「家を購入したいけど、できるだけ費用を抑えたい」というときの選択肢となるのが、ローコスト住宅です。
ローコスト住宅であれば、一般的な注文住宅に比べて大幅に費用を抑え、夢のマイホームが実現できます。
しかし、「価格のうえでは魅力的でも品質は大丈夫だろうか」と考えている方も多いでしょう。
家の購入で後悔しないためにも、ローコスト住宅のデメリットや注意点を理解しておく必要があります。
この記事では、ローコスト住宅が安い理由やメリット・デメリットから、購入時の注意点などを分かりやすく解説します。
ローコスト住宅とは
ローコスト住宅とは、一般的な注文住宅よりも安い価格で提供される住宅です。
明確な価格の定義はありませんが、一般的な注文住宅の坪単価が70~80万円ほどに対し、ローコスト住宅での坪単価は30~50万円ほどになります。
たとえば、30坪の家を建てる場合、1,000万円台で建築することが可能です。
フラット35を提供する住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」によると、2023年度の住宅取得時の所要資金は注文住宅で3,863万円、住宅面積は119.5㎡(約36坪)となります1。
仮に、36坪の住宅を坪単価50万円のローコスト住宅で建築すれば、1,800万円です。
この価格差は、購入時の負担を抑えたい方にとっては大きな魅力でしょう。
しかし、ローコスト住宅は低価格という魅力はあるもののデメリットもあります。
そのため、デメリットまで抑えたうえで検討することが大切です。
ローコスト住宅のデメリット
ローコスト住宅のデメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
- メンテナンスコストが高くなりやすい
- ランニングコストが高くなりやすい
- 耐震性が低い可能性がある
- 補助金や税制優遇を受けられないケースがある
それぞれ見ていきましょう。
メンテナンスコストが高くなりやすい
ローコスト住宅では、価格を抑えるために、設備や断熱材、内外装などが必要最低限の仕様であるのが一般的です。
低グレードの素材が使用されていると、耐久性が低く、メンテナンス頻度が増える可能性があるため、メンテナンスコストが高くなる可能性があります。
たとえば、外壁や屋根は一定期間ごとに塗装や葺き替えが必要です。
使用している材質の耐久性によってもメンテナンス時期は異なりますが、一般的には10~30年ごとにメンテナンスが必要になってきます。
仮に、購入後60年住み続ける場合、10年ごとのメンテナンスであれば6回必要ですが、30年ごとでいい素材なら2回で済みます。
とくに、屋根や外壁のメンテナンスは、1回あたり100万円を超えるケースも珍しくないので、回数が増えるほどトータルのコストが高くなる点には注意しましょう。
ランニングコストが高くなりやすい
グレードの低さは、メンテナンスコストだけでなくランニングコストにも影響します。
たとえば、断熱材のグレードが低いと冷暖房効率が下がるため。電気代が余計にかかってくる恐れがあるでしょう。
電気代は年々高騰傾向にあるため、わずかな差でも通年すれば大きな負担につながります。
こ のように、ローコスト住宅はメンテナンス費用・ランニング費用がかかりやすいので、初期費用だけでなくトータルの費用もシミュレーションしておくことが大切です。
耐震性が低い可能性がある
コストを抑えるために素材や工法を限定して建てているため、高品質住宅と呼ばれる家に比べると耐震性などの住宅性能は劣りがちです。
日本は地震大国とも呼ばれ、いつ・どこで地震が起きても不思議ではないため、耐震性に不安があると安心して暮らしにくくなります。
ただし、建物を建てるためには一定の耐震基準をクリアする必要があり、それはローコスト住宅も例外ではありません。
近年のローコスト住宅は、品確法で定められた耐震等級2を満たすように建築されており、建築基準法で定められた最低基準の1.25倍の強度を有する。
ローコスト住宅だから耐震基準を満たしていないということはないので、過剰に心配する必要はないでしょう。
補助金や税制優遇を受けられないケースがある
住宅取得時には、さまざまな補助金や税制優遇を活用することで費用の削減が可能です。
しかし、ローコスト住宅では各種補助金や税制優遇の対象外になるケースがあるので、注意しましょう。
たとえば、住宅ローンを利用し家を購入した際に活用できる「住宅ローン控除」では、控除できる額が取得する家の性能によって異なります。
令和7年入居の場合の控除額・期間は以下のとおりです2。
新築/既存等 | 住宅の環境性能等 | 借入限度額 | 控除期間 |
新築住宅・買取再販 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 子育て世帯・若者世帯:5,000万円 その他の世帯:4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 子育て世 帯・若者世帯:4,500万円 その他の世帯:3,500万円 | 13年間 | |
省エネ基準適合住宅 | 子育て世帯・若者世帯:4,000万円 その他の世帯:3,000万円 | 13年間 | |
その他の住宅 | 0円 | – | |
既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 10年間 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 10年間 |
新築や買取再販住宅で購入する場合、その他の住宅に区分されると住宅ローン控除が適用できません。
既存住宅であっても、その他の住宅に区分されることで適用上限が低くなるので注意が必要です。
それぞれの住宅性能を取得するには、省エネ性や断熱性・耐久性などの基準をクリアする必要があり、ローコスト住宅では基準をクリアできない可能性があるのです。
住宅ローン控除に限らず、近年の住宅関係の補助金や税制優遇は住宅性能が基準となっているケースが多く、ローコスト住宅は不利になりやすい点は覚えておきましょう。
ローコスト住宅の値段が安い理由
ローコスト住宅が安い理由には、以下の3つが挙げられます。
- 設備のグレードを下げている
- 間取りや仕様を統一している
- 経営努力で低価格を実現している
それぞれ見ていきましょう。
設備のグレードを下げている
ローコスト住宅では、キッチンやバス・トイレといった住宅設備や内外装、屋根材などの標準仕様は低グレードなのが一般的です。
これらの設備は基本的に、グレードが上がると価格も高くなります。
低グレードを採用することで、コストを抑えることにつなげているのです。
間取りや仕様を統一している
ローコスト住宅は間取りや仕様が統一されており、基本的にはシンプルな設計・デザインとなります。
シンプルな設計にすることで、設計費用を抑えられるだけでなく、建築時に複雑な技術を必要とせず、短期間・少人数での施工が可能となり、人件費の削減にもつながるのです。
また、規格が統一されているため、同じ商品や資材を使用でき、資材を一括で大量に仕入れることができるため、仕入れコストの削減にもつながります。
経営努力で低価格を実現している
テレビCMではなくネット広告やSNSを使用することで広告宣伝費を削減したり、作業効率アップにより人件費を抑えたりするなど、細かな企業努力も低価格の実現につながります。
ローコスト住宅は、このようなコスト削減によって住宅価格を抑えることを実現しており、品質や安全性に問題があるわけではありません。
ただし、品質やコストの削減方法はメーカーによっても異なる ので、入念にチェックし他のメーカーとも比較しながら慎重に検討することが大切です。
ローコスト住宅を購入する際の注意点
ローコスト住宅を購入する際には、以下の点には注意が必要です。
- 最低限の耐久性が確保されているかは確認しよう
- メンテナンスにかかる費用を試算しよう
- 設備は使いやすいか確認しよう
それぞれ見ていきましょう。
最低限の耐久性は確保されているのかを確認しよう
ローコスト住宅は、住宅設備や内外装のグレードが低いのが一般的です。
耐久性はその後のメンテナンス性やランニングコストに関わってくるので、標準仕様の耐久性や耐用年数は必ずチェックするようにしましょう。
また、新築住宅の場合、メーカーによる10年保証が法律で義務付けられていますが、大手メーカーなどでは20年や30年保証も珍しくありません。
一方、ローコスト住宅では最低限の10年保証になるケースが多いので、保証期間についても確認し有料で延長可能かもチェックしてみるとよいでしょう。
メンテナンスにかかる費用を試算しよう
購入時の初期費用を抑えられても、メンテナンスコストが高くなるとトータルでは一般的な注文住宅と変わらないケースもあります。
選ぶ際には、初期費用だけでなくメンテナンスを含めたトータルコストまで試算したうえで検討することが大切です。
メーカーによってアフターサービスや保証内容も異なるので、事前に確認しておくようにしましょう。
設備は使いやすいか確認しよう
標準仕様が低グレードであっても、自分にとって使いやすい設備であれば問題ありません。
反対に、使い勝手の悪い設備では交換などが必要となり、費用が高くなる恐れがあるでしょう。
また、どこまでが標準でどこからオプションになるかもチェックしておくことが重要です。
ローコスト住宅メーカーによっては、一般的に必要な住宅設備がオブションで、すべてそろえるとそれなりの金額になるケースもあります。
さらに、ローコスト住宅は一般的な注文住宅よりもオプション費用が割高になるケースも多いので、事前に費用もチェックするようにしましょう。
ローコスト住宅のメリット
ローコスト住宅はデメリットばかりではなく、価格の安さからくる魅力もたくさんあります。
ここでは、ローコスト住宅のメリットとしては以下の3つを紹介します。
- 費用を抑えられる
- 住宅ローンを組みやすい
- 税金が安くなりやすい
それぞれ見ていきましょう。
費用を抑えられる
ローコスト住宅の大きな魅力が、購入価格の安さです。
建物の価格を抑える分、立地を優先することもできるでしょう。
また、費用を抑えて購入できれば、毎月の住宅ローン返済額の負担の軽減にもつながります。
住宅ローンは20年・30年と長期に渡り返済が必要になるため、返済期間中に家族が増え支出が増えたり、収入が減少したということもあるでしょう。
そのような場合でも、毎月の返済額を抑えられていれば対応しやすく、滞納リスクを避けやすくなります。
住宅ローンを組みやすい
ローコスト住宅は、一般的な注文住宅よりも低価格とはいえ現金一括で購入するケースはほとんどなく、基本的に住宅ローンを利用します。
住宅ローンを利用するには審査に通る必要がありますが、ローコスト住宅は借入額の低さという点で審査に有利になる可能性があるのです。
住宅ローンは借入額が高くなるほど審査も厳しくなるので、年収によっては借入できない・頭金を多く入れるなどの対策が必要になるケースもあります。
しかし、ローコスト住宅なら年収がそれほど高くない場合や、頭金を多く用意できないという場合でも住宅ローン審査に通る可能性があるでしょう。
税金が安く なりやすい
住宅を購入すると、毎年「固定資産税」の負担が発生します。
固定資産税は土地と建物にそれぞれ課税され、土地については面積に応じて税額が増えます。
ただし、土地の面積が200㎡以下であれば、最大で6分の1に軽減される特例があります。
ローコスト住宅は、一般的にそれほど大きな土地を必要としないケースが多いため、この軽減措置が適用されやすく、固定資産税の負担を抑えやすいといえるでしょう。
ローコスト住宅が向いている人の特徴
ローコスト住宅は以下のような人に向いています。
- できるだけ費用を抑えて家を買いたい
- 間取りや設備にこだわらない
それぞれ見ていきましょう。
できるだけ費用を抑えて家を買いたい
住宅購入費用をできるだけ抑えてマイホームを手に入れたいという人は、ローコスト住宅がおすすめです。
- 住宅ローンの負担をなるべく抑えたい
- 家に費用をかけずに生活費や娯楽・子育てなどに費用をかけたい
- 年収がそれほど高くなく高額な住宅ローンは無理
- 老後資金に不安がないようにしたい
上記のような人に適しているでしょう。
また、年収が低い若者世帯や住み替えを前提としている人も、ローコスト住宅を選択肢に入れることをおすすめします。
間取りや設備にこだわらない
ローコスト住宅は、間取りがあらかじめ規格化されており、基本的に自由度は高くありません。
設備にしても、標準仕様は低グレードであることが多く、オプションでグレードアップできても価格が高くなりがちです。
そのため、間取りや設備に強いこだわりがなく、最低限の仕様でも問題ないという人が適しています。
また、ローコスト住宅は選択肢がない反面、一から家づくりをしなくてもいいというメリットがあります。
家づくりにあまり時間をかけた くない人や、一から選ぶのが面倒という人もローコスト住宅がおすすめです。
一方で、家に強いこだわりがある人や、設備を充実させたいという人は、ローコスト住宅では満足できない可能性があるでしょう。
ローコスト住宅に関するよくある質問
最後に、ローコスト住宅に関するよくある質問をみてきましょう。
ローコスト住宅を購入して20年後は大丈夫?
ローコスト住宅であっても品質や耐震性に問題があるわけではなく、適切にメンテナンスしていれば20年後でも問題なく生活できます。
ただし、耐久性が劣りやすくメンテナンス頻度が高くなりがちなので、メンテナンス時期や費用はしっかり確認しておくことが重要です。
ローコスト住宅がやばいといわれる理由
ローコスト住宅は、以下のようなデメリットからやばいといわれることがあります。
- 間取りの自由度がない
- 標準仕様が低グレードでオプションが割高
- 住宅性能が低くなりやすい
- メンテナンスやランニングコストがかかりやすい
また、品質以外の点でコスト削減を行っているローコスト住宅メーカーなら問題ありませんが、なかには工事の質が悪いなど品質に問題があるメーカーがあるのも事実です。
ローコスト住宅を選ぶ際には、価格だけでなく品質や工法、メーカーの信頼性などもしっかりチェックするようにしましょう。
ローコスト住宅は恥ずかしいと感じる?
ローコスト住宅だからといって恥ずかしいことはありませんが、以下のような理由で恥ずかしいと感じる人もいます。
- 外見が安っぽい
- 見た目がシンプル
- 住宅性能が低い
- こだわりを実現できない
ローコスト住宅が安い理由をきちんと理解し、自分や家族のニーズに合っているかを検討したうえで購入しないと、上記のような恥ずかしさや後悔を感じる恐れが あります。
反対に、ローコスト住宅についてしっかり理解し家族に合っているのであれば、満足いく家の購入が可能です。
ローコスト住宅にもメリット・デメリットがあるので、自分や家族のニーズ、資金状況などに応じて慎重に判断するようにしましょう。
まとめ
ローコスト住宅は、一般的な注文住宅よりも大きく価格を抑えて購入できるので、住宅ローンの負担軽減などの魅力があります。
しかし、価格を抑えるために設備が低グレードになる、規格化されており間取りが選べない、住宅性能が劣りやすいなどのデメリットもあるので、メリット・デメリットを比較したうえで検討することが大切です。
ローコスト住宅だから品質に問題があるわけではありませんが、メーカーによって品質やアフターサービス・標準仕様は異なります。
できるだけ多く比較し、自分にピッタリ合う家を見つけられるようにしましょう。