マイホームを購入するために住宅ローンの手続きを進めていると「金消契約(きんしょうけいやく)」という言葉を目にすることになるはずです。
聞き慣れない用語なので「金消契約ってなにをするの?」「この契約は絶対に結ばないとだめなの?」といった疑問や不安を抱えている人もいるでしょう。
そこで、当記事では金消契約の意味や流れ、注意点などを初心者にもわかりやすく解説します。
そもそも「金消契約」とは?
金消契約を簡単に説明すると、金融機関と正式にお金の貸し借りを約束するための契約のことをいいます。
金消契約の正式名称と意味
「金消契約」は「金銭消費貸借契約(きんせん しょうひ たいしゃく けいやく)」の略称です。
金消契約を簡単に説明すると「住宅ローンを正式に借ります。その代わり、決められた金額・期間・利息でちゃんと返します」という最終的な契約を文書で交わすことを目的としています。
金消契約を結ぶ理由とは
住宅ローンの金消契約を結ぶ最大の理由は、借入条件を金融機関と正式に取り決めて、お互いの責任や権利を明確にするためです。
住宅ローンの審査に通った段階では「お金を貸しても良いと判断した」という状態。ここから実際にお金を借りるには、金消契約の内容を決めて条件を明確にする必要があります。
金消契約の契約書には、主に以下のような内容が含まれます。
- 借入金額・適用金利・返済期間
- 毎月の返済額・ボーナス返済の有無
- 返済方法(元利均等・元金均等)
- 繰上返済の条件・手数料
- 団体信用生命保険の加入条件
- 担保や保証の取り扱い
これらの内容を契約書に明記することで、住宅ローンの契約が法的に有効であることを証明し、トラブルを未然に防ぐ意味があります。
金消契約はいつ行われる?
金消契約は、住宅ローンの本審査に通過したあと、融資が実行される前のタイミングで行われます。
このタイミングで契約を行う理由は、住宅ローンを借入れる条件がすべて決まった状態でなければ、正式な契約を結ぶことができないためです。
金消契約の日程は金融機関と顧客との間で事前に調整されるのが一般的。契約当日は、金融機関の店舗や不動産 会社の事務所で手続きが行われます。
手続きに1〜2時間ほどかかるため、融資が実行される日に合わせて早めに予定を立てる必要があります。
金消契約の手続きの流れと必要な準備
金消契約の意味や役割を理解したら、次に気になるのが「実際にどのような流れで行われるのか」「どんな書類が必要になるのか」ではないでしょうか。
以下では、金消契約を結ぶまでの大まかな流れや準備しておくべき書類などについて詳しく解説します。
金消契約までの大まかな流れ
住宅ローンを申し込んで実際にお金を借りるまでには、段階を踏む必要があります。
金消契約は最終段階に位置する手続きですが、そこに至るまでの全体像を把握しておくと手続きがスムーズになります。
①事前審査(仮審査)の申込み
まずは、希望する金融機関に事前審査を申し込みます。年収や勤務先、借入希望額などの情報をもとに「この人にいくらまで貸せるか」がチェックされます。審査期間は通常2〜3営業日です。
②物件の売買契約
事前審査に通ったら、購入する物件を決定して売主と売買契約を結びます。ここでは「手付金」を支払うこともあります。
③本審査の申込み
売買契約を結んだら、住宅ローンの本審査に進みます。事前審査よりも必要書類が必要になり、詳細なチェックが行われます。審査期間は通常1〜2週間程度です。
④金消契約(本契約)の締結
本審査に通過したら、いよいよ金融機関と正式に「お金を借りる契約(金銭消費貸借契約)」を結びます。これが「金消契約」です。
⑤融資実行・物件の引き渡し
金消契約を結ぶと、金融機関が指定日に融資を行います。売主にローンの借入金が支払われると同時に物件の引き渡しが行われます。
金消契約当日の手続きの流れ
本審査の結果が通知されたあと、金融機関の担当者から金消契約の日程調整の連絡が入ります。
基本的に契約は、住宅ローンを申し込んだ金融機関の店舗か、提携している司法書士事務所で行われるのが一般的です(ネット銀行の場合は、WEBまたは郵送で手続きするケースもある)。
契約が完了するまで1時間ほどかか るため、余裕を持ってスケジュールを組んでおくことをお勧めします。
当日は、以下の流れで手続きが行われます。
- 本人確認と必要書類の提出
- 契約内容の説明
- 契約書への署名・押印
- 団体信用生命保険(団信)への加入手続き
- 今後のスケジュールの説明
金消契約は書類にサインをするだけでなく、住宅ローンの契約について内容の確認と責任の所在を明確にする重要な機会です。不明な点が少しでもあるなら、遠慮せずにどんどん質問していきましょう。
必要書類と持ち物の一覧
金消契約を結ぶ際は、以下の書類などが必要になります。余裕をもってスケジュールを組んで、これらの書類等を忘れずに準備しておきましょう。
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
- 実印と印鑑証明書(発行後3か月以内)
- 住民票(家族全員の記載があるもの)
- 金融機関の通帳・届出印(振込口座)
- 売買契約書の原本
金融機関や住宅ローンの種類によっては、上記以外の書類が求められることもあります。
担当者から必要書類のリストなどを渡されることもあるため、それらをチェックしながら準備しましょう。
不明な点がある場合は、早い段階で担当者に問い合わせておくことをお勧めします。
金消契約を結ぶ際に押さえておきたいポイント
金消契約を結ぶ段階までくれば、マイホームの購入まで目前です。しかし、ここで借入の条件を聞き逃したり、条件に合わないことをしてしまうと、最悪の場合は融資が取り消される恐れもあります。
そこで以下では、金消契約を結ぶ際に必ず確認しておきたいポイントや注意点を分かりやすく解説します。
契約後にキャンセルできるかチェックする
金消契約は、金融機関との間で交わされるれっきとした契約です。この契約書に署名・捺印するということは、住宅ローンの内容や条件に同意したとみなされ、法的な効力を持つ状態になることを意味しています。
そのため、基本的に契約後は一方的にキャンセルすることはできません。
契約の内容をしっかり確認せずに署名してしまうと「思っていた条件と違っていた」「費用が予想以上に高かった」といった事態に引き起こす恐れも。
ただし、病気や災害など、やむを得ない事情がある場合は、金融機関と相談することで契約の解除が可能となるケースもあります。
また、金消契約を結んだ後でも、融資が実行される前であればキャンセルしてもらえる場合もあります。
一方で、キャンセルしたからといって白紙に戻るわけではないため、手付金の放棄や違約金が発生する恐れがあります。
金消契約後のキャンセルで損をしないためにも、以下の点をしっかり確認しておきましょう
- 住宅ローンの内容や条件に納得できているか
- 金消契約後のキャンセルや変更が可能か
- キャンセルになった場合に費用がかかるか
住宅ローンは長期にわたる契約です。万が一のこ とが起きてからでは遅いので、勢いで署名せずに不明な点は必ず質問・確認しましょう。
カードローンの新規契約は控える
金消契約を結んだあとは、金融機関から融資が実行されるのを待つだけです。ここまでくれば夢のマイホームを手に入れるまで目前です。
しかし、住宅ローンの借入が確定したからと言って、金融機関が申込者の信用情報をチェックしないとは限りません。
もしかすれば、現段階の信用情報を最終確認する可能性がゼロではないのです。
この期間に新たにカードローンを契約したり、クレジットカードのキャッシング枠を増やしたりすると、借金が増えたと金融機関に判断される恐れがあります。
その結果「返済負担率」が上がったとして、融資を取り消されるかもしれません。
「返済負担率」とは、年収に対する年間返済額の割合をいいます。金融機関では返済負担率の高さを審査の指標のひとつとしている場合がほとんど。
金消契約後に新たにローンを組んで返済負担率が上がると、金融機関が申込者の返済能力に問題があると判断する可能性があります。
万が一のトラブルを防ぐためにも、以下の点に注意しましょう。
- 融資が実行されるまでは新たな借入を控える
- クレジットカードの申し込みやキャッシングを避ける
- すでにある借入を完済するか極力減らしておく
金消契約を終えたからといって油断をするのはNG。融資が行われるまでは、問題を起こさないように慎重に行動しましょう。
転職や退職は融資実行まで避ける
住宅ローンの審査で最も重視されることのひとつに、収入の安定があります。
住宅ローンは30~35年もの長い期間、無理なく返済を続ける必要があります。そこで求められるのが安定した収入です。
金消契約が済んだからといって、このタイミングで転職や退職をすると、金融機関から「収入が不安定になった」と判断されかねません。
最悪の場合、融資の取り消しや条件変更に繋がるため、融資が実行されるまでは以下のような行動は極力控えましょう。
- 転職して勤続年数をリセットする
- 正社員から契約社員・派遣社員になる
- 自営業や個人事業主に転身する
- 退職して無職の期間が発生する
転職や退職を検討している場合は、少なくとも融資が行われるまで一旦保留するのがベスト。どうしても避けられない事情がある場合は、必ず金融機関に相談して状況を説明するようにしましょう。
金消契約時にかかる費用を確認する
金消契約の当日は、住宅ローンの借入れに関する様々な契約書にサ インをすることになります。さらに、それに伴って諸費用の支払いが発生することも多いため、事前にしっかり確認しておきましょう。
金融機関や住宅ローン商品によって、支払う金額やタイミングは異なります。一般的に、金消契約時やその直後に以下のような費用の支払いが発生します。
印紙代
金銭消費貸借契約書に貼付する印紙にかかる費用です。借入額によって異なりますが、通常は2万円程度が必要になります。
保証料または事務手数料
保証料型ローンなら保証会社に保証料の一括前払いが発生します。手数料型ローンでは定額の事務手数料が請求されます。
登記に関する費用
登記費用や司法書士への報酬が請求されることがあります。引き渡し時に一括で支払う、もしくは金消契約を結ぶ日に支払うケースもあります。
その他
住民票・印鑑証明書などの取得にかかった費用や、契約書の郵送・印刷関連費用が実費で発生することもあります。
こういった費用を一括で支払うと、数万円〜十数万円になることもあります。突然支払いを求められても対応が難しくなるため、金消契約前に「いつ・いくら必要か」を金融機関に確認しておきましょう。
事前にどれだけのお金が必要か把握しておくことで、慌てることなくスムーズに手続きを進められます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、金消契約についての基礎知識を解説しました。
金消契約は、住宅ローンの本審査に通過後に交わすことになる最後の契約です。ここでお金を借りる条件に同意することで、はじめて融資が実行されます。
ここまで来ることができれば、夢のマイホームを手に入れるまであと一歩。
ただし、金消契約を交わして融資が行われるまでは油断は禁物です。何故なら、以下のような行動をとることで、契約が取り消されたり希望額から減額される恐れがあるからです。
- 融資が実行されるまでは新たな借入を控える
- クレジットカードの申し込みやキャッシングを避ける
- すでにある借入を完済するか極力減らしておく
- 転職や退職は融資が実行されるまで控える
また、契約書を交わす当日は、必要となる書類を忘れないように注意しましょう。金消契約には次のような書類等が必要になります。
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
- 実印と印鑑証明書(発行後3か月以内)
- 住民票(家族全員の記載があるもの)
- 金融機関の通帳・届出印(振込口座)
- 売買契約書の原本
手続きには数万円から数十万円の費用もかかります。当日になって慌てないためにも、事前に担当者に確認しておくことをお勧めします。
金消契約を結んだあと、指定した口座にお金が振り込まれたら数十年にわたって返済を続けなければいけません。
この段階で内容を理解しないまま契約を進めると、後々思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあります。
万が一の事態を引き起こさないためにも、不明な点があったら遠慮せず担当者に相談しましょう。