2009年に個人向けの太陽光発電を中心とした固定価格買取制度(FIT制度)が導入された事もあり、副収入目的に太陽光発電装置を屋根の上に設置している住宅が、数多く見られます。
しかし、個人向けのFIT制度は見直しが行われ、終了する可能性もあります。仮にFIT制度が終了してしまえば、その副収入は得られなくなります。
では、太陽光パネルが付いている住宅を売る場合、査定額が上がったり、反対に下がったりしてしまうことはあるのでしょうか?
太陽光発電装置付き住宅のメリット
太陽光発電装置付き住宅には「売電で副収入が得られる」「電気代が節約できる」という2つのメリットがあります。
売電で副収入が得られる
個人住宅で発電した、太陽光など自然由来エネルギーの固定価格買取制度は「FIT制度」と呼ばれ、2009年に導入されました。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
2024年現在もこの制度は継続されており、住宅に太陽光発電装置を設置すれば、発電した電力の買取が固定価格で10年間保証されます。
例えば、2013年に太陽光発電装置を取り付けた場合、2023年までは一定の価格で買い取りが保証されるのです(家庭用の場合1kWhあたり24円)。FIT制度により買取が保証されている発電設備が住宅に備わっている場合、副収入が得られる住宅として、売却時にはプラスに働きます。
蓄電池があれば、電気代の節約になる
買い取り制度の終了後に太陽光発電装置が使えないわけではありません。
民間企業による電力買取制度もありますし、それ以外にも発電した電力を自家消費すれば、電気代の節約になります。発電した電力を自宅に設置した蓄電池に貯めておけば、貯めた電力を使って家電を動かしたり、お湯を沸かしたりできるのです。
蓄電池さえあれば、電力 会社からの送電に依存する事がなくなり、自宅で電気を自由に使用できます。電気代の節約になるだけではなく、停電時の備えにもなります。
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太陽光発電装置付き住宅のデメリット
一方で、太陽光発電装置付き住宅にはデメリットも存在します。
売電期間が終わった後の扱いが難しい
売電で収入が得られる期間は別として、固定価格での買取期間そのものが終わってしまえば、太陽光発電装置を邪魔に思う人もいるかもしれません。
蓄電池があれば電気代の節約につながりますが、蓄電池の価格は最安でも100万円前後と決して安い買い物はありません。電気代を毎月1万円ずつ節約できたとしても、蓄電池に使った100万円をペイするには、8年以上かかってしまいます。
また、太陽光発電装置は屋根一面に黒いパネルを設置するため、家の景観を損ないます。経済的にメリットが少ないのであれば、外すという選択肢も考えられます。
メンテナンスに費用がかかる
太陽光発電装置は災害などで破損するおそれがあります。またケーブルの断線、老朽化による発電効率の低下等、装置の性能を低下させる原因は幾つか挙げられます。そのため、定期的なメンテナンスが必要です。
保険に入っていれば、災害による被害は補償されますが、補償を受けるには保険への加入と月々の保険料が必要です。また、発電装置を継続的に使用するには、定期的なメンテナンスが必要です。ランニングコストがかかる点がデメリットと言えるでしょう。
強風などに弱く、防災リスクが高まる
太陽光発電装置は強風等で飛んでいくおそれがあります。老朽化した太陽光発電装置を放置し続けたままでは、落下して通行人が怪我を負ってしまうかもしれません。もしそうなった際には損害賠償に発展する可能性があり、こうしたリス クにも備える必要があります。
太陽光発電装置を設置したままでは、自らが被害を受けるリスクと他人に損害を与えるリスクの両方が発生します。可能性は決して高いわけではありませんが、最近は大型台風による被害も全国各地で多発しており、暴風の影響が無視できないのも事実です。
名義変更などの手続きが必要
電力の売却には、経済産業省に対し、買取制度の申請が必要です。例えば、あなたがAさんに発電装置付きの住宅を売った場合、買取制度の申請者があなたからAさんに変わることを役所に伝えなければいけません。
また、売電収入の銀行口座の変更なども必要です。
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太陽光発電装置付き住宅が高く売れるケースとは
では、太陽光発電装置付き住宅が高く売れるケースには、どのような事例が考えられるのでしょうか。
売電期間が長く残っている
まずは最大のメリットである、副収入が得られる点を考えてみましょう。
新築の住宅を建てる際に太陽光発電装置を導入し、その後3年が経過して家を売る場合、期間は7年間も残っています。1年間の売電収入が20万円である場合、7年間では140万円の収入になります。
その場合、仮に資産価値が通常で3,000万円の住宅であるとしても、この場合は「140万円の収入付き」でもあるため、100万円前後を売却価格に上乗せしても売れるでしょう。買主・売主の双方にとって、悪い話ではないと言えます。
蓄電池を導入済みである
売電期間終了後のリスク対策としては、蓄電池の設置が最も適切です。すでに蓄電池を導入済みの住宅であれば、中古住宅の買主自らが高価な蓄電池を買う必要はありません。FIT制度の適用期間が終了しても、太陽光発電装置は無駄にならないのです。
むしろ、電気代の節約の方が長期に渡って家計を大いに助けるため、売電のメリットよりも上に見られることもあります。15,000円分も毎月の電気代を節約できれば、20年間で360万円もの経済的なメリットが生じます。相場よりも数十万~100万円ほど高く売ることも現実的だと言えます。
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売却する なら太陽光パネルを処分したほうが良いケース
逆に、太陽光発電装置がリスクにつながるケース、売却の妨げになるケースとはどのようなものでしょうか。
売電期間が短い
売電期間の残り期間が短いときは、買主にとってメリットはほとんどありません。
残りの売電期間が1年しか残っていない住宅では、1年間で得られる収入はせいぜい10~20万円程度です。無いよりはマシですが、売電期間終了後の屋根の上に太陽光発電装置だけが残っていても、さほどメリットを感じない買主もいるでしょう。
「太陽光発電装置は要らない」と買主が思うのであれば、自腹を切ってまで処分しようとはしないでしょうし、そうなると残置物の存在そのものが購入意欲を削ぎかねません。そうしたケースでは、パネルの処分も検討するのが良いと言えます。
蓄電池を導入していない
同様に購入意欲を削ぐケースとして、蓄電池の未導入が該当します。蓄電池が導入されていれば、売電期間が終わったとしても、太陽光発電装置は電気代の節約につながります。
しかし、蓄電池がなければ直接的なメリットは享受しにくく、かえって邪魔に思う人も少なくありません。
蓄電池の導入に補助金を支給している自治体もありますが、全ての自治体で支給しているわけではありません。一部の自治体においては補助金の支給が期待できないため、自腹で100万円以上の蓄電池を購入しなければいけません。
売主が自腹で設置して存在価値を高めることも可能ですが、前述の通り最低でも100万円ほどの負担が生じてしまいます。このコストを考えた場合、20万円程度で済む太陽光発電装置の処分の方が賢明だと言える でしょう。
設備が古くなっている
設置から年数が経過した太陽光発電装置は、発電効率が悪くなります。また、金属部分が老朽化しているかもしれません。太陽光発電装置だけではなく、設置している金具が古くなれば、落下して自宅や周囲が損傷を受けるおそれがあります。
被害を未然に防ぐには定期的な本体のメンテナンス、または、金具等を交換しなければいけませんが、費用も決して安いものではありません。無理して太陽光発電装置を使い続けるよりも、きっぱりと処分してしまった方が後々のリスクを抑える事ができます。
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まとめ
太陽光発電装置が100万円の収入を別に生み出すのであれば、物件の売却時に100万円とは行かずとも、数十万円の上乗せが可能です。
逆に、年間数万円を掛けてメンテナンスしなければいけないのであれば、マイナス査定の要因となる可能性もあります。
まずは売電の残存期間から生じる利益を計算の上、そのまま残すのか、それとも外してしまうのかを考えるようにしましょう。