不動産売却査定とは?まずは仕組みを理解しておこう
不動産売却査定とは、不動産会社に不動産の価値を査定してもらうことですが、より具体的に言うと「おおむね3カ月以内に、現在の市場で売却するのに適した額」を査定してもらうとという内容です。
不動産の価値は経済状況や近隣の開発状況などを要因として日々変動します。
また、不動産の取引には進学や転勤等のある9~10月や2~3月に増える傾向にあるなど、タイミングによって取引量が変わるでしょう。
取引量が増えればそれだけ高値で売却できる可能性が高くなります。
こうした景気変動やタイミングを織り込んで価格を査定するのが不動産売却査定なのです。
一括査定サービスとは?メリットとデメリットを知ろう
不動産売却査定は、不動産会社に査定を依頼して実施してもらうものです。
通常、1社1社メールや電話をして査定依頼しますが、一括査定サービスを利用すると、売却する物件の情報を入力するだけで、物件の所在地に近い不動産会社複数社に対して一括で査定依頼ができます。
ここでは、一括査定サービスを利用するメリットとデメリットをご紹介していきたいと思います。
一括査定サービスのメリット1:手間がかからない
通常は1社1社不動産会社を探して問い合わせする必要があるのに対し、一括査定サービスを利用すれば物件情報を入力するだけで複数社の紹介を受けられます。
このため手間をかけずに査定を進めることができます。
一括査定サービスのメリット2:売却物件と相性のいい不動産会社の紹介を受けられる
一括査定サービスを利用して査定依頼を出すと、提携業者の中から「マンション売却に強い不動産会社」や「高価格帯の物件売却に強い不動産会社」など、売却物件の特性に合った不動産会社の紹介を受られます。
一から不動産会社に査定依頼を出す場合、こうした相性まで考慮して不動産会社を探すのは簡単なことではありません。
一括査定サービスのメリット3:売却物件の相場を知ることができる
一括査定サービスを利用すると、複数の不動産会社の売却査定を受けることができます。
不動産の査定額は不動産会社によって異なるのが一般的ですが、こうして複数の不動産会社から査定結果を聞くこ とで、売却物件を相場を知ることができます。
一括査定サービスのデメリット1:複数社にしつこく営業される可能性がある
一括査定サービスでは査定依頼自体は手間なく出すことができますが、査定依頼を出した後、それぞれの不動産会社とやり取りするのは個別にする必要があります。
中には、一度断ったのにしつこく営業してくるような不動産会社もあるでしょう。
一括査定サービスの中には、こうしたしつこく営業してくる不動産会社に対して、要求すれば一括査定サイトの方から不動産会社に対して営業をやめるようお願いできるような仕組みを導入しているところもあります。
一括査定サービスのデメリット2:不動産会社が積極的でないことがある
一括査定サービスを利用して査定依頼を出す場合、不動産会社からすると常に複数の競合がいる状態になります。
不動産会社が利益を得るには売却査定後、媒介契約を締結し、買主を見つけて売買契約を締結する必要があり、逆に言えば広告費や人件費を負担しても売買契約を締結できなければ、1円の利益も得られません。
このため、不動産会社の中には一括査定サービスからの問い合わせに対してあまり積極的でないことがあります。
一括査定サービスのデメリット3:個人情報を伝える必要がある
一括査定サービスでは、物件情報の他、売主の氏名や住所、電話番号など個人情報を入力する必要があります。
こうした情報は、売却査定のためとはいえ、複数の不動産会社に渡ってしまうことになります。
もちろん、悪用されるようなケースは稀でしょうが気になる方もいらっしゃるでしょう。
一括査定サービスの中には匿名で査定依頼できるものもあるため、気になる方はそうしたサービスの利用を検討してみるのも一つの方法です。
不動産売却査定の種類と特徴を理解しよう
不動産売却査定には大きく分けて簡易査定(机上査定)と訪問査定(実査定)の2種類があります。
ここでは、それぞれについて特徴等、解説していきます。
簡易査定(机上査定)とは
簡易査定とは登記簿謄本や測量図など、書面のみの情報を元に不動産の査定額を算出する方法です。
実際に現地に足を運ばずに査定を行うため、査定の精度に不安が残りますが、査定依頼後、早い場合はその日の内に査定額の提示を受けられることもある等、スピードの面でメリットがあります。
まずは相場を知りたいといった時におすすめの査定法だといえます。
なお、マンションの場合、同じマンション内の別の部屋や、駅から同程度の距離にある他のマンションなど類似物件を見つけやすいこともあり、簡易査定でも高い精度を期待できます。
一方、一戸建ての場合は個別性が高く、簡易査定向きではありません。
訪問査定(実査定)とは
訪問査定とは簡易査定による査定に加え、実際に現地を訪れて査定する方法です。
物件内の住宅設備の劣化状況や物件に至るまでの周辺環境の雰囲気や、マンションであれば共用部分の状態などを査定額に反映することができます。
そのため、精度の高い査定を期待できますが、売主が査定に立ち会う必要がある分、査定依頼から査定額の提示を受けるまで1~2週間以上かかるのが一般的です。
なお、実際に売却を依頼する場合、最終的には訪問査定を受ける必要があります。
不動産の売却査定をしてから、実際に売れるまでの流れ
不動産を売却するだいたいの流れは以下の通りです。
- 相場を調べて、おおよその売買価格を決める
- 査定を依頼する
- 売却の仲介を依頼する業者を決める(媒介契約を結ぶ)
- 購入検討者との交渉(内覧対応)
- 売買契約を結ぶ
- 物件の引き渡し(決済)
1つずつ順番に見ていきますので、まずは全体像の把握に努めてください。その後、相場の調べ方と業者の選定方法について特に重点的に確認していきましょう。
1. 相場を調べて、おおよその売買価格を決める
まずは自分で相場を調べて、いくらで売れるかおおよその売買価格の見立てを持ちましょう。
難しく感じるかもしれませんが、全てを不動産業者に任せるのはよくありません。
この不動産業者は信用できるのかを判断するポイントにもなりますので、所有する不動産のことを自分自身でもしっかりと理解しましょう。
2. 査定を依頼する
おおよその売買価格がわかった後は、業者に査定を依頼しましょう。
一括査定をサービスを利用すれば、1度に複数の業者に査定してもらえるのでとても便利です。業者同士を比較した上で売却を依頼するのが重要です。
3. 売却の仲介を依頼する業者を決める
査定をしてもらったら、どこの業者に売却を依頼するのか決めましょう。
このとき、査定額だけをみてどこに依頼するのか判断するのは避けましょう。なぜかというと、査定価格で実際に売却できるとは限らないからです。
仲介手数料欲しさにあえて見積もりの査定額を高く提示し、媒介契約を結ぼうとする悪質な業者が無いとは言い切れません。
他の業者よりも明らかに高い査定額を提示するような業者があれば、その根拠となる情報も自分から業者に問い合わせるようにしましょう。
4. 業者と媒介契約を結ぶ
依頼する業者が決まったら、媒介契約を結びます。
複数業者に依頼したい場合は「一般媒介契約」、一社のみにお願いする場合は「専任媒介契約」、または「専属専任媒介契約」を結びます。
5. 購入検討者との交渉
物件を売り出していると、購入検討者から質問がきたり、ときには価格を下げてほしいと交渉を持ちかけられるかもしれません。
あなたが優先したいのは「早く売却すること」なのか、「高く売却すること」なのか、決めておかなければ、最初の購入検討者が一番高い条件で購入を申し込んだ後、結局成約には至らず、最終的に買い手が見つからずズルズルと売り出し価格を引き下げざるを得ないケースもあります。
そうならないためにも、最初にある程度見込みの売却額を想定しておくのが大切なのです。
買い手との交渉に関しては、業者に優先したいことを伝え、購入検討者との間に入ってもらい、うまく話を進めてもらいましょう。
6. 売買契約を結ぶ
ここまできたら、あともう少しです。
購入検討者と価格や引き渡し時期など、条件が折り合ったら売買契約を結びます。
7. 物件の引き渡し
物件の引き渡し当日(決済日とも言います)は、銀行や業者の事務所などで諸手続きを済ませます。
不動産売却の流れは大まかに見ると上記のようになります。
査定を依頼してから実際に売却に至るまでは、早くても3ヵ月程度かかります。
余裕を持って準備を進め、できるだけ焦らずタイミングを待つことができれば、失敗しない売却ができます。
自分でもできる!不動産相場の調べ方
不動産を売却する際は相場を調べることが特に重要になりますが、「相場の調べ方なんてよく分からないよ」という方でもわかるように、要点をより詳細に見ていきます。
これが絶対!という正解があるわけではないですし、おおよその感覚がつかめれば大丈夫なので、以下のチェックポイントを参考に相場はぜひ自分でも調べてみてくださいね。
公示価格と路線価
公示価格とは、地価公示法にもとづいて土地鑑定委員会(国土交通省)が公表する土地の価格のことを言います。
また路線価は、国税庁が調査・発表を行う土地の価格です。
公示価格と路線価は毎年更新されますが、下落の傾向が激しいような場合にはできるだけ早く買い手を見つけるべきといった判断ができるので、事前にチェクしておくようにしましょう。
近隣物件における過去の成約事例
あなたの売却目的の不動産と似た条件のものが、過去にどういった条件で売却されているか確認してみましょう。
似た条件の物件を探す際は、
①最寄り駅からの距離(徒歩何分か)
②築年数
③広さ
上記3つの条件で比べてみましょう。
近隣の今現在の取引事例
今現在売りに出されている不動産は、どのような条件のものが多いのかというのも確認しておきましょう。
ただし過去の成約事例は、「実際にその条件で取引が成立した」事例ではありますが、あくまで過去の事例です。
現在はもっと条件をさげないとその価格では売却できないかもしれませんし、もっと高額に設定しても売却できるかもしれないので、公示価格・路線価と合わせてたくさんの事例を確認して傾向を掴みましょう。
過去・現在ともに取引事例は、不動産情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)、レインズ・マーケット・インフォメーション等の物件情報サイトで 確認できます。
・不動産情報ライブラリ(国土交通省)
・レインズ・マーケット・インフォメーション(REINS)
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少しでも査定額を高くするために知っておきたいチェックポイント
少しでも査定額を高くしたいのであれば、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。
不動産の査定額の多くは立地で決まる
まず、前提として不動産野査定額の多くは立地で決めることを理解しておきましょう。
そのことを前提に、以下のようなことを実施することで査定額を少しでも高くする努力をすることをおすすめします。
査定前に徹底的にきれいにしておく
まず、査定前に物件を徹底的にきれいにしておきましょう。
床や壁、水回りの壁などきれいにできるところは最大限きれいにしておきます。
一戸建ての場合、庭の草をきれいに取っておくことや、マンションの場合は駐車場の草や集合ポストまできれいにできるとよいでしょう。
お金はかかりますが、ハウスクリーニングを利用するのも一つの方法です。
基本的にリフォームは実施しないでおく
一方、住宅設備を新しいものに取り換えたり、壁紙やフローリングを新しいものにしたりといったリフォームの実施は、少なくとも査定前の段階ではしないでおきましょう。
これらは、費用がかかるものの、かけた費用分、売却額に加算できることは多くありません。
また、中古物件の購入者は物件購入後にリフォームを実施することが多く、売却前にリフォームしてももったいないといった理由もあります。
もちろん、物件の状態があまりよくないのであれば売却前にリフォームすることもありますが、リフォームするかどうかの判断については、売却を 依頼する不動産会社と相談しながら決めることをおすすめします。
業者の調べ方・選び方
一括査定を依頼してどこの業者に依頼しようか悩んだら、以下の点で業者を比較してみてください。
業者の中には自分たちが選ばれるようにと査定額を高く提示するところもありますが、「実際に媒介契約を結んで依頼してみたら査定額と成約価格がかけ離れていた」なんてこともあります。
そのようなことにならないように、誠実に対応してくれる業者を選びましょう。
物件周辺の土地情報に詳しい
物件周辺に詳しい業者だからこそ知り得る情報があるかもしれません。
例えば、該当物件の近くで土地を探している人がいるなど、そのような情報を持っていれば相場よりも高値で売却できるケースもあるかもしれません。
また、物件周辺に詳しいだけでなく、実際に販売実績があると説得力があります。
売り出し価格の根拠をきちんと説明できる
査定額=売り出し価格を何故その価格に設定したか、なんとなくでは困りますよね。
この価格設定の根拠をきちんと説明できる業者だと、安心感があります。
前述の取引事例などの情報に加え、物件周辺に詳しい業者だからこそ知り得る情報もあれば、高額だったとしても低額だったとしても根拠があるので納得できますし、中々売れずに困ったり、あるいは相場より安く買い叩かれるリスクも抑えられます。
失敗しないために!不動産売却査定で確認すべき8つのこと
ここからは、媒介契約を結ぶ業者を選ぶ際に参考になるポイントをもう少し掘り下げて解説します。
悪どい業者だとあなたが不動産に関して無知だとわかると、あの手この手で騙そうとしてくるかもしれません。
自衛のためにも押さえておきましょう。
①査定をする前に自分で相場を調べたか
まず、不動産会社に査定依頼する前に自分で必ず相場を調べておきましょう。
不動産会社に査定依頼すれば相場を知ることはできるのですが、事前に自分で調べておくことで不動産会社の提示する査定額について、ある程度自分の考えを持って判断できるようになります。
②不動産業者の免許番号に注目しよう
不動産業者は、必ず国土交通省から割り振られた免許番号というものがあります。
この番号が大きければ大きいほど、設立から年数が経っているということになります。
逆にいうと、この番号が若ければ若いほど設立から日が浅いということになります。
業者の新旧は仕事の質を図る直接の理由にはなりませんが、古い業者はそれだけ長く仕事を続けられる要因があるため、一つの指標になるということを覚えておきましょう。
③行政処分の有無
不動産業者は宅建業法やその他法律違反を犯すと国土交通省から処分を受けます。
これは国土交通省のホームページから確認することができますので、依頼しようと思っている業者に行政処分された形跡がないか確認してみると良いでしょう。
・国土交通省ネガティブ情報等検索システム<宅地建物取引業者>
④宅地建物取引士の有無
不動産業者は、宅地建物取引士の資格を有する者を5人に1人の割合で事務所に配置しないといけない、と宅建業法で決められています。
もしちょっとこの業者は不安だな、と思ったら事務所に何人の宅地建物取引士がいるのか聞いてみるといいかもしれません。
例えば明らかに10人以上在籍しているのに、1人だけとなると、その業者は「宅建業法違反をしている会社」ということになります。
しかもそれをお客さんに堂々と言ってしまうようだとなおさら不安ですね。
その場合は違う業者を選んだ方が良いでしょう。
⑤提示された査定額について納得のいく根拠が揃っていたか
査定額は単にその高低だけで判断していはいけません。
提示された査定額について、過去のどのような実績を元にした判断で、実際にどのようなルートで販売する予定なのか等、納得のいく根拠が揃っているかを確認するようにしましょう。
⑥不動産会社は近隣物件の販売状況を把握していたか
担当者の実力や、販売にかける積極性を判断する方法の一つとして、売却物件の近隣にある物件について、担当者が販売状況を把握しているかどうかを確認する方法が挙げられます。
物件の存在の有無や具体的な販売額、購入希望者の有無など、どこまで知っているか質問してみるとよいでしょう 。
⑦売却が得意分野の業者かどうか
不動産業にはいろいろな業務の種類があります。
売買や賃貸、仲介や管理など同じ不動産業でも業務の内容は異なります。
それゆえその業者ごとに、得意不得意があるのです。
あなたが売却を依頼するなら、賃貸仲介のスペシャリストよりも売却のスペシャリストにお願いしたいと思いませんか?
業者としての良し悪しはもちろんですが、まずはその業者の得意分野に着目してみましょう。
⑧近隣の販売実績について不動産会社から説明があったか
査定額の提示を受けるにあたり、近隣の販売実績について不動産会社から説明があった場合、その不動産会社はそのエリアの販売に自信があると判断できます。
説明時には、実際にどんな方法で売却に結びつけたかといった点まで確認しておくとよいでしょう。
最後に、会社の規模より担当者の仕事ぶりをみてみよう
業者に売却を依頼するときに、大手の業者に頼んだ方がいいのか、地域密着型の地元の業者に頼んだ方がいいのか悩む方もいると思います。
もちろん決め方は人それぞれなのですが、「会社の規模より担当者の仕事ぶりで決める」ことをおすすめします。
あなたがこれからお付き合いするのは、担当営業マンという個人です。
良い取引だったかどうかを左右するのは、担当者の仕事ぶりにかかっていると言っても過言ではないでしょう。
いくら大手企業であっても担当者にやる気がなければ良い取引にはならないでしょうし、逆もまた然りです。
少しでも知識があれば、不動産売却に対する苦手意識や漠然とした恐怖も緩和され、正確な判断をすることが可能になります。
この記事を読んでくださったあなたが、少しでも満足ゆく不動産の売却ができれば幸いです。