田畑を宅地に造成して家を建てた場合、その利用目的の変更に応じて「地目変更登記」が必要になります。
不動産登記簿に記載されている「地目」は、土地の利用目的に応じて分類されており、現況と異なるまま放置しておくと、思わぬトラブルや余分な税負担を招くおそれがあります。
「登記は専門家しかできないのでは」と思われるかもしれませんが、条件さえ整えば、地目変更の登記は自分で行うことも可能です。
この記事では、地目変更登記が必要になるケースや、自分で手続きをするための流れ、用意すべき書類、かかる費用などについて解説します。
地目変更が必要になる典型例
「地目(ちもく)」とは、不動産登記簿上に記載されている土地の利用目的(用途)を表す区分のことです。
- 宅地:建物が建っている、または建物を建てるための土地
- 田:耕作地のうち、水を利用して稲などを栽培する土地
- 畑:耕作地のうち、水を利用しないで作物を栽培する土地
- 山林:樹木が生育している山などの土地
- 雑種地:どの地目にも該当しない、複数の用途にまたがる土地
- 原野:耕作などがされておらず、草木が自然に生えている土地
上記のように、土地が現在どの目的で使用されているかに基づいて、地目が登記されます。
地目変更登記が必要になるのは、土地の使われ方が以前と変わったときです。
土地は時間の経過とともに、その利用目的が変化することがあります。
たとえば、家を建てたり、農地を駐車場に転用したりといった行為は、すべて地目変更の対象となり得るのです。
以下に、地目変更が求められる典型的なケースを紹介します。
農地(田・畑)を宅地にした場合
もっともよくあるのが、農地を宅地に造成し、住宅を建てたというケースです。
農地として登記されている土地を転用する場合、まずは農地法に基づく農地転用許可や届出が必要です。
その後、実際に造成や建築が完了したら、地目も「田」や「畑」から「宅地」へと変更しなければなりません。
この変更を行わないと、売買時や住宅ローンの担保設定時に金融機関から地目の訂正を求められるほか、固定資産税の算定にもズレが生じます。
古家を解体して更地にした場合
古い家屋を取り壊して、そのまま更地にしている場合も注意が必要です。もとの地目が「宅地」でも、住宅として使われなくなった段階で「雑種地」などへ変更すべきと判断されることがあります。
特に、今後建築の予定がない場合や、資材置場・家庭菜園など別の用途で使用する場合は、現況に合わせた地目に変更することで、課税根拠や行政手続きとの整合性が保たれます。
山林や原野を事業用地に造成した場合
太陽光発電設備や資材置場、コンテナ倉庫などを、山林や原野に設置するケースが昨今増えています。
これらの施設が恒久的なものであれば、登記簿上の地目も「山林」から「雑種地」「宅地」「公衆用道路」などに変更しなければなりません。
特に、第三者へ貸し出す場合や、事業用資産として活用を想定している場合は、登記と実態が一致していないと、不動産評価額や課税区分に大きなズレが生じる可能性があります。
駐車場・空き地として利用を開始した場合
家を取り壊した後にコインパーキングや月極駐車場として使うようになった場合も、登記上は「宅地」から「雑種地」への変更が必要です。
「宅地=住宅が建っている土地」という定義から外れるため、放置していると登記内容と現況が食い違い、将来的な売却や建築計画の際に不具合が生じかねません。
私道や里道を用途廃止して自宅敷地に編入した場合
接道要件を満たすために使っていた私道部分を廃止し、庭や敷地の一部として使うようになった場合も、地目変更の対象です。
登記簿では「公衆用道路」とされていても、現在は個人の住宅敷地として使われているなら「宅地」への変更が適当です。
地目変更の申請手続きの流れ
地目変更登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請することで行います。
内容としては比較的シンプルな登記ではありますが、必要書類の準備や現地状況の把握、図面の整合性などに注意が必要です。
ここでは、申請までの一般的な流れと各ステップで押さえるべきポイントを解説します。
①現地確認と地目の判定
最初に行うべきは、土地の現況がどの地目に該当するのかを判断することです。
地目はあくまで「利用の現況」に基づいて決まるため、登記簿に何と書かれているかではなく「今、実際にどう使われているか」が基準となります。
たとえば、住宅が建っていれば「宅地」、駐車場であれば「雑種地」、山林のままなら「山林」といった判断です。
判断がつかない場合は、最寄りの法務局に現況写真などを持参して相談すれば、地目の選定についてアドバイスを受けられることもあります。
②必要書類の収集
次に、登記申請に必要な書類をそろえます。
ケースによって異なりますが、主に次のような書類が必要になります。
- 登記申請書(地目変更用)
- 原因証明情報(例:「令和○年○月○日より住宅建築に利用」など、変更の事実を説明したメモ程度でも可)
- 現況写真(地目変更の根拠となる)
- 公図・地積測量図(法務局で取得)
- 委任状(代理申請の場合 )
地積や筆界に変更がある場合は、土地家屋調査士による測量図や、隣地所有者との境界確認書が必要となることがあります。
③申請書類の作成
申請書には、以下のような情報を正確に記載します。
- 不動産の表示(所在、地番など)
- 変更前と変更後の地目
- 地目が変わった日(原因日)
- 登記の原因(例:「令和7年5月1日 宅地に転用」)
- 申請人の氏名・住所・連絡先
申請書の様式は、法務局の窓口またはウェブサイトから入手可能です。
④法務局への提出(申請)
書類がそろったら、管轄の法務局に登記を申請します。方法は以下の2通りです。
- 窓口申請:書類一式を持参して提出(原本還付希望の場合は写しも添付)
- オンライン申請:司法書士等が代理で電子申請する場合に限る
本人が自ら申請する場合は、窓口での提出が一般的です。提出時に不備がなければ、その場で受付印が押されて受理されます。
⑤法務局での審査と補正対応
法務局に申請が受理されると、担当登記官による書類審査が行われ、通常、1~2週間以内に審査結果が通知されます。
もし不備があった場合は「補正通知」が送られてきます。補正とは、内容に誤りがあったり書類が不足していた場合に、訂正や追加提出を求められる手続きです。
補正の対応が遅れると申請が却下されることもあるため、速やかに対応しましょう。