擁壁がある家・土地は傾斜地にあることが多く、見晴らしが良いといった利点があります。一方で、大地震や豪雨時の災害を懸念する人もいます。このため、「擁壁がある家・土地は売れない(売れにくい)」と言われることもあります。
この記事では、擁壁がある家・土地を売却するには、どのような点に注意をすればいいのかを解説します。
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安全な擁壁は売却への影響はない
国が定めた基準どおりに設計・施工した擁壁は、大地震や豪雨で崩壊することは、まず想定できません。
このため、安全性が確認された擁壁がある家・土地は、擁壁自体がマイナス要因になることはなく、多くは相場の価格で売却できます。
それでは、安全が確認された擁壁とは、どういったものなのかを押さえておきましょう。
擁壁の手続きは3種類ある
一定の高さを超える擁壁を築造しようとすれば、次のいずれかの手続きが必要になります。
- 開発許可……都市計画法
- 宅造許可……宅地造成等規制法
- 建築確認申請(工作物)……建築基準法
ただし、複数の申請は必要なく、上位の申請をすれば、他の申請は不要です。
それぞれの申請の相関図は次のようになります。
なお、「1,000平方メートル以上」の基準値は、首都圏、中京圏、近畿圏等の都市部においては「500平方メートル」となります。
工事種類 | 宅造規制区域内 | その他の区域 |
---|---|---|
1000㎡以上の宅地造成 | 開発許可申請 | 開発許可申請 |
1000㎡未満の宅地造成 | 宅造許可申請 | 建築確認申請 |
擁壁の築造のみ | 宅造許可申請 | 建築確認申請 |
1,000 平方メートル以上の宅地造成をする場合は、開発許可の対象になるため、開発許可申請の中で、擁壁の形状や構造計算等を盛り込みます。
それ以下の規模の造成であれば、築造場所が宅地造成等規制区域の内外によって申請先が異なってきます。
申請が必要な擁壁の高さとは
どの法律が適用される場合でも、高さが2メートルを超える擁壁を築造する場合は申請が必要です。
また開発許可申請と宅造許可申請においては、盛土をした宅地に擁壁を築造する場合は、高さが1メートルを超えると申請が必要になります。
ただし開発許可においては、高さにかかわらずすべての擁壁が申請の中に盛り込まれます。
また、宅造申請も宅地造成に伴う申請であれば、同様にすべての擁壁が申請の中に盛り込まれます。
宅地造成工事規制区域とは
宅地造成工事規制区域とは、宅地造成等規制法に基づき自治体が指定する区域です。
この区域内で、一定規模以上の宅地造成工事等を行う場合は許可手続きを必要とします。
宅地造成等規制法は、宅地造成に伴うがけ崩れや土砂の流出を防止することを目的としていることから、宅地造成工事規制区域に指定されるのは、山すそなどの斜面地が中心となっています。
検査済証が交付されていることを確認する
いずれの申請も工事が完了すれば、完了検査を受検して検査済証が交付される流れになっています。
根拠法令がそれぞれ異なるため、取り扱う役所や部署が異なりますが、検査済証が交付された有無は、それぞれの窓口で確認することが可能です。
安全性が確認できない擁壁は売却価格に影響する
擁壁の安全性が確認できない場合は、災害時の不安が払拭できないので、売却価格に影響しますし、売れないことも考えられます。
ここでは、どのような擁壁が安全性が確認できないのかについて解説します。
安全性が確認できない擁壁とは
擁壁のある土地に家を建てると、家の荷重を擁壁が負担することになります。
擁壁が決壊すると、家が倒壊することになるので、どれだけの荷重負担に耐えられるように設計・施工されているのかが、擁壁の安全性を確認するうえで非常に重要です。
しかし、2000年(平成12年)以前に家が建てられた土地には、安全性が確認できない擁壁が数多く存在しています。
当時は建築確認申請において、擁壁の安全性に対する裏付けが求められなかったからです。
図面に「擁壁の安全性は設計者が確認した」と記すことで、審査が通過していました。
このため、現在でも多くの家が、安全性が確認できない擁壁に支えられた土地に建っています。
▼関連記事:擁壁の安全性を調査すべきケース
安全性が確認できないと家が建て替えられないことがある
安全性が確認できない擁壁に支えられた土地は、そのままでは家の建て替えができません。
擁壁を作り替えないと建てられない可能性もありますから、買主は相場価格から新しい擁壁の築造費用を差し引いた金額での購入を希望することが想定できます。
地質によって建て替えの可能性は異なる
安全性が確認できない擁壁であっても、擁壁に家の荷重を負担させないことで建て替えは可能になります。
次の図は、地盤の安息角度内に建築をして、擁壁に負担をかけない方法を示しています。
基礎を安息角度内に納める
安息角度とは、地盤が擁壁に頼ることなく自立し、崩れない角度のことです。
地質によって、安息角度は次のようになります。
- 軟岩(風化の激しいものを除く)……60度
- 風化の激しい岩……45度
- 砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土……35度
- その他……30度
安息角度内に基礎を設けることにより、擁壁が決壊しても、理論上は建物への影響はありません。
安全性が確認できない擁壁は管理上のリスクがある
安全性が確認できない擁壁は、建物の維持に懸念があるだけでなく、第三者を事故に巻き込むリスクがあります。
2020年2月5日に神奈川県逗子市にあるマンション敷地の斜面崩壊によって、一人の女性が土砂に巻き込まれるという事故が発生しました。
こうした事故による補償は、基本的に所有者が責任を負うことになります。
安全性が確認できない擁壁の所有者になれば、重大な責任とリスクを負うことになるため、購入を敬遠されることがあります。
検査済証だけでは安心ができないケースがある
検査済証があるからといって、ただちに安全性が保証されるわけではありません。
検査済証は、検査をした時点の適合性を証明したものであり、必ずしも売却時の適合性を保証するものではないからです。
- 検査後に法律が改正されたことにより既存不適格になった
- 各法律で定められた耐震性の基準が大幅に改正され、家を建て直す際に補強が必要
- 経年による劣化が見られる
- コンクリートの亀裂や 石材の風化により、本来必要とされる強度が維持できていない
- 水抜き穴が正常に作用しておらず、設計で想定された以上の荷重を負担したことによる、はらみが発生している
こうした状態の擁壁は補修をする必要があり、買主から工事費相当分の値引きを要求されることが想定されます。
擁壁の下の敷地でも売却に影響があるので注意
ここまで自己所有地に擁壁がある事例を説明しましたが、他人地の擁壁であっても売却に大きく影響をしてくることがあるので説明をしましょう。
たとえば、次のように他人地の擁壁の下に敷地を所有していたとします。
擁壁の高さの2倍以内は建築できない
崖地における建築基準は、地方ごとの建築条例で定められるので、厳密にいえば、対象敷地の存する自治体の条例を確認する必要があります。
たとえば「京都市建築基準条例」では、次のように定めています。
第7条(抜粋) 高さが2メートルを超える崖の下端から崖の方向に水平距離が当該崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築してはならない。
この規定は崖の安全性が確認できれば適用が除外されますが、安全性が確認できない場合は、擁壁(崖)の高さの2倍の距離までの範囲は、建物を建てることができません。
あるいは、「東京都建築安全条例」では次のように定められています。
第6条第2項 高さ2メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の2倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ2メートルを超える擁壁を設けなければならない。
この場合は、自己敷地内に高さが2メートルを超える擁壁を築造することで、建築が認められます。
先に紹介した京都市の条例でも、自己敷地に崩壊土砂を防ぐ擁壁を設置することで建築は認められます。
しかし、いずれの場合も土地を有効に活用するためには、擁壁設置に多額の費用を費やすことになるため、売りに出してもなかなか買主が現れないことがあります。
擁壁がある家・土地をスムーズに売却する方法とは
それでは、擁壁がある家・土地をトラブルなくスムーズに売却するには、どのような点に注意をすればいいのか解説をしていきましょう。
擁壁の状況を正確に告知する
売却に際しては、擁壁の状況を正確に告知することが重要です。
検査済証の有無、劣化の有無について告知をしておかないと、売却後に買主から契約不適合として、損害賠償請求や契約の解除を求められることがあります。
オプションでインスペクションを実施する
擁壁の劣化は、専門家でない人が目視しても、劣化の状況は把握できません。
擁壁自体は、インスペクションのメニューにはありませんが、オプション契約をすることで擁壁のインスペクションを実施してもらえます。
情報公開請求によって擁壁の構造に関する資料を入手する
開発許可や宅造許可によって築造された擁壁は、造成をした会社が申請をしているので、図面や構造計算書を入手することはできません。
こうした資料を入手するには、管轄する自治体に対して情報公開請求をするという方法があります。
情報公開というと、特殊な手続きのように思えますが、擁壁の所在地と請求する資料が明確なので、窓口でそうしたデータを提示すれば情報の開示に向けて手続きを進めてもらえます。
買取専門の不動産会社に買い取ってもらう
擁壁の安全性が確認できない等の理由で、仲介による売却が困難だと推測できる場合は、買取専門の不動産会社に買い取ってもらうという方法があります。
買取専門の不動産会社は、擁壁がある家などの訳あり物件を買い取って、新たな付加価値を生み出すノウハウを持ち合わせています。
売却を諦めかけていた家や土地も、意外な高値で買い取ってもらえることもありますから、一度買取を検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
擁壁のある家・土地の売却に際しては、擁壁の安全性を証明できるか否かが大きな要因を占めることになります。
特に20年以上前に建てられた建物の中には、擁壁の安全性についての裏付けがないままに売却されている物件があります。
安全性が確認できない擁壁は、買主にとっては大きなリスクを背負うことになるので、購入を躊躇う人が大勢います。
可能な限り安全を裏付ける資料を採取するとともに、必要に応じて適切な補強工事を実施しましょう。
ただし、擁壁の改修工事は想定以上に費用がかかることがあります。
擁壁の安全性が証明できない場合はぜひ「イエウリ」を検討してみてください。