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地方では”負動産”の増加でどんな問題が発生している?放棄地から波及する悪影響を紹介します

前回の記事「売れない”負動産”の利活用は可能?」では、「負動産」の有効活用の事例についていくつか紹介しました。

しかし、

  • 負動産は個人レベルでの活用にとどめるのが現実的
  • 多額の費用をかけて収益物件として再生する事例はほとんどない
  • 負動産はすでに商機を失っているため、大きなビジネスチャンスは期待できない
  • 改修や整備に費用をかけても、費用回収すら困難なケースが多い
  • 採算性を重視せず、趣味の範囲で活用するのが無難

というのが筆者の見解です。

元々、賃貸経営を含めて事業用地としての需要が失われているからこその「負動産」である以上、その活用用途は自ずと限られています。

むしろ活用どころか、その「負動産」の存在自体が、所有者、あるいは周辺環境に悪影響を及ぼす事例のほうが目立つことが多くなってきました。

もっとも分かりやすい事例のひとつが「危険空き家」の存在です。昨今「空き家問題」の代表事例として、老朽化した家屋が倒壊寸前の危険な状態となり、行政代執行によって解体される、というニュースがよく報じられるようになりました。

崩落しかけた「危険空き家」はビジュアル的に非常にわかりやすいものであるため世間の関心も高いですが、その他の問題となると、課題としても地味で、かつ解決困難なものが多いので、問題として認識はされながらもなし崩し的にそのままになっている、というものが多い印象です。

今回の記事では、そんな「負動産」や「放棄地」の増加がもたらしている弊害や課題を紹介します。

このページの目次
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①コミュニティの衰退と地域の荒廃

「負動産」と呼ばれる物件の多くは、交通アクセスの悪い小都市や農村部に多く見られます。しかし、立地や利便性が悪ければそれが直ちに負動産と化すわけでもなく、そこに暮らす人にとっては、市場価格が高いかどうかに関係なく生活の場でもあります。

所有者の事情と放置の現実

ある土地・建物が負動産と化す条件としては、もちろん物件そのものの価格の安さ、流動性の低さが大きな要因ですが、それと同時に、所有者自身の処理能力、問題解決能力にも大きく左右されます。

「解決能力」の観点で挙げる事例としては極端な話になりますが、空き家の発生要因の典型として、高齢の所有者が認知症や寝たきりになって入院してしまい、売買の判断が下せなくなったまま放置されてしまう、というパターンがあります。

認知症とまで言わなくても、例えば相続人が遠方に住んでいて容易に売却先を見つけられない、体力面、予算面の都合から売却・処分のために労力を費やせる状況にない、というケースは珍しくありません。

同一地域に混在する管理不全と良好物件

そのため、たとえ同じエリア内、ほぼ同じ条件の立地であったとしても、適切に住戸・生活空間として利用されている不動産と、管理・処分もされないまま放置されている「負動産」が混在しているのが通例です。「地方の衰退」と大雑把に語られることが多い負動産問題ですが、実際には利便性の悪い外縁部から一律に規則正しく衰退しているわけではありません。

私の仕事上のメインテーマは交通不便な地域の住宅分譲地ですが、住宅分譲地の場合でも、同一エリア内において、管理が行き届いた分譲地と、そうでない分譲地は明確に分かれています。

こうした管理不全の不動産(土地でも建物でも)が、地域の中にまだらに点在してしまう場合、よく指摘される弊害として、資産価値の低下、そしてインフラ整備の非効率化などがあります。

管理不全の物件がエリアの資産価値と流動性の低下をもたらす

資産価値の低下は説明するまでもない現象ですが、インフラ整備の非効率化というのは、結局管理された土地とそうでない土地がまだらに混在している状態が続くだけでは、全体として住民の居住範囲が変わるわけではなく、地域内の利用密度が薄くなっているだけという状態です。

人口が減っていくにもかかわらず、電気にせよ、水道にせよ、あるいは道路整備も含めた交通網の維持にせよ、整備や管理を必要とする範囲が変わらなければ、効率は失われていく一方です。人の住まいの話なので、何から何まで効率一辺倒、というわけにはなかなかいきませんが、インフラ整備の予算も有限である以上、どこかで線引きが必要になります。

その原因をすべて管理不全の放棄地に帰することはできません。しかし、管理不全土地の増加は、つまりは地域全体の活力を下げ、そしてそれも資産価値低下の遠因となり、さらに処分への道が遠のくということを、そうした負動産や放棄地の所有者も自覚する必要があるでしょう。

損切できない心理による悪循環

この期に及んでまだその感覚でいられる心理が私にはなかなかわからないのですが、今でもそうした負動産の所有者の中には、「その値段では売りたくない」「売り急いでいない」との理由で、理由もなく所有し続ける人が少なからずいます。

それで日々所有地の適切な維持管理をしているのであれば他人がとやかく言う話ではありませんが、実際には草刈りひとつせず荒れ果て放題であったりして、むしろ自分の所有地を含めた周辺地域全体の資産価値や流動性を押し下げる結果にしかなっていないのは皮肉なものです。

こうした感覚の方は得てして、自分の土地の周辺には他者の所有地があり、地域環境を形成する一要素を担っているのだという自覚に乏しいようです。

負動産の代表格「別荘地」の実態

管理会社によるインフラ維持が行われ、所有しているだけで管理費が発生する別荘地は、より複雑な事情を抱えています。

高度成長期以降、日本各地で分譲・販売された別荘地は、開発から数十年が経過しています。その間に所有者の世代交代も進みました。現在では、老朽化して朽ち果てた別荘や、分譲後一度も建物が建てられず雑木林となった空き地の処分に悩む人が多くいます。

さらに、所有しているだけで年間の管理費などの支払いが必要な場合もあり、こうした背景から、別荘地は現在「負動産」の筆頭ともいえる存在になっているのです。

管理会社も、別荘地の区画数は決まっている以上、管理費として徴収できる額には上限があります。所有者と連絡が取れないために管理契約を締結できない「管理費未納区画」の存在が、管理会社の採算性を圧迫してきました。

そのため、近年では別荘地の管理業務から撤退する会社も多くなっています。

管理費未納と管理会社の苦境

6月30日、那須塩原市内の別荘管理会社が提訴した、不当利得返還請求事件の最高裁判決(令和4年(7)第12236号)において、土地所有者に対し、管理契約を結んでいなくとも管理費を支払う義務があるとして、土地所有者に対し、管理費未納によって発生した損害分の支払いを求めていた管理会社側の主張が認められました1

別荘地の管理契約を巡っては、そこに土地を所有している限り契約の解除が認められない事例が多く、これまでにも何度も土地所有者と管理会社の間で争われてきました。

「事実上解約不可能な契約の存在」を疑問視する声は法曹界からも少なくありません。一方で、多くの別荘所有者が管理費を支払い、それによって別荘地の住環境が維持されているため、「一部の所有者だけが自己都合でその管理から離脱して管理費の支払いを免れるのは不当」というのが裁判所の判断です。

同様の紛争は今後も続いていくものと思われますが、しかしこうした判例が一般化していくにつれ、別荘地を所有したがる人はますます限られるようになり、それがよりいっそう資産性を毀損する結果になりかねません。裁判所や管理会社は、管理費が支払われ、管理業務が行われれることによって資産価値が維持されるとの見解です。

もちろんそういう別荘地もあるのですが、近年、負動産として扱われる別荘地は、むしろこの年間の管理費の存在がネックになって価格を押し下げています。元を辿れば、決して十分な先行きを考慮したとは言えない、高度成長期以降の場当たり的な別荘地開発に起因する話です。

ただし、これもある意味では、別荘所有者も、また管理会社側も、根本的な問題解決を先送りにしてきたからこそ招いた事態でもあります。

②不誠実な商慣習の横行

管理不全の放棄地が増加すれば資産価値が低下するのは当たり前の話であって、改めて説明する話でもないかもしれません。

不動産市場の特殊性と負動産の供給過多

しかし不動産というものは一般の小売商品(とその中古品)とは異なり、その取引を商売として行うためには宅建業法で定められた法令に適合した営業形態が必要となるほか、取引にあたっても厳しい規制があり、売れ行きが芳しくなければ特売のワゴンセールに放り込んでおけば良いという商品ではありません。値段がいくら安くなっても、それを取り扱う業者の手間はあまり変わらないという固有の特性があります。

つまり資産価値が下がれば下がるほど、その地域の不動産を積極的に扱う業者は減っていくのが常なのですが、一方で負動産と化すことで手放したい所有者(供給)は変わらず存在するので、需要もなければ仲介する業者もない市場に、ただ供給だけが続く状態になります。その歪な市場に登場してきたのが、以前私も紹介した「有償引取業者」でした。

有償引取業者の登場と不誠実な営業手法

有償引取業者とは、所有者が処分に困った不動産を格安、またはマイナス価格で所有権を引き取る業者のことですが、その業者の中に、一部不誠実な手法で営業を行う業者が紛れています。

こうした「有償引取」が近年のように一般化する前から、負動産、特に高度成長期~バブル期にかけて投機目的で販売された住宅分譲地や別荘地の所有者に対して、詐欺まがいの悪徳商法が横行している実態がありました。

もっとも典型的なものは、負動産の所有者に対しダイレクトメールや電話営業などの手段で、あなたの持っている不動産が高値で売れますと持ちかけて、「手数料」「広告宣伝費」あるいは「測量費」など様々な名目で金銭を徴収するというものです。

測量費用を除き、仲介手数料は物件の売買契約成立時に、成功報酬として仲介業者に支払われるものであり、一般的な広告宣伝費もその仲介手数料の中に含まれるべきものです。

ところがこの手の業者は、買い手など一切見つかっていないうちから30万円ほどの手数料を徴収しておきながら、売却のための宣伝行為と言えば、現地に立て看板を立て、業者が所属する保証協会が運営する物件サイトに情報を載せるだけです。

保証協会が運営する物件サイトは、加盟業者であれば掲載料は無料ですが、知名度は低く、レスポンスなどまったく期待できるものではありません。

所有者を期待させて手数料を得るための不正確な査定

また、本来であれば10万円、20万円といった価格で売却出来れば御の字というような負動産であっても、最初に請求する手数料との整合性を持たせるために、この手の業者は数百万円程度のあり得ない査定額を提示して、その金額をそのまま売り出し価格として広告に掲載しています。

もちろんそんな価格で売れるはずもなく、問い合わせなどもないのですが、業者の目的は負動産の所有者から徴収する「手数料」なので、その物件が実際に売れるかどうかなどはまるで意に介していません。

実際に私の知人が、この手の業者の立看板のある土地に電話で問い合わせたことがあるのですが、「電話対応は極めて横柄で営業意欲も感じられず、そもそも最初から仲介する意思などないのでは」と語っていました。

被害の実態と拡大する対象層

この手法はすでに10年以上前から横行しています。さすがに近年は、負動産と化した旧分譲地や別荘地が高値で売れるなどという誘い文句は通用しなくなってきているようにも思えるのですが、社名だけ変えて同じ手法を繰り返しているとしか思えない会社のダイレクトメールは今も絶えず届いているので、未だにこの手の詐欺まがいの営業はまかり通っている模様です。

いわゆる「原野商法の二次被害」として、国民生活センターも繰り返し注意喚起を行っているのですが、被害は絶えることはありません。1人当たりの被害額も数十万円程度のためか、複数の会社が同様の手口を行っている実態がありながら、被害を訴える声も少なく、多くの被害者が泣き寝入りしているのが実情です。

「交換商法」にも注意

形を変えた手法として、負動産の所有者に対し「当社が所有する別のより価値の高い不動産と交換しませんか」と持ち掛け、「ただし査定額が異なるので、差額分の○○万円支払ってください」と請求して金銭を巻き上げるものがあります。

そして実際に「交換地」として渡される「より価値の高い不動産」とは、同様の手口で他の所有者から引き取っただけの、同じく無価値な負動産です。

那須高原の放棄別荘地の登記を見ると、現地は一切利用されている形跡もないのに、登記だけは数年間の間に10回以上売買が繰り返されている形跡のものを見ることがありますが、これらはこの「交換商法」の道具として利用され、各地の被害者噛んで意味もなく所有権だけが行き来しているものです。

悪徳業者がはびこる背景

こうした悪徳商法の被害者の多くは、かつて投機目的で販売された分譲地や別荘地の所有者なので、前述のように国民生活センターなどが行う注意喚起では「原野商法の二次被害」と呼ぶのが一般的ですが、しかしこれはもはやこの手の悪徳営業を指す言葉としては不適切です。

「有償引取業者」の利用者は、すでに原野商法の被害者だけではなく、一般のリゾート物件の購入者や、田舎の土地家屋、山林を相続した人にも及んでいますし、こうした悪徳商法の成立要件として、必ずしもそこが旧分譲地や旧別荘地である必要はありません。その負動産が重荷となって所有者にのしかかっている限り、悪徳業者に付け入られる隙があるということです。

そのような商売が横行して、一つのビジネスモデルとして成立してしまっている状態があるということは、つまりそれだけ負動産が世にあふれていることの裏返しであるとも言えるでしょう。

▼関連記事:不動産の有償引き取りサービスは利用しても大丈夫?

1.
参考:東京新聞|契約なくても支払い義務、最高裁 別荘地管理で(共同通信)
2025年7月29日閲覧
執筆者
吉川 祐介
吉川 祐介

1981年、静岡市生まれ。自身の家探しの過程で、70~90年代に投機目的で購入されたまま放置されている「限界ニュータウン」を訪ね歩くブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」を開設。22年には初の著書を刊行し、執筆の傍ら、YouTubeチャンネル「資産価値ZERO 限界ニュータウン探訪記」においても同テーマを題材とした動画配信も行っています。 著書に『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)など。

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