形式により買い手を探すため、高値での売却を実現しやすくなっています。また、売主が気に入った業者のみと連絡をとるシステムなので業者からの一方的な営業電話もなくストレスフリーに売却活動を始めることができます。
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まとめ
大規模修繕工事や修繕積立金がマンションの売却に与える影響についてお伝えしました。
大規模修繕工事の時期や修繕積立金の額などにより、マンションの売却価格を調整しなければならないことがあります。
このため、マンションの売却を考えているのであれば、大規模修繕工事実施前に実施することをおすすめします。
また、「イエウリ」であれば、大規模修繕工事の前後で売却に大きな差がでることは少ないため、時期を気にせず売却したいという方は「イエウリ」を利用してみてはいかがでしょうか。
