マンションを購入すると、毎月の支払いとして管理費や修繕積立金が必要になります。
「管理費って何?」「他のマンションより高いけど妥当なの?」そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
管理費や修繕積立金は、毎月支払はなければならないので費用の負担は大きいものです。
しかし、その費用が何に使われ、妥当な金額なのか知っている方は少ないでしょう。
管理費や修繕積立金の意味や相場・値上がりのタイミングなど理解しておかないと思わぬ支出に苦労する場合もあるのです。
本記事では、管理費・修繕積立金の相場や値上がりの理由・タイミングについて分かりやすく解説します。
▼管理費・修繕積立金の相場(2023年時点の平均額)
- 管理費の全国平均:17,103円
- 修繕積立金の全国平均:13,378円
マンションの管理費・修繕積立金とは?
マンションを購入すると、毎月の支払いは住宅ローンだけではありません。
管理費や修繕積立金といった住宅ローン以外の費用も必要になるのです。
毎月支払っている管理費・修繕積立金ですが、そもそも何に使われているのか理解している方はあまり多くはありません。
「管理費と修繕積立金の違いがわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
どちらもマンションの維持管理のための費用であり同じように思われるものですが、それぞれ明確な違いがあります。
大まかには、次のような違いがあります。
- 管理費:共有部分の日常管理のための費用
- 修繕積立金:修繕のために積み立てられる費用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
管理費
管理費とは、エントランスや廊下・エレベーターなどの共有部分を良好な状態に管理するための費用です。
具体的には次のようなことに使われます。
- 共有部分の掃除や保守点検
- 共有部分の電気代や水道光熱費・火災保険料
- 植栽の管理
- 電灯などの共有部分の消耗品費用
- 管理会社や清掃会社への業務委託費用
- 管理員の人件費
上記のように、共有部分の日常の生活を快適にするために利用されるのが管理費です。
修繕積立金
修繕積立金は、修繕のために積み立てる費用のことです。
マンションは、一般的に15年~20年程度の周期で大規模修繕が実施されます。
この大規模修繕では、外壁の塗り替えや屋根・給排水管交換などマンション維持のための修繕やリフォームが行われる ものです。
また、大規模修繕以外でも、駐車場やポストの増設というような共有部分の大規模な変更、地震や風水害などの天災による損傷の修繕にも、この積立金が利用されます。
修繕積立金は、マンションを維持するための大規模なメンテナンスのための費用となるのです。
管理費・修繕積立金の相場はどのくらい?
マンションの管理費・修繕積立金は法的な決まりはなく、マンションごとに異なります。
「隣接するマンションのほうが安い」ということはよくあることなのです。
マンションごとに異なるため、物件によって大きく開きがありますが、金額の決め方やある程度の相場はあります。
なお、こ管理費や修繕積立金は一概に安いからいいというわけではありません。
マンションの維持管理には、ある程度の費用が必要です。
安すぎる場合は、毎月の負担が減りメリットがあるように感じますが、適切なマンション管理ができていない場合があるので注意しましょう。
金額の決まり方や相場を知ることで、適切な価格を見極められるようになるのです。
管理費の相場
国土交通省の資料によると、2023年時点でのマンション管理費の全国平均は17,103円という結果が出ています1。
管理費はマンションの日常 的な管理に使われるお金です。
通常、マンションの管理は「住民自治」となるため、住んでいる人で管理しなくてはなりません。
しかし、実際に日常的な管理を住民で行っているというマンションはほとんどないでしょう。
管理費は何に使われているか
基本的にマンションの管理業務は管理会社などに委託し、管理員に任せているものです。
そのため、管理費の大半が委託会社や管理員への委託料や人件費として充てられます。
残りの費用で、共有部分の光熱水費や保守点検・消耗品購入などを賄っているのが一般的です。
大型マンションほど管理費は低くなる傾向にある
日常管理のための費用は、マンションの規模や資産価値・サービス内容によっても大きく異なります。
一般的に、戸数が多くなるほど住人が増え、費用を住人の人数で按分できるため管理費は低くなる傾向があるものです。
ただし、共有部分が充実しているマンションやジムやプールなどのついた高級マンションでは維持費がかさむため、管理費も高い傾向にあります。
戸数や階数が多く、共有部分がシンプルなマンションは管理費が安くなるといえるでしょう。
修繕積立金の相場
国土交通省によると、修繕積立金の平均は13,378円という結果が出ています2。
また、修繕積立金額の決定方法では「長期修繕計画で算出された必要額に基づく決定」と答えたマンションの割合が多いという傾向もあるのです。
修繕積立金は、一般的に将来の修繕計画を見越し、必要な額から逆算して設定されています。
修繕積立金の目安
国土交通省は、修繕積立金の平均額目安として次のような価格をガイドラインで示しています3。
階数/建築延床面積 | 平均額/㎡・月 | |
20階未満 | 5,000㎡未満 | 335円 |
5,000㎡以上10,000㎡未満 | 252円 | |
10,000㎡以上20,000㎡未満 | 271円 | |
20,000㎡以上 | 255円 | |
20階以上 | 338円 |
修繕積立金も管理費用同様、マンションの戸数や規模などによって大きく金額に差があります。
一般的には、戸数が多いほど一戸当たりの負担を減らせられるため、費用は安くなるものです。
また、規模が大きいマンションでは、大規模修繕費用自体は高額ですが、資材などの大量発注で単価を落とせるので、費用の負担を軽減できる場合があります。
ただし、管理費用同様、共有部分の設備が充実していると、費用負担が増える傾向もあるものです。
高層マンションの修繕積立金は高額なことがある
また、階数が多いマンションも外壁修繕の費用が高くなるため、費用が増えるでしょう。
長期修繕計画はいつ・どこを修繕するのかが計画されているので、ある程度費用の見当がつきやすいものです。
しかし、修繕積立金は天災などの計画できない修繕にも使われる費用でもあります。
そのため、長期修繕計画費用にやや余裕を持たせて積み立てられているのが一般的です。
▼関連記事:タワマンの管理費・修繕積立金は高額?購入後に後悔しないためのチェックポイントを解説
修繕積立金は値上がりする可能性がある?
修繕積立金は、毎年同じ価格というわけではありません。
一定の期間で価格が見直され、値上がりする可能性があるのです。
値上がりの大きな要因としては、修繕積立金の積立方法が関係します。
修繕積立金の積立方法は次の2種類です。
- 均等積立方式
- 段階増額積立方式
均等積立方式では、マンションが生涯必要な修繕費用を算出し、均等な積立金を支払うことを言います。
修繕計画が実施されるまでは、どの段階でマンションを購入しようとも負担額が変わらないというメリットがある方法です。
一方、段階増額積立方式では段階的に積立金がアップしていく方法のことを言います。
築年数が古くなるほど修繕に必要な金額が高くなる
積立金額が値上がりするのは、段階増額積立金方式を採用している場合です。
この方法は、購入者が購入時点で必要な修繕費用を負担するという考えで運用されています。
そのため、築年数の浅いマンションでは修繕積立金が安い傾向があります。
5年~10年を目途に修繕積立金の見直しが行われる
ただし、初期は安い積立金も築年数が経つにつれ徐々に値上がりしていくのです。
一般的には、5年や10年を目処に、修繕積立金の見直しが行われます。
築年数が古いマンションは、それだけ修繕に掛かる費用が高額になるため、必要な修繕費用に合わせて修繕積立金も高くなります。
多くのマンションで、この段階増額積立金方式を採用しているので、築年数に応じて修繕積立金が値上がりしていくのです。
長く住み続ける場合は維持費が上がることを頭に入れておく
将来的に売却や住み替えを検討しているのであれば、長期的に値上がりしても問題ないでしょう。
しかし、永住を考えているのであれば、この方式では後々の負担が大きくなる可能性が高いです。
入居時は安い修繕積立金も、後々大幅に値上がりする可能性があるので注意が必要です。
長期修繕計画を確認しよう
修繕積立金を使用する大規模な修繕は、長期修繕計画で定められています。
修繕計画の前後では、修繕積立金の増額や一時金の徴収の可能性があるので、事前に計画を確認しておくとよいでしょう。
管理組合の決議で修繕積立金の額が変更になることもある
修繕積立金の額の変更は、管理組合が一方的に決めて実施できるものではありません。
通常は、管理組合による普通決議で協議ののち、一定の参加者の賛成が必要となるのです。
必要となる賛成票は以下の通り。
- 住民である区分所有者による議決権の過半数の賛成
ただし、管理組合によっては修繕積立金の変更方法について決議以外での方法を定めている場合もあるので、マンションの管理規約を確認しましょう。
修繕積立金が上がりやすい3つのタイミング
修繕積立金が値上がりするタイミングとして多いのが次の3つです。
- 長期修繕計画に定められたタイミング
- 大規模修繕等で積立金のプールが減ったタイミング
- 築年数が古くなったタイミング
長期修繕計画に定められたタイミング
修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて算出されています。
長期修繕計画には、大規模修繕工事の時期や必要な費用・積立額などが定められており、この計画は定期的に見直されているものでもあります 。
その見直しのタイミングで、工事費用や積立状態に変更があると修繕積立金が値上がりする可能性があるのです。
大規模修繕等で積立金のプールが減ったタイミング
大規模修繕計画が実施されると、それまで積み立てた金額が大きく減少します。
その状態からまた次の修繕計画に向けて積み立てをスタートするので、積立額が大きく減少した後は値上がりしやすいと言えるでしょう。
なお、費用が高額になる修繕工事は、経年30~40年付近で実施されるケースが多いです4。
台風や地震などで建物が損壊した場合、修繕積立金が使われることがある
また、修繕積立金は天災など計画外の修繕にも充てられるものです。
地震で大きく損壊して予定外の修繕費用が掛かってしまった、などで大規模修繕のための積立金が不足した場合は値上がりする可能性があるでしょう。
注意しなければならないのが、修繕積立金の徴収が上手くいかずに積立計画を下回っている場合です。
必要な修繕費用が賄えない場合、大規模修繕前に一時金として不足額を徴収する場合もあります。
積立額が修繕計画に対して不足しているマンションは多い
国土交通省の調査によると、修繕積立金の額が計画に対して不足しているマンションは36.6%にも上るという結果も出ています(2023年)。
なお、2018年時点では34.8%が不足していると回答していました。
昨今の物価高などを受け、修繕にかかる費用等も増加傾向にあるので、今後はマンションの修繕が計画通りに進まないケースが増えていくかもしれません。
積立金の不足が原因で、一時金の徴収や値上げの可能性があることに注意しておきましょう。
積立金の徴収状況は決算書などで確認できます。
購入前には、積立金の状況にも注目して判断する必要があるのです。
築年数が古くなったタイミング
築年数が古くなると、修繕積立金が大きく値上がりする可能性が高くなるものです。
また、築年数が古い物件では入居者も高齢になり修繕積立金が足りていない場合もあります。
修繕積立金が足りずに大規模修繕工事ができない場合、マンションの維持ができないものです。
老朽化対策の大規模修繕工事ができない場合、生活に支障が出るだけではありません。
マンションが老朽化し入居者が減り、さらに積立金が不足するという負の連鎖が生まれてしまうのです。
修繕積立金は、値上がりしなければ月々の負担が少ないのでメリットが多いように感じます。
しかし、適切な修繕積立金が積み立てられていない場合、マンションの維持ができない場合があるので注意しましょう。
マンションの売却に適したタイミングは?
管理費と修繕積立金は毎月の大きな負担となります。
さらに、値上がりしてしまうと負担に耐えられないという場合もあるでしょう。
その場合は、修繕積立金の値上がりのタイミングで売却するのも一つの手です。
売却に適したタイミングには次のような場合があります。
- 長期修繕計画で定められた値上げの前
- 大規模修繕の実施前
長期修繕計画で定められた値上げの前
長期修繕計画では、修繕計画に基づいて修繕積立金の値上げのタイミングも計画されています。
修繕積立金が値上がりした後では、自分が支払う負担が増えるだけでなく、売却する場合でも買い手がなかなかつかないというケースもあるものです。
長期計画を確認することで値上げのタイミングが分かるので、その前に売却してしまうとよいでしょう。
大規模修繕の実施前
大規模修繕の実施前には、積立金だけでは不足する分を一時金や毎月の積立金に上乗せして徴収する場合があります。
また、修繕工事が実施されると次の大規模修繕に向けて値上がりする可能性も高くなることがあります。
大規模修繕の実施前に売却を検討すれば、修繕積立金の負担を少なくできるでしょう。

まとめ
マンションの管理費・修繕積立金の相場や値上がりについてお伝えしました。
毎月支払う管理費・修繕積立金はそれぞれ異なる目的のための費用であり、マンションによって金額は異なります。
また、常に一定ではなく値上がりする可能性もあるものです。
マンション購入時には、住宅ローンだけでなく管理費・ 修繕積立金の費用や値上がりも考慮して検討する必要があります。
この記事を参考に、管理費・修繕積立金の相場や値上がりのタイミングを理解し、適切な金額で快適にマンション生活ができるようにしましょう。
