戸建ては購入して終わりではなく、住み始めてから定期的なメンテナンスが必要です。
戸建てのメンテナンスはマンションと異なり自分で行わないといけないので、手間や費用から「もう少し後でもいいか」と先延ばしする方もいるでしょう。
しかし、家の修繕を適切に行わないと、雨漏りやカビなどで老朽化が早まる恐れがあります。
とはいえ、どこをメンテナンスすればいいのか、費用はどれくらいかかるか分からない方も多いものです。
そこで、この記事では戸建てを定期的に修繕しない場合のリスクとメンテナンスのポイント、タイミングを詳しく解説します。
戸建てを定期的に修繕しないと起こりうるリスク
戸建てを定期的に修繕しないと起こりうるリスクには、以下の5つが挙げられます。
- 雨漏りが発生する
- 外壁にカビが生えたり色褪せしたりして外観が悪くなる
- 構造躯体の劣化が進む
- 排水管が詰まり汚水が逆流する
- シロアリ被害が発生する
それぞれ見ていきましょう。
雨漏れが発生する
常に紫外線や風雨にさらされる屋根は劣化しやすいため、定期的な塗装や交換が必要です。
塗装を怠ると耐久性が低下し、ひび割れや剥がれが発生しやすくなり、そこから雨漏りにつながる恐れがあります。
雨漏りはさらにカビや腐食を引き起こし、構造自体に大きなダメージを与える可能性があります。
天井のシミや、水滴が部屋に落ちることでようやく雨漏りに気付くケースが多いですが、その時点ではすでに内部でかなりの被害が広がっている恐れがあるでしょう。
外壁にカビが生えたり色褪せしたりして外観が悪くなる
外壁も屋根同様、紫外線や風雨にさらされ続けるので、定期的なメンテナンスが欠かせません。
メンテメンスを怠ることで、ひび割れやカビ、色褪せが発生しやすくなります。
外壁のカビや色褪せ、コケは構造にダメージを与えるだけでなく、外観を損なう点にも注意が必要です。
外観が損なわれると、家への印象も悪くなり、資産価値が低下する可能性もあります。
売却を検討する際に、見た目が悪いために買い手がつかず、相場よりも価格が下がることも考えられます。
また、外壁のカビやコケは害虫の住処となりやすい点にも気を付け ましょう。
構造躯体の劣化が進む
雨漏りやカビなどを放置し、構造躯体の劣化が進むと、家全体が弱くなります。
構造の劣化を放置していると、最終的には地震や自然災害時に倒壊のリスクが高まる恐れもあるでしょう。
また、構造自体に影響が出てくる段階でようやく修繕を検討しても、費用は高額になりがちです。
定期的にメンテナンスを行っていれば、数十万円で済んだ修繕が、構造の修繕で数百万円かかることになりかねません。
さらに、突発的な修繕となると資金計画が立てられず、対応できない可能性もあるので注意しましょう。
排水管が詰まり汚水が逆流する
排水管は汚れなどが付着しやすく、メンテナンスを放置していると詰まってしまう恐れがあります。
排水管が詰まると、汚水や悪臭の逆流、漏水にも発展しやすくなるので、定期的に洗浄を行うことが大切です。
シロアリ被害が発生する
シロアリ被害が発生すると、木材が食い荒らされ、構造自体に大きな影響が出ます。
これにより耐久性が低下し、倒壊のリスクが高まる恐れもあるでしょう。
また、シロアリ被害は家の資産価値を大きく減少させるため、売却時にも不利になりがちです。
戸建てでメンテナンスを実施すべきポイントと費用相場
ここでは、戸建てでメンテナンスを実施すべきポイントと、その費用相場をみていきましょう。
外壁・屋根
劣化しやすい外壁や屋根を放置していると、ひび割れやカビが発生し、雨漏りの原因にもつながります。
そのため、一般的には10年を目安に塗り替えや交換などのメンテナンスが必要です。
家の大きさや外壁・屋根の種類によってメンテナンス時期や費用は異なりますが、100~200万円ほどが相場となります。
水回り
日常的に利用する水回りも、劣化が進みやすいものです。
また、一般的にトイレやキッチン、洗面台などの設備の保証期間は5~10年ほどなので、保証が切れるタイミングで交換などのメンテナンスが必要です。
ただし、屋根や外壁ほど劣化の進みは早くなく、日常的な手入れもしやすいので、状態によっては保証期間を超えても問題なく使用できることもあります。
使用に問題がなければ、壊れた段階や不便を感じた時に交換すればよいでしょう。
交換する場合、種類によって異なりますが、トイレ・洗面台は約10万円ほど、キッチンは100万円前後が相場です。
クロスやフローリング
フローリングは、経年によって軋みが発生しやすくなります。
また、日焼けや剥がれも発生するので、軋みや剥がれを発見したら張り替えが必要です。
クロスの張り替えであれば、リビングだけで15~20万円、家全体で50~80万円が相場となり、フローリングであればリビングで約20万円ほどが目安となります。
薬剤による防蟻処理
防蟻処理とは、シロアリ被害を防ぐために住宅の土台や構造に薬剤を散布する処理のことです。
木造住宅には防蟻処理が義務付けられているので、新築時に処理を施していますが、時間の経過とともに効果が薄れるため、定期的な再処理が必要になります。
再処理は5年を目処に行うとよいでしょう。
費用としては、10~30万円ほどが目安となります。
ただし、防蟻処理はシロアリ被害が発生する前に行う処理のため、すでにシロアリ被害が出ている場合は、まず駆除や被害箇所の交換が必要です。
定期的に戸建てのメンテナンスを実施するメリット
定期的に戸建てのメンテナンスを実施するメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 建物の寿命を長く保つことができる
- 最終的に必要なコストを安く抑えやすくなる
- メンテナンス不足による健康被害を防ぎやすくなる
それぞれ見ていきましょう。
建物の寿命を長く保つことができる
どんなに小さな問題であっても、放置していると家に大きなダメージを与えかねません。
たとえば、屋根や外壁の劣化は最終的に家の構造にも影響を及ぼす恐れがあります。
定期的にメンテナンスすることで、大きなトラブルを未然に防ぐだけでなく、本来の性能を長く維持でき、建物の寿命を長く保ちやすくなります。
最終的に必要なコストを安く抑えやすくなる
定期的なメンテナンスコストを避けようと放置していると、大きなトラブルが発生した際に、より高額な修繕費用がかかりやすくなります。
たとえば、屋根の 亀裂を早く発見し修繕しておけば、雨漏りになってから発見し、大掛かりな修繕が必要になることを防げます。
また、こまめにメンテナンスすることで設備が長持ちし、交換頻度を抑えることにもつながるでしょう。
定期的なメンテナンスはもちろん費用がかかりますが、計画的に蓄え対応しやすいコストです。
一方、不具合が発生してから修繕しようとすると、費用がより高額になるだけでなく、貯まっていないともなりかねません。
戸建てを取得する際には、定期メンテナンスの時期や費用についてあらかじめ計画を立てておくことが重要です。
メンテナンス不足による健康被害を防ぎやすくなる
メンテナンス不足は、家の快適性を下げるだけでなく、健康にも影響を与える恐れがあります。
たとえば、雨漏りを放置してカビが発生すると、その胞子を吸い込むことによって健康被害が出る場合があります。
また、断熱性能が低下すると室温が一定に保ちにくくなり、冬場のヒートショックのリスクが高まる恐れもあるでしょう。
定期的にメンテナンスを行うことで、家だけでなく住んでいる人の健康にも良好に働きやすくなるのです。
戸建てのメンテナンスを実施すべきタイミング
戸建てのメンテナンスとしては、日常的な清掃・換気・点検・こまめな修繕が必要です。
そのうえで、築年数に応じてある程度の規模のメンテナンスも必要になってきます。
ここでは、築年数別に実施すべきメンテナンスについて解説します。
築5年までに実施すべきメンテナンス
新築時に行 った防蟻処理(シロアリ被害を防止するもの)は、5年~10年で効果が薄くなるといわれているので、築5年を目処に再処理が必要です。
日常的な清掃や管理ができていれば、築5年ではそれほど劣化は進んでいません。
そのため、防蟻処理以外のメンテナンスはほとんど必要ないでしょう。
築10年までに実施すべきメンテナンス
築10年で検討したいメンテナンスは以下のとおりです。
- 外壁や屋根の塗り直し
- 外壁のシーリング打ち替え
- クロス張替え
築10年が経過すると、剥がれや汚れなど気になる部分が出てきます。
また、外壁や屋根は種類によって塗装の時期を迎えるので、大規模なメンテナンスが必要になる場合があります。
外壁のシーリングとは、外壁材と継ぎ目を埋めるための充填剤処理で、コーキングとも呼ばれます。
外壁のシーリングも5年~10年で寿命を迎え、劣化を放置していると隙間から雨水が侵入しやすくなります。
そのため、剥離や断裂がないか状態をチェックし、必要に応じてシーリングの打ち替えを行いましょう。
築15年までに実施すべきメンテナンス
築15年までに実施すべきメンテナンスは以下のとおりです。
- 水回りのメンテナンス
- 設備の交換
- 畳の交換
設備の保証期間は一般的に10~15年ほどです。
給湯器や排水管、空調設備、水回り設備などが築15年を過ぎると劣化による故障が多くなるため、交換を検討するとよいでしょう。
水回り設備をまとめて交換する場合、費用が高額になりがちなので、計画的に費用を貯めておくことが大切です。
また、和室がある家では畳のメンテナンスも必要になります。
畳は5年程度で裏返し、さらに4年~8年で交換が必要になるので、計画的に検討するとよいでしょう。
築20年までに実施すべきメンテナンス
築20年までに実施すべきメンテナンスは以下のとおりです。
- フローリングの張り替え
- 外壁・屋根の交換
- 雨どいの交換
- 給排水設備の交換
フローリングは15~20年で傷や剥がれが目立ち始め、軋みが生じるケースもあるので、この時期に張り替えを検討するとよいでしょう。
また、外壁と屋根は20~30年で交換が必要になってきます。
ただし、種類やそれまでのメンテナンス状況によって交換時期は異なるので、状態をチェックして検討することをおすすめします。
給排水設備は一般的に10年ごとに点検し、30年を目安に交換が必要とされているので、築20年を超えた場合は状況に応じてメンテナンスを行う必要があります。
築20年を経過すると家の劣化がかなり進み、以降も大規模な修繕が必要になるケースが多いため、早めにメンテナンスを行うことが大切です。
また、新築で購入し築20年以上経過すると、家族構成の変化やバリアフリーの検討で大規模なリフォームを実施するケースも多いので、資金計画をしっかり立てておきましょう。
戸建ての修繕に関するよくある質問
最後に、戸建の修繕に関するよくある質問を見ていきましょう。
一般的な戸建てのメンテナンススケジュールは?
大まかなメンテナンススケジュールは以下 のとおりです。
時期 | 実施個所 |
築5年 | シロアリの防蟻処理(以降5年毎) |
築10年 | 外壁や屋根の塗り直し 外壁のシーリング打ち替え クロス張替え |
築15年 | 水回りのメンテナンス 設備の交換 畳の交換 |
築20年 | フローリングの張り替え 外壁・屋根の交換 雨どいの交換 給排水設備の交換 |
ただし、必要なメンテナンス時期は種類やそれまでのメンテナンス状況などによっても左右されます。
日常的に手入れや点検を行い、修繕時期を見逃さないようにしましょう。
築20年の家にかかるメンテナンス費用
築20年の家でフリーリングの張り替え・外壁と屋根の交換を行った場合の費用は以下のとおりです。
- フローリング張り替え:10~50万円
- 屋根の交換:50~80万円
- 外壁の張り替え:200万円~
メンテナンスの内容によっても異なりますが、200~500万円ほどが必要になってくるでしょう。
自己資金での対応が難しい場合は、リフォームローンの利用や、売却して住み替えを検討するのも1つの手です。
まとめ
戸建ては購入してからも定期的にメンテナンスすることで長持ちさせられます。
また、適切にメンテナンスすれば突発的な修繕費の発生も防ぎやすくなり、トータルでの修繕費用の軽減にも つながります。
築年数ごとにメンテナンスが必要な時期や、かかる費用は大きく変わってくるので、事前に長期のメンテナンス計画を立てておくようにしましょう。