活用が難しそうな不整形地ですが、アイディア次第で十分活用が可能です。
しかし、形が特殊であることから家を建てる際には押さえておきたい注意点がいくつかあります。
この記事では、不整形地を活用した間取りのアイディアや家を建てる際の注意点、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。
【不整形地の形状別】間取りの実例・アイディア
土地の形状は、正方形や長方形に整えた土地である「整形地」と、それ以外の形状である「不整形地」の2種類に分かれます。
不整形地は整形地よりも活用できる面積が限定されやすく、また、間取りや家の大きさも制限を受けやすい土地です。
しかし、不整形地でも土地の形状に合わせた工夫で上手に活用できます。
ここでは、代表的な不整形地である「三角形」「旗竿地」「台形」「平行四辺形」の土地で家を建てる場合の、間取りのアイディアを紹介します。
三角形の土地
三角形の形をした土地は三角地とも呼ばれ、隅切りされた角地やY字路などでよく見られます。
三角形の土地は、デッドスペースとなる角の部分が大きくなりやすいことから、建物を建てる難易度は高くなりがちです。
ただ、デッドスペースを駐車場や庭として活用する・境界に沿って三角形の家を建てるなどで活用できます。
たとえば、以下のような間取りが検討できるでしょう。
- 三角形の頂点部分を玄関にして奥に広がる間取り
- 角の部分を収納スペースにする間取り
- 角の部分にウッドデッキやバルコニーを設ける間取り
- 各部屋を扇形に配置する
三角形の土地でも、土地の形状に沿った建物にすることで、個性的でスタイリッシュな家にもできます。
ただし、土地に沿った形状にすると、室内で家具の配置がしにくくなる点には注意しましょう。
旗竿地
旗竿地とは、間口から細い通路のような路地が奥へ伸び、その先にまとまった敷地がある形状の土地です。
真上から見ると、竿に旗を指した形状に見えることから、旗竿地と呼ばれています。
旗竿地は、奥まった敷地に家を建てることで、道路からの視線を遮りやすく、静かな住環境を実現しやすいというメリットがあります。
一方で、周りを隣家に囲まれやすく、日当 たりや風通しを確保しにくい点には注意が必要です。
旗竿地は日当たりが良くないケースが多いため、日あたりを確保できる間取りを検討するとよいでしょう。
- 細い路地部分を駐車場や庭・アプローチとして活用し、奥のまとまった敷地に家を建てる
- 2階部分にリビングを設けて日あたりを確保する
- 中庭を設ける
台形の土地
台形の土地とは、その名の通り台形の形状をした土地です。
一口に台形と言っても、長方形に近く比較的活用しやすいものから、短辺が極端に短く三角形に近いものまで、さまざまな形状があります。
しかし、三角形に比べると、たとえ三角形に近い土地でもデッドスペースは少なくなりやすく、間取りの選択肢も増えやすくなるでしょう。
とはいえ、多少なりともデッドスペースは生じやすいので、そのスペースをどのように活用するかを検討することが大切です。
台形の土地でおすすめの間取りは以下のようなものがあります。
- 建物を敷地の中央に配置しデットスペースは庭や駐車場で活用する
- 台形の形状に沿って「くの字」や「L字型」に部屋を配置する
平行四辺形の土地
平行四辺形の形をした土地は、角度と一辺の長さによっても使い勝手が大きく変わります。
角度が小さく長方形に近ければ活用しやすく、反対に角度が大きいとデットスペースが生じやすくなります。
平行四辺形の土地も、角のデットスペースの活用方法を検討することが大切です。
- 角部分に駐車場や庭を設ける
- 角部分にテラスやバルコニーを設ける
- 建物をギ ザギザが連続する雁行配置にする
不整形地に家を建てる際の注意点
不整形地は、整形地と比べ形状が特殊なことから、家を建てる際にもいくつか注意点があります。
ここでは、不整形地に家を建てる際の注意点として以下の3つを解説します。
- 家を建てるための規制をクリアできるか確認する
- 境界が確定されているか確認する
- 造成費用がどの程度かかるか把握する
家を建てるための規制をクリアできるか確認する
家を建てる際には、建築基準法や都市計画法などの規制をクリアする必要があります。
不整形地はそれらの規制の影響を受けやすく、希望の間取りで家を建てられない可能性もあるので注意が必要です。
たとえば、代表的な制限に接道義務があります。
接道義務とは、建物を建てるために、土地が道路に2m以上接していることが求めらる規定です。
しかし、旗竿地など間口が狭くなりやすい不整形地では、接道義務を満たせず建物を建てられない恐れがあります。
また、角がある不整形地などでは、建物を建てられないスペースが生じやすく、建ぺい率や容積率を最大限活用できないケースもあるので注意しましょう。
不整形地を購入する際には、あらかじめハウスメーカーなどにどのような建物が建てられるのかを確認することが大切です。
境界が確定されているか確認する
不整形地は、境界線がいびつな形をしやすいだけでなく、境界自体が確定していないケースもあります。
境界線が確定していないと、購入後に隣地の所有者と敷地を巡ってトラブルになりかねません。
そのため、購入時には境界線が確定しているかをきちんと確認することが大切です。
もし確定していない場合は、確定測量などの手続きを行い、事前に境界を明確にしておきましょう。
造成費用がどの程度かかるか把握する
不整形地は、その形状や地盤の強度によって、建物を建築するために造成費がかかりやすくなる場合があります。
たとえば、不整形地の1つである傾斜地では高低差があるため、そのままでは建物が建築できません。
建物を建てるためには、盛土や切土の工事や、擁壁の設置などが必要となり、費用も高くなりがちです。
不整形地は比較的安く購入できるというメリットがありますが、造成などに費用がかかる点には注意が必要です。
そのため、購入を検討する際には、土地の価格だけでなく造成費などを含めたトータルの費用を考慮しましょう。
不整形地に家を建てるメリット
不整形地はデメリットに目が行きがちですが、メリットも多くあります。
ここでは、不整形地に家を建てるメリットとして以下の3つをみていきましょう。
- 土地を取得する際の坪単価を安くしやすい
- 空いた土地を住宅用地以外の方法でも活用できる
- 固定資産税評価額や相続税評価額が安くなりやすい
それぞれ解説します。
土地を取得する際の坪単価を安くしやすい
不整形地は活用が難しいことから需要が低く、整形地よりも土地の価格が安くなります。
土地購入費用を抑えられれば、家全体の購入費用を抑えることや、浮いた分を建物に充てることが可能です。
また、同じ予算でも不整形地なら整形地より面積を広くしたり、良い立地の土地を選んだりすることもできるでしょう。
空いた土地を住宅用地以外の方法でも活用できる
敷地内に建物を建てられない部分があっても、そのスペースは建物以外の用途に活用することが可能です。
たとえば、駐車場や家庭菜園、BBQスペース、子供の遊び場など、趣味や暮らしに合わせた使い方にできます。
また、建物を建てられないスペースがある分、実際に建てる部分の敷地に対して建ぺい率・容積率が活用されるため、建物を大きくすることが可能です。
仮に、有効活用できる土地面積100㎡のとき、容積率が100%なら延床面積100㎡の建物が建てられます。
この時、整形地なら土地全体に対して100㎡です。
一方、旗竿地で間口から伸びた細い敷地が20㎡、奥にあるまとまった敷地が80㎡で100㎡なら、まとまった敷地80㎡に対して延 べ床面積100㎡の建物を建てることができます。
このように、有効活用できる面積に対して建物を大きくしやすいのは不整形地のメリットと言えるでしょう。
固定資産税評価額や相続税評価額が安くなりやすい
不整形地は活用に制限があるため、固定資産税評価額や相続税評価額が整形地よりも低くなる傾向があります。
固定資産税評価額は毎年課税される固定資産税の算出基準となる価格なので、評価額が低ければ固定資産税や都市計画税も軽減されます。
また、不動産を取得する際にかかる不動産取得税も、この固定資産税評価額をもとに算出されるため、取得時のコスト軽減が可能です。
一方、相続税評価額は相続税や贈与税を算出する基となる価格であり、評価額が下がれば相続時に負担する相続税の軽減が見込めます。
このように、不整形地は取得時や所有期間中の税負担を軽減できる点もメリットと言えるでしょう。
不整形地に家を建てるデメリット
不整形地は特殊な形状をしていることから、整形地と比較しデメリットも多くなります。
購入を検討する際にはデメリットまで理解しておくようにしましょう。
不整形地に家を建てるデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 活用しにくいことがある
- 売却しにくいことがある
- 外構費用や造成費用が高くなりやすい
それぞれ見ていきましょう。
活用しにくいことがある
整形地に比べて、有効活用できる面積が限定されやすい不整形地は、そのままでは活用しにくいケースも少なくありません。
活用するにしても、建物の大きさや間取りが制限されたり、建築費が高額になる恐れがあるでしょう。
また、不整形地を整形地にするために隣地を買い足す方法もありますが、その場合は土地購入費用が追加でかかります。
不整形地は活用が難しく、希望の間取りが実現できないケースもあるので、事前にハウスメーカーに相談し、希望の間取りが実現できるかを確認するようにしましょう。
売却しにくいことがある
活用しにくいという理由で、不整形地は売却時にも不利になりがちです。
売却しようとしてもなかなか買い手が付かず、値下げが必要になる恐れがあるでしょう。
売却するためには隣地を買い足す、隣地の所有者に売却を打診するなどの対策も必要になってきます。
また、活用しにくく売却もしにくい土地は、相続の際にも相続人に大きな負担を与える点にも注意が必要です。
▼関連記事:資産価値の高い土 地の特徴とは?価値を左右するポイントを徹底解説
外構費用や造成費用が高くなりやすい
先述のとおり、不整形地は建物を建てるための造成費用が高くなりがちです。
さらに、駐車場や庭などの外構費用も、特殊な形状から費用が高額になりがちなので注意しましょう。
不整形地の形状によっては、外構工事の際に設計費が増える、重機が使用できない、車の搬入が難しいなどで費用が上乗せされることがあります。
土地自体は安く購入できても、造成費用や外構費用が高くなり、トータルでは整形地とそれほど費用が変わらない恐れもあります。
購入を検討する際には、土地価格だけでなくトータルの費用までシミュレーションして検討することが大切です。
不整形地の間取りに関するよくある質問
最後に、不整形地の間取りに関するよくある質問をみていきましょう。
整形地か不整形地かの判断基準は?
整形地と不整形地を分ける明確な判断基準はありません。
整形地とは、土地の形状が長方形か正方形に整えた土地を指し、主に分譲地や新しく造成された土地は整形地になります。
一方、整形地以外の土地は不整形地に該当します。
一見すると整形地のようでも、角が欠けていたり、わずかに斜めになっているなどで不整形地になるケースは珍しくありません。
基本的に、昔からある土地は不整形地になるでしょう。
そのため、不整形地であっても比較的形が整っていて活用しやすい土地もあります。
活用しやすいかどうかは個々の土地の状態によって異なるので、不整形地であっても詳細をし っかり確認することが大切です。
不整形地は風水ではよくない?
不整形地は、風水では凶相とされています。
さらに、三角地は大凶相、Y字路にある土地は槍殺とされているので、風水を気にする方は注意が必要です。
ただし、風水については流派によって考えが変わり、また個人によって捉え方も異なるため、一概によくないとはいえません。
不整形地の計算方法は?
不整形地の評価額を算出する基本的な方法は以下のとおりです。
- 不整形地を整形地として評価額を算出する
- 不整形地補正率を生じて調節する
そのため、不整形地は整形地よりも評価額が減少するようになっています。
また、不整形地はさまざまな形状があることから、以下の4つの評価方法が定められています。
- 不整形地を整形地に分けて算出する
- 計算上の奥行距離を用いて算出する
- 近似整形地を用いて算出する
- 差し引き計算する
評価方法によって額が変わってくるため、税金を計算するうえでは最も評価額が低くなる方法を選ぶことが重要です。
ただし、不整形地の評価額の計算は複雑になりやすいため、税理士などのプロに相談することをおすすめします。
まとめ
不整形地は三角形や台形など特殊な形状をしていることから、建物を建てる際にデッドスペースが生じやすく、また間取りや大きさなど制限を受けやすくなります。
しかし、形状に応じてデッドスペースを駐車場や庭に活用したり、間取りを工夫することで十分活用が可能です。
ただし、不整形地は土地価格が安くなりますが、造成費用は外構費用などが掛かりやすいため、トータルの費用で検討することが大切です。
また、将来売却の際にも不利になりやすい点に注意しましょう。