土地には不動産登記法によって宅地や田などの地目が定められています。
家を建てるためには原則として宅地である必要がありますが、宅地以外の地目でも家を建てられるケースがあります。
この記事では、宅地以外で家を建てられる地目や家を建てる際の流れや注意点を詳しく解説します。
宅地以外に家を建てることはできる?
土地の地目とは、土地の用途を示したもので宅地・田・畑・山林・雑種地など23種類あります。
まずは、地目と家の建築についてみていきましょう。
家を建てるには地目が宅地である必要がある
地目が「宅地」になっているのは、建物の敷地および建物の維持・効果を果たすために必要な土地です。
具体的には、現在建物が建っている、あるいは建物の敷地として利用される予定の土地が宅地に該当します。
建物を建てるためには、原則として地目が宅地でなければいけません。
地目は登記事項証明書を確認すれば分かるので、家の建築を検討している場合は地目の種類もチェックするようにしましょう。
実質宅地で地目が田や畑のケースがある
地目は土地の使用状況に応じて登記されるので、建物が建っている土地は基本的に宅地として登記されます。
しかし、なかには「実質的には宅地として利用していても、地目が田や畑」というケースや「周囲に家が建っているのに山林」になっているケースは珍しくないのです。
土地の現状を1つずつ見て登記状況とチェックするのは難しく、また、土地の用途を変更した際には地目の変更登記が必要ですが怠っているケースもあります。
そのため、現在の使用状況と地目が異なるケースもある点には注意しましょう。
家の建築前に地目変更する必要がある
地目が宅地以外では建物が建てられないというわけではありません。
宅地以外では「山林」「原野」「雑種地」であれば建物の建築が可能です。
また、「田」「畑」であっても農地転用することで建物を建てることができます。
- 山林:耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
- 原野:耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
- 雑種地:他の22種類の地目に該当しない土地
- 田:農耕地で用水を利用して耕作する土地
- 畑:農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
なお、地目を変更するタイミングは、現状と土地の状態が一致した後です。
建物を建てる場合、山林・原野・雑種地では造成工事後、田・畑では農地転用の手続き後に造成工事を行ってからとなるので注意しましょう。
また、住宅ローンを利用する場合は金融機関から地目変更を要求されるのが一般的です。
とくに、田・畑では住宅ローンを組めないケースがほとんどなので注意しましょう。
地目変更の流れ
地目変更の大まかな流れは以下のとおりです。
- 現況調査
- 必要書類の準備
- (必要な場合)農地転用許可申請
- 地目変更登記申請
- 法務局による審査と現地調査
- 登記完了
それぞれ見ていきましょう。
1.現況調査
まずは、土地の地目がどうなっているのかを確認します。
地目は不動産の登記事項証明書で確認できるので、窓口やオンラインで取得してチェックしましょう。
地目と利用状況が異なる場合、地目は現在の状況が優先されます。
そのため、現在の土地の利用状況がとうなっているかを確認します。
利用状況の判断に悩む場合は、法務局の窓口で「現況調査依頼」を申し込むと実際の状況をチェックしてもらえます。
現況調査依頼の申請方法は自治体によって異なるケースもあるので、管轄の法務局窓口やホームページで確認するとよいでしょう。
2.必要書類の準備
地目変更では以下のような書類が必要です。
- 土地地目変更登記申請書
- (土地所有者が亡くなっている場合)住民票や戸籍謄本
- (農地転用する場合)農地転用の許可証・届出書
- 現地地図
地目変更登記申請書には、土地の所在や地番、変更前後の地目、登記原因や日付などの情報が必要です。
地目を変更する前の登記事項証明書を取得しておけば、スムーズに記載できるでしょう。
3.(必要な場合)農地転用許可申請
地目が田・畑から宅地に変更する場合は農業員会へ申請し証明書を発行してもらう農地転用の手続きが必要です。
農地転用の手続き は、状況によってはなかなか許可が貰えないなど煩雑になりやすいので、行政書士などのプロへの相談をおすすめします。
4.地目変更登記申請
必要書類を揃えたら、法務局で地目変更登記申請を行います。
申請する法務局は土地を管轄する法務局であり、最寄りの法務局ではないので注意しましょう。
申請方法は、窓口・郵送・オンラインのいずれかで行えます。
時間に余裕があるなら書類の簡易チェックを受けられる窓口がおすすめです。
なお、地目変更登記申請では登録免許税はかかりません。
ただし、証明書の発行や交通費などの実費は必要となり、土地家屋調査士などに依頼する場合は依頼料が発生するので注意しましょう。
5.法務局による審査と現地調査
申請後は、法務局で書類や土地の現状の調査が行われます。
審査で問題がなければ登記が行われます。
登記完了
登記が完了後は登記完了証が交付されるので、窓口もしくは郵送で受け取りましょう。
申請から登記完了まで1~2週間ほど時間がかかります。
住宅ローンなどの手続きで地目変更が必要な場合は、スケジュールに余裕をもって手続きを進めるようにしましょう。
▼関連記事:地目変更の登記は自分でできる?必要書類や費用を解説します
家を建てるために地目変更するための注意点
最後に、家を建てる際の地目変更に関する注意点をみていきましょう。
地目変更から1ヶ月以内に申請する必要がある
地目が、山林・原野・雑種地であれば建物を建てる前に地目変更は必要ありません。
しかし、用途の変更後は宅地への地目変更が必要です。
地目変更は、地目の変更が生じた日から1か月以内と義務付けられており、期限を超えれば10万円以下の過料の恐れがあります。
なお、家を建てる場合は土地の造成工事が終わった時点が変更日になるのが一般的なので注意しましょう。
農地転用には時間がかかる
農地転用が必要な場合、地目変更にかかる時間も長くなります。
農地転用にかかる時間は個々のケースで異なりますが、市街化区域の農地であれば1~2週間で完了する反面、市街化調整区域などでは6週間~2カ月ほど時間がかかります。
書類に不備がある、許可基準を満たさないなどで許可が下りないと1年以上かかるケースもあります。
農地転用は時間がかかるだけでなく手続き自体も煩雑となるので、行政書士に相談しながら進めるとよいでしょう。
農地転用は建物を建てる目的で許可される
農地転用は建物建築以外の目的でも可能です。
たとえば、商業施設や工場、道路、駐車場利用など農作以外で農地を利用する場合は、農地転用が必要です。
また、農地を売却するケースでも、農地のままでは売却が難しいので農地転用してから売却するケースが多いでしょう。
農地転用が許可されないケースもある
農地転用は申請すれば必ず認められるわけではありません。
農振地域、農用地区域内など一定の区域の農地では許可されないケースもあるので注意が必要です。
また、立地基準、一般基準と呼ばれる基準をクリアする必要があるため、基準を満たさないと許可されません。
そのため、農地転用を検討する場合は、許可されるかどうかも含めてプロに相談することをおすすめします。
まとめ
家を建てるためには地目が宅地であることが原則です。
しかし、宅地以外でも山林・原野・雑種地・田・畑であれば家を建てることができます。
ただし、田・畑については事前に農地転用の手続きが必要なのでプロに相談しながら進めるとよいでしょう。
そのうえで、土地の用途が変わったら地目変更の登記手続きが必要です。
登記手続きを怠るとペナルティを科せられる恐れがあるので、速やかに手続きを行いましょう。