不動産を売買すると、不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は売買の諸費用の中でも金額が大きくなるので、自分のケースでどれくらいかかるのかを事前に押さえておくことが重要です。
また、多くの人が高額になりがちな仲介手数料を少しでも抑えたいと考えるものですが、可能なのでしょうか。
この記事では、仲介手数料の相場や値引き交渉を成功させるコツ、値引きのデメリットなどを分かりやすく解説します。
不動産売買における仲介手数料の相場はいくら?
まずは、仲介手数料の相場をみていきましょう。
そもそも仲介手数料とは?
仲介手数料とは、不動産会社の仲介で不動産を売買した際に不動産会社に支払う成功報酬です。
売買成立時に、売主・買主がそれぞれ契約した不動産会社に支払います。
仲介手数料は、成功報酬であることから売買成立時しか発生しません。
また、複数の不動産会社と契約している場合でも、売買を成立させた不動産会社のみへの支払いとなります。
なお、不動産売買方法には仲介以外にも「買取(不動産会社が直接購入)」や「個人売買(仲介会社を挟まない)取引)」がありますが、仲介手数料は仲介のみで発生します。
仲介でないのに仲介手数料を請求された、仲介でも売買成立前に請求された場合は違法にあたるおそれがあるので、注意しましょう。
仲介手数料は法律で上限が定められている
仲介手数料は、宅地建物取引業法という不動産取引に関わる法律によって上限が定められています。
第四十六条
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
仲介手数料は法律に則る必要があるため、不動産会社は上限を超えて請求することはできません。
上限について理解しておくことで、安心して不動産売買を進めることができるでしょう。
不動産売買の仲介手数料の上限額を求める計算式
仲介手数料の上限は、以下の計算式で求められます。
売買金額 | 計算式 |
200万円以下の部分 | 売買金額×5%+消費税 |
200万円超400万円以下の部分 | 売買金額×4%+消費税 |
400万円超の部分 | 売買金額×3%+消費税 |
売買金額を上記の3つの価格帯に分けて計算し、合算した額が仲介手数料です。
ただ、上記の計算式は手間がかかるため、以下の速算式を用いれば簡単に求めることができます。
売買金額 | 計算式 |
200万円以下 | 売買金額×5%+消費税 |
200万円超400万円以下 | 売買金額×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買金額×3%+6万円+消費税 |
例えば、売買金額1,000万円なら「1,000万円×3%+6万円=36万円(税抜)」が仲介手数料の上限となるのです。
なお、2024年7月1日より、売買金額800万円以下の取引については、不動産会社は一律で30万円(税抜)の仲介手数料を請求することが可能になりました。
ただし、上記仲介手数料を適用するには、事前に当事者同士(不動産会社と売主)が合意している必要があります。
仲介手数料の相場は法律の上限額
法律で定められているのは上限のみで、下限についてのルールはありません。
そのため、不動産会社は上限の範囲内であれば自由に設定することが可能です。
とはいえ、仲介手数料は不動産会社にとって重要な利 益でもあり、それ以外に売主・買主から費用を請求することは原則ありません。
そのことから、ほとんどの不動産会社は上限額で仲介手数料を設定しています。
仲介手数料の相場を考える際には、上限額でシミュレーションしておくとよいでしょう。
仲介手数料無料など値切る交渉はできる?
仲介手数料は、売買費用の中でも高額になるため、少しでも抑えたいところです。
実際、値引き交渉はできるのでしょうか。
交渉はできる
値引き交渉が違法になることはなく、交渉自体は自由に行えます。
前述のとおり、仲介手数料は上限の範囲内で自由に設定できるため、交渉によっては値引きに応じてくれる可能性もあるでしょう。
なお、値引き交渉のタイミングは、媒介契約前が適切です。
そうすることで、媒介契約時には仲介手数料を決めて契約でき、お互いに安心して取引を進めやすくなります。
また、媒介契約前であれば不動産会社も契約のために交渉に応じてくれる可能性もあるでしょう。
断られる可能性は高い
交渉の余地があるとはいえ、不動産会社が交渉に応じてくれないことも多いでしょう。
仲介手数料は不動産会社にとって利益であり、当然値引きすることで利益は減少します。
仲介手数料には、売買までの広告活動や契約手続き、人件費などの必要経費も含まれているので、値引きすることは不動産会社にとって不利益になりかねません。
そのような理由もあり、値引き交渉に応じてくれないケースがほとんどであることは覚えておきましょう。
また、値引き交渉することが売却時にデメリットとなる可能性もあるので、注意が必要です。
値引き交渉するデメリットは、次で詳しく解説するので参考にしてください。
仲介手数料を値引きするデメリット
仲介手数料の値引きに応じてもらえたとしても、以下のようなデメリットが生じる恐れがあります。
- 不動産会社が積極的に動いてくれなくなる可能性がある
- トータルで手元に残るお金が少なくなる可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
不動産会社が積極的に動いてくれなくなる可能性がある
値引きすることで不動産会社の利益が少なくなるため、営業の優先度が下がる恐れがあります。
担当者からしても、仲介手数料が下がれば営業成績に響く可能性もあり、モチベーションの低下につながりかねません。
同時期に他に仲介手数料を満額取れる案件があれば、そちらの優先度が高くなるのはある意味当然といえるでしょう。
トータルで手元に残るお金が少なくなる可能性がある
不動産会社が積極的に動いてくれないと、結果として売却に悪影響が出るおそれがあります。
仲介手数料を値引きするということは、その分どこかの経費を削減する必要があるため、広告費が削減される可能性もあるでしょう。
適切な営業活動や広告は不動産売却で重要なポイントであり、削減されると売却がうまくいかなくなります。
値引き交渉することで売却費用が安くなっても、結果的に手元に残るお金が少なくなってしまうのです。
例えば、仲介手数料を上限払ってで3,000万円で売却した場合と、1.5%に値引いてもらって2,500万円で売却した場合をみてみましょう。
- 3,000万円で売却した場合の仲介手数料(3%):96万円(税抜)
- 2,500万円で売却した場合の仲介手数料(1.5%):43.5万円(税抜)
仲介手数料自体は値引いてもらった方が大幅に削減できますが、売却額が500万円下がると、値引き額以上に売却額がマイナスになっています。
仲介手数料を抑えることに固執すると、トータルでマイナスになる恐れがある点は覚えておきましょう。
仲介手数料の値引き交渉を成功させるコツ
どうしても値引き交渉したい場合は、以下のコツを押さえると交渉成立の可能性を高めることができます。
- 両手仲介を狙う
- 専属専任媒介契約で契約する
- オンライン専門の不動産仲介会社を選ぶ
- 期間限定で割引サービス・キャンペーンを実施している不動産会社を選ぶ
それぞれ解説します。
両手仲介を狙う
両手仲介とは、一社の不動産会社が売主・買主双方と契約している状態です。
一方、売主・買主どちらかしか契約していないケースは片手仲介と呼ばれます。
両手仲介であれば、不動産会社は売主・買主の両方から仲介手数料を得られるので、利益が最も大きくなります。
そのため、多少値引いても利益が出やすく、交渉に応じてくれる可能性があるのです。
専属専任媒介契約で契約する
不動産会社との媒介契約には、以下の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約できる形態です。
不動産会社は、契約しても仲介手数料を得られない可能性があるうえ、値引きすることでメリットがなくなることから、値引き交渉はほぼ通らないでしょう。
一方、専任媒介契約・専属専任媒介契約であれば、不動産会社1社のみとしか契約できません。
とくに、専属専任媒介契約は自己発見取引(売主が自分で見つけた買主と取引)もで きないため、確実に仲介手数料が手に入る形態です。
そうしたこともあり、専任媒介契約や専属専任媒介契約は一般媒介契約に比べると、仲介手数料の値引き交渉に応じてくれる可能性が高いといえます。
オンライン専門の不動産仲介会社を選ぶ
オンライン専門の不動産仲介会社は、広告費や人件費を削減しやすいため、そもそもの仲介手数料が低いケースが多いです。
最初から仲介手数料半額などに設定されている不動産会社であれば、交渉せずとも仲介手数料を抑えられます。
ただしなかには、集客のために仲介手数料を安く設定し、売却力が伴わない不動産会社もあります。
仲介手数料が安い理由や販売実績などをしっかり確認し、納得したうえで不動産会社を選ぶことが大切です。
期間限定で割引サービス・キャンペーンを実施している不動産会社を選ぶ
不動産会社によっては、割引サービスやキャンペーンによる仲介手数料の値引きを受けられる場合があるので、その期間を狙うのも一つの手です。
また、以前売却で利用したことのあるリピーターや、利用者の紹介などでも特典として値引きを受けられるケースがあります。
検討している不動産会社のキャンペーンや特典なども事前にチェックするとよいでしょう。
不動産売買で仲介手数料の値引き以外で手元に残るお金を多くするポイント
手元に残るお金を多くする方法は、仲介手数料の値引き以外にもいくつかあります。
ここでは、値引き以外で手元に残るお金を多くするポイントとして以下の3つを紹介します。
- 内見前に徹底的に清掃する
- 仲介手数料以外の諸経費を見直す
- 信頼できる不動産会社を見つける
それぞれご紹介します。
内見前に徹底的に清掃する
買主候補者が購入前に物件を確認する「内見」は、購入判断の大きなポイントです。
内見時に良い印象を与えられればそのまま売却につながる可能性が高くなり、反対に印象が悪ければ売却につながらない恐れがあります。
内見を成功させるには、事前の徹底的な清掃が欠かせません。
また、清掃が行き届いていないと汚れを理由に値引き交渉を受ける可能性があります。
清掃しておくことで、売りやすくなるだけでなく値引き交渉の要因を減らせられるため、高値での売却が期待できるでしょう。
自分で徹底した掃除が難しいなら、ハウスクリーニングを検討することをおすすめします。
費用はかかりますが、水回りなどを部分的にでも綺麗にしておくことでイメージが上がるので、費用対効果を考えて検討するとよいでしょう。
仲介手数料以外の諸経費を見直す
不動産売却では、仲介手数料以外にも以下のような費用がかかります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- リフォーム費用
- ハウスクリーニング費用
- 引っ越し費用
- 住宅ローン完済費用
- 司法書士費用
- 測量や解体費用など
税金については自身の努力で削減するのは難しいですが、他の費用は見直すことで削減できる可能性があります。
例えば、リフォームや解体を検討する場合も、事前に不動産会社に相談し、実施するか必要最低限にとどめるかを 判断した方がいいでしょう。
ハウスクリーニングも、サービスとして提供している不動産会社を選んだり、自分でできるだけ掃除して依頼する箇所を減らすことで費用の削減が可能です。
一般的に、売却にかかる費用は仲介手数料を含めた売却額の5~10%程と言われています。
仮に、3,000万円で売却した場合、150万円~300万円が費用としてかかるのです。
事前に、どのような項目でいくら費用がかかるのかを明確にし、一つ一つ見直していくとトータルで大幅な削減ができる可能性があります。
信頼できる不動産会社を見つける
手元に残るお金を多くするには、高値で売却することが重要です。
少しでも高値で売却するには、信頼でき、かつ販売力のある不動産会社を選ぶ必要があります。
信頼できる不動産会社であれば、諸経費の削減についてもアドバイスをくれるでしょう。
不動産会社によって得意分野やエリアは異なり、査定額も大きく異なってきます。
できるだけ多くの不動産会社を比較して、信頼できる不動産会社を選ぶようにしてください。
仲介手数料の相場に関するよくある質問
最後に、仲介手数料の相場に関するよくある質問をみていきましょう。
中古マンションと土地や戸建てで仲介手数料の相場は変わる?
不動産の種類によって仲介手数料の上限額が変わることはありません。
そのため、基本的にはどの不動産であっても上限が相場となるでしょう。
賃貸の仲介手数料の相場はいくら?
賃貸の仲介手数料は、以下のようなルールが設けられています。
- 貸主・売主それぞれから家賃の0.5ヶ月分ずつ、合計家賃1ヶ月分が上限
- 了承を得ることでどちらか一方から1ヵ月分請求することも可能
一般的には、借主が1ヵ月分負担し、貸主が負担しないケースが多くなっています。
まとめ
不動産売買の仲介手数料は「売買金額×3%+6万円+消費税」が上限額であり、相場といえます。
交渉することで値引きしてもらうことも可能ですが、それにより不動産会社が積極的に営業してくれないなどのデメリットが生じる恐れがあります。
売却で、より多くのお金を手元に残すなら、仲介手数料の値引きにこだわるより、信頼できる不動産会社で高値で売却するのがもっとも効率的です。
仲介手数料の額にとらわれず、高く売却してくれる信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。