「井戸を撤去したいけどいくらかかるだろう?」「井戸の撤去にお祓いがいるって本当?」
売買や解体にあたり井戸の撤去を検討していると、このような疑問を持つ方もいるでしょう。
井戸がある土地をそのまま売るとトラブルになりやすいことから、売却前には解体するのが一般的です。
しかし、解体するとなると気になるのは費用でしょう。
また、井戸を解体して売却する際には、押さえておきたい注意点がいくつかあります。
この記事では、井戸の撤去、解体費用の目安や、解体の流れ、売却時の注意点について分かりやすく解説します。
そもそも井戸とは?
昔は一般的に使われていた井戸ですが、現在使用しているケースはほとんどありません。
しかし、昔使われていた井戸が敷地にそのまま残されているケースは珍しくないのです。
ところで、そもそも井戸とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、井戸がどういったものなのかを見ていきましょう。
生活用水を汲み上げる装置のこと
井戸とは、主に地下水を汲み上げることを目的として地中に掘った装置です。
水道が整備される以前は、生活用水や飲み水は川や井戸から汲み上げており、井戸は生活に欠かせない存在でした。
現在で生活用水の採水のために井戸を使用するケースはほとんどありませんが、災害時の備えとして残しているケースもあります。
信仰の対象でもあった
井戸は生活に欠かせない水の源であることから、神聖化され信仰の対象とされているケースもあります。
井戸には神様が宿るとされ、井戸を埋める際には神様を外に出られるようにする息抜きや、お祓いをするケースも多いのです。
井戸の種類
井戸には、大きく以下の3種類があります。
- 打ち抜き井戸(打ち込み井戸)
- 堀井戸(丸井戸)
- ボーリング井戸
打ち抜き井戸とは、液体から固形物をろ過して分離するストレーナー付きのパイプを地中に打ち込み、地下水を取水する井戸です。
堀井土は、直系1~2mほどの穴を人の手で地下水脈まで掘り、穴の壁を石やコンクリートで補強している井戸を言います。
ロープをつけて水をくみ上げる使い方が一般的で、一般的に井戸と言ってイメージされるのは堀井土となるでしょう。
ボーリング井戸は、ボーリングマシーンと呼ばれる機械を用いて設置された井戸です。
人の手では掘れない深さまで掘れるので、安定した取水ができるという特徴があります。
井戸は、種類や深さなどによっても解体費用が変動するので、事前にしっかりと調査が行われるのが一般的です。
井戸の撤去・解体の流れ
ここでは、井戸の撤去・解体の流れをみてきましょう。
大まかな流れは以下のとおりです。
- お祓いする
- 井戸の内部をきれいにする
- 息抜きする
- 井戸を埋め戻す
- 井戸を撤去する
それぞれ解説します。
お祓いする
前述のとおり、井戸は神様が宿る場所と信じられてきたことから、解体前にお祓いを行うのが一般的です。
お祓いは、近隣の僧侶や神主に依頼することになり、解体業者によっては手配してくれる場合もあるので、相談してみましょう。
なお、お祓いは義務ではなく、実施するかどうかは施主の意向によりますが、地域の風習に従うケースが多いです。
お祓いすることで、解体作業に対して精神的な安心感を得られるというメリットもあります。
古い慣習が残る地域や気にしやすい性格であれば、お祓いしたほうがよいでしょう。
井戸の内部をきれいにする
今は使われていない井戸でも、底に水が残っているケースがあります。
また、長期間放置されている間に、ゴミが蓄積している場合もあるでしょう。
そのため、解体工事前に残っている水やゴミを撤去し、きれいにしておく必要があります。
息抜きする
息抜きとは、空気を抜くために井戸の底からパイプなどを設置することです。
井戸の解体で行う息抜きには、以下の2つの目的があります。
- 井戸の底からガスや空気を抜く
- 神様が外に出られるようにする
井戸は地中深くに設けられており、空気やガスが残ったまま埋め戻すと地盤が不安定になる恐れがあります。
とくに、深い井戸や大規模な井戸で息抜きがしっかりできていないと、安全性に大きく影響するので注意しましょう。
また、息抜きには井戸に宿る神様が外に出るための通り道という神事的な目的もあります。
井戸を埋め戻す
息抜き時に井戸の内部の水やゴミ、その他地中埋設物がないかを確認し、問題がなければ埋め戻しが行われます。
埋め戻しでは、底部分は砂利や砕石を用い、上部分は土で埋めるといったように、場所に応じて使用する素材を変えるのが一般的です。
また、ただ埋め戻すのではなく、土地の活用に応じた強度を確保する必要があります。
次の活用が決まっているなら、解体業者に相談しながら適切な埋め戻しを行えるようにしましょう。
井戸を撤去する
井戸に土管などの枠が使用されている場合は、撤去を行います。
撤去は必須ではありませんが、残しておくと土地の陥没などの恐れがあります。
また、地中埋設物がある状態で売却すると買主とトラブルになりやすいので、事前に撤去しておくほうがよいでしょう。
撤去が終われば整地し、完了となります。
この際、息抜きで使用したパイプ類は井戸のあった位置が分かるように、そのまま残しておくとよいでしょう。
井戸の撤去・解体費用相場
ここでは、撤去作業別の費用相場を解説します。
井戸の撤去のみ行うケース
井戸の撤去のみを行うケースの費用相場は、3~10万円ほどです。
ただし、井戸の種類や深さ・水質・解体の内容などによって大きく変動します。
とくに、以 下のようなケースは費用が高額になりがちなので注意しましょう。
- 古い井戸
- 地下水脈に直結する井戸
- 深い井戸
- 重機の入る敷地や道路がない
古い井戸は頑丈な造りであることが多く、解体作業に手間がかかりやすいため、費用が高くなる恐れがあります。
また、地下水に直結する井戸や深い井戸は、解体作業時に地盤を安定させるための追加作業が必要になり、その分の追加費用が発生するケースがあるのです。
さらに、解体作業では重機を使用するケースが一般的ですが、重機の搬入が難しい現場では手作業が増えるため、費用が上乗せされる可能性があります。
井戸の撤去と合わせて家を解体するケース
家の解体と合わせて井戸を撤去することで、重機や人手を別途用意する必要がなく、埋め戻しにコンクリートなどの解体廃材を活用できるため、井戸単体での撤去よりも割安になります。
この場合で、費用の相場は3~5万円ほどです。
最初から家の解体に井戸を含める場合と、家の解体途中で井戸が見つかったケースでも費用は大きく変わりません。
なお、家の解体費用は構造ごとに異なり、木造であれば1坪3~5万円が相場です。
たとえば、30坪の家であれば90~150万円ほどが目安となるでしょう。
ただし、立地や家の状態などによっても費用は大きく異なるので、事前に見積もりをしっかり確認することが大切です。
井戸の撤去前にお祓いするケース
撤去前にお祓いするケースでは、お祓いの費用が別途発生します。
お祓いを依頼する際の費用の目安は、2~5万円です。
ただし、お祓いの依頼料とは別に、神主の交通費やお供え物のお金などが必要になることがあります。
事前に、費用に何が含まれるのかは確認しておきましょう。
井戸を撤去して不動産を売却するときの注意点
井戸の撤去の仕方が売却に影響することがあるので、売却を目的とした撤去の際には以下の点には特に注意しましょう。
- 井戸の撤去はプロに依頼する
- お祓いせずに売却すると買い手がつきにくくなるケースがある
それぞれ解説します。
井戸の撤去はプロに依頼する
「井戸の撤去は埋め戻すだけだから簡単」と考える方もいますが、撤去の質は安全性に大きく関わります。
息抜きが不十分、埋設物の撤去不足、埋め戻し資材が適切でないなどの原因により、水質汚染や地盤の不安定化を招く恐れがあります。
そのまま建物を建設してしまうと、最悪の場合、地盤沈下などのリスクも生じかねません。
やり直しで再度埋め戻しが必要になると、余計な費用がかかります。
また、売却後に上記のような不具合が発生すると、売主は契約不適合責任を問われ、損害倍層請求や契約解除のリスクもあります。
井戸の撤去は正しい手順で慎重に作業する必要があるので、経験・実績が豊富な解体業者に依頼することが大切です。
業者を選ぶ際には、できるだけ多く比較して信頼できる業者に依頼するようにしましょう。
お祓いせずに売却すると買い手がつきにくくなるケースがある
お祓いするかどうかは施主が決めても問題ありませんが、売却にともなう撤去であればお祓いをおすすめします。
買 主によってはお祓いせずに撤去したことを気にする方も珍しくなく、お祓いしていないことが売却にマイナスになる恐れがあるのです。
とくに、年配の方や古い習慣の残る地域ではその傾向が強いので、事前にお祓いしておく方がよいでしょう。
また、買主の方からお祓いを求めるケースもあるので、できる限り応じることをおすすめします。
井戸の撤去・解体に関するよくある質問
最後に井戸の撤去・解体に関するよくある質問をみていきましょう。
お祓いを自分ですることはできる?
お祓いを自分ですることもできますが、簡易的な方法です。
通常、お祓いは宗教的な知識や専門の道具を用いて行うので、自分で完全に再現するのは現実的ではありません。
仮に、自分で行うとすれば塩をまく、道具を購入やレンタルで揃えて行うことになりますが、あくまで形だけ行った程度となります。
もちろん、家族や自分がそれで納得できるなら問題ありません。
しかし、売却目的の解体では買主が納得しないケースもあるので、神主などへの依頼をおすすめします。
使わなくなった井戸の蓋をしてはいけない理由とは?
井戸の蓋が老朽化すると割れて落下する可能性があり、蓋をしても蓋の定期的なメンテナンスが必要です。
また、井戸に蓋をすることで神様が出られないと考える風習もあります。
安全性の理由からも、使わない井戸なら解体・撤去することをおすすめします。
まとめ
井戸の撤去費用は単体で10万円、家の解体とセットで3~5万円ほどが目安です。
ただし、 井戸の種類や深さ、依頼する業者などに大きく左右されるので、見積もり時に内容をしっかりチェックし比較するようにしましょう。
また、売却を検討している場合は、解体時にお祓いしないことがマイナス要因になりやすい点にも注意が必要です。
井戸の解体は、適切で慎重な作業が必要になるので、信頼できる業者を見極めることも大切です。
売却にともなる撤去で業者をどうすればいいのか分からない・撤去が必要か悩むという場合は、不動産会社に相談するのもおすすめです。
不動産会社によっては、解体業者の紹介やお祓いの必要性などをアドバイスしてくれるでしょう。